職員が移乗介助の最中に腰を痛め、「労災にしてほしい」と申し出てきた。ぎっくり腰が労災になるのか分からず、事業所としてどう応じればよいか迷っている。そうした場面で読んでいただきたい記事です。
先に結論を示します。腰痛が労災に当たるかどうかを判断するのは労働基準監督署で、事業所ではありません。事業所の役割は、起きたことを請求書の「災害の原因及び発生状況」欄に漏れなく書き、職員の申請を支えることです。この欄の記入が甘いと、監督署からの確認が増え、手続きが長引きます。
この記事は、介護事業所の施設長・事務長・労務担当の方に向けて、災害性腰痛の認定基準と、請求書の書き方、事業所が抜けやすい手続きを整理します。
結論:認定は監督署。事業所は事実を記入し証明をする
当事務所に寄せられる腰痛の労災の相談は、ぎっくり腰が多くを占めます。顧問先には、まずは申請してみることをお勧めしています。
腰痛が労災と認められるかどうかは、労働基準監督署が厚生労働省の認定基準に照らして判断します。事業所が「ぎっくり腰だから労災にはならないだろう」と先回りして申請を止める理由はありません。事業所が先に判断して健康保険で受診させてしまうと、後から労災に切り替える手続きが必要になり、かえって手間が増えます。
事業所には、職員が労災保険の給付を請求する手続きに協力し、職員から証明を求められたときは、すみやかに証明する義務があります(労働者災害補償保険法施行規則23条)。証明するのは、いつ、どこで、どのような作業中に何が起きたかという事実です。事業所が労災だと認めることではありません。事業所として意見がある場合の伝え方は、第5章とよくある質問で扱います。
この記事は、次の順序で進めます。
- 第2章:災害性腰痛とは何か。認定基準の考え方
- 第3章:職員から申し出があったときの流れ
- 第4章:「災害の原因及び発生状況」欄の書き方
- 第5章:事業所が抜けやすい手続き
- 第6章:腰痛健康診断の位置づけ
介護・医療の現場で起きるほかの労災については、「医療・介護の職員が感染症にかかったら労災?」「疥癬は労災になるか」でも解説しています。
災害性腰痛とは(災害性によらない腰痛との違い)
仕事による腰痛が労災と認められるかどうかは、厚生労働省の「業務上腰痛の認定基準」(昭和51年10月16日基発第750号)に照らして判断されます。認定基準は、腰痛を次の2つに分けて、それぞれ要件を定めています。
| 災害性の原因による腰痛 | 災害性の原因によらない腰痛 | |
|---|---|---|
| どんな腰痛か | 仕事中の突発的な出来事で、腰に急激な力が加わって起きた腰痛 | 腰に負担の大きい仕事を続けたことで起きた腰痛 |
| 介護で多い例 | 移乗介助中のぎっくり腰 | 長年の介護業務による慢性的な腰痛 |
| 認定のハードル | 突発的な出来事を示せるかが分かれ目 | 業務の内容と期間の目安があり、高い |
いずれの場合も、医師によって療養が必要と診断されたものが対象です(厚生労働省「業務上腰痛の認定基準等について」)。
災害性の原因による腰痛の2つの要件
「災害性腰痛」と呼ばれるのは、こちらの腰痛です。認定基準は、次の2つをいずれも満たすことを求めています。
- 腰の負傷、または通常の動作と異なる動作によって腰に急激な力が加わったことが、仕事中の突発的な出来事として生じたと明らかに認められること
- 腰に加わった力が、腰痛を発症させたこと、または以前からあった腰痛や持病を著しく悪化させたことが、医学的に認められること
つまり、「仕事中に腰が痛くなった」だけでは足りず、「仕事中に何か突発的なことが起き、そのせいで腰に急激な力がかかった」ことが必要です。
通達が示す2つの型を、介護の場面で考える
認定基準の解説は、災害性の原因による腰痛の例として、次の2つの型を挙げています。これを介護の場面に置き換えると、次のようになります。
型1:事故的な出来事によるもの
通達は、重い物を運んでいる最中に転んだ場合や、2人で運んでいる最中に1人が滑って手を離した場合などを例に挙げています。介護の場面では、2人で移乗介助をしていて、もう1人の手が外れて利用者の体重が一気にかかった場合や、利用者を支えている最中に自分が床で滑った場合などが考えられます。
型2:事故的な出来事はないが、予想外の重さや不適当な姿勢によるもの
通達は、扱う物が予想に反して著しく重かったり軽かったりした場合や、不適当な姿勢をとったときに腰に異常な力がかかった場合を挙げています。介護の場面では、立ち上がりの介助中に利用者の膝が急に折れて予想外の体重がかかった場合や、狭いトイレの中で前かがみにひねった姿勢のまま利用者を支えた場合などが考えられます。
ここに挙げた介護の例は、通達の型に当てはめて考えるためのものです。この場面であれば必ず認定される、という意味ではありません。
ぎっくり腰はどう扱われるか
いわゆる「ぎっくり腰」について、認定基準の運用上の留意点(昭和51年10月16日事務連絡第42号)は、日常生活でも仕事中でも起こり、一般に労働との関連は乏しいとしています。そのうえで、次の2つに当たるものは、災害性の原因による腰痛として扱うとしています。
- 腰の負傷や腰への急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事として客観的に認められること
- その急激な力が、通常の動作と異なる動作や姿勢によって生じたこと
ここでいう「通常の動作と異なる動作」とは、日常生活の動作や、その職員がふだん行っている作業の動作とは異なる、腰に異常な負荷がかかった状態をいいます。
いつもの介助の手順の中で自然に腰を痛めた場合は、この要件を満たすと認められにくくなります。一方、利用者の膝が折れた、介助の相手が急に体勢を崩した、といった突発的な出来事があり、それを支えるために通常とは異なる姿勢をとっていたのであれば、対象になり得ます。
分かれ目は、そうした事実があったかどうか、そしてその事実が請求書に書かれているかどうかです。書き方は第4章で詳しく扱います。
災害性の原因によらない腰痛は、認定のハードルが高い
もう1つの区分である災害性の原因によらない腰痛は、突発的な出来事がなくても、腰に過度の負担がかかる仕事を続けたことで起きた腰痛です。認定基準は、次の2つの場合を示しています。
- 筋肉などの疲労による腰痛:おおむね20kg以上の物を繰り返し中腰で扱う仕事、腰にとって極めて不自然な姿勢を毎日数時間とる仕事などに、比較的短い期間(おおむね3か月から数年以内)従事した場合
- 骨の変化による腰痛:おおむね30kg以上の重量物を労働時間の3分の1程度以上、またはおおむね20kg以上の重量物を労働時間の半分程度以上扱う仕事に、相当長い期間(おおむね10年以上)従事した場合
厚生労働省のリーフレットで挙げられている仕事の例は、港湾荷役や配電工の柱上作業などです(厚生労働省「腰痛の労災認定」)。介護の仕事がこれらに当たるかは、作業の内容や期間、本人の身体の状態などから個別に判断されます。
当事務所の実感としても、業務の内容と期間の要件があるため、こちらの区分で認定されるのは難しいのが実情です。
職員から申し出があったときの流れ
職員から「仕事中に腰を痛めた」と申し出があってから、労災保険の給付が決まるまでの流れは、次のとおりです。

まず当日のうちに状況を聞き取る
申し出を受けたら、できるだけ当日のうちに、事務担当者が職員から状況を聞き取り、記録しておきます。後で請求書を作るときの材料になるうえ、時間がたつと、本人も周りも細部を思い出せなくなるためです。
聞き取っておきたいのは、次のような事実です。
- 日時と場所(何時ごろ、どの居室・浴室・トイレか)
- どの介助をしていたか(移乗、入浴、排せつ、体位変換など。1人介助か2人介助か)
- 利用者の状態(おおよその体格、介助の必要の程度)
- 何が起きたか(利用者の膝が折れた、体勢を崩した、自分が滑ったなど)
- そのとき、どんな姿勢で、どう支えたか
- 痛みが出た瞬間と、その後の様子(その場で動けなくなった、介助を続けたなど)
- 一緒にいた職員、見ていた職員は誰か
当事務所では、顧問先の事務担当者から、こうした事実を聞き取ったうえで、申請書の「災害の原因及び発生状況」欄を作成しています。
あわせて、職員には医療機関での受診を勧めます。
受診したら:様式第5号または第7号
療養の請求は、受診した医療機関によって使う様式が変わります。
- 労災保険の指定医療機関にかかる場合:様式第5号(療養の給付請求書)を、医療機関を通じて労働基準監督署に出します。職員は窓口で費用を負担しません。
- 指定医療機関以外にかかる場合:職員がいったん費用を立て替え、様式第7号(1)(療養の費用請求書)を労働基準監督署に出して払い戻しを受けます。
整骨院・接骨院(柔道整復師)で施術を受けた場合は、これとは別の様式を使います(厚生労働省「労災保険給付関係主要様式」)。
どの様式にも、事業主が証明する欄があります。様式第5号と第7号の使い分けは、「針刺し事故の労災手続き」でも詳しく解説しています。
休業するなら:様式第8号
腰痛で仕事を休む場合、休業4日目以降の分は、様式第8号(休業補償給付支給請求書)を労働基準監督署に出して請求します。医師が療養のため働けなかった期間を証明する欄と、事業主が証明する欄があります。
最初の3日間(待期期間)は労災保険から支給されないため、事業所が補償します。この点を含め、事業所が抜けやすい手続きは第5章で扱います。
監督署の調査と決定
申請書を受け取った労働基準監督署は、必要に応じて職員や事業所から事情を聞き取り、医師の意見なども踏まえて、労災に当たるかどうかを判断し、支給・不支給を決定します。
請求書の「災害の原因及び発生状況」欄に事実が具体的に書かれていれば、監督署が確かめる事項はその分少なくなります。反対に、記載が簡単すぎると、改めて事情を聞かれることになります。次の章では、この欄の書き方を扱います。
「災害の原因及び発生状況」欄の書き方
記入要領が求める5つの観点
様式第5号・第8号の「災害の原因及び発生状況」欄には、様式の注意書きで、次の5つの観点に沿って書くよう示されています。
- (あ)どのような場所で
- (い)どのような作業をしているときに
- (う)どのような物又は環境に
- (え)どのような不安全な又は有害な状態があって
- (お)どのような災害が発生したか
また、様式第5号の事業主証明欄は、負傷の年月日・時刻とあわせて、この欄に書かれたとおりであることを事業主が証明する形になっています。この欄の中身は、事業所としても責任を持って確かめる必要がある、ということです。
5つの観点と、認定基準の要件を対応させる
5つの観点に沿って書くと、第2章で見た認定基準の要件(突発的な出来事、通常と異なる動作、腰への急激な力)が、自然に請求書に表れます。
| 記入要領の観点 | 介護の場面で書くこと | 対応する認定基準の要件 |
|---|---|---|
| どのような場所で | 居室・浴室・トイレなど、場所の広さや床の状態 | — |
| どのような作業をしているときに | 介助の種類、1人介助か2人介助か、ふだんの手順 | 「通常の動作」が何かを示す |
| どのような物又は環境に | 利用者の体格(体重)・状態、ベッドや車椅子など | 腰にかかった重さの前提 |
| どのような不安全な又は有害な状態があって | 膝折れ、体勢の崩れ、滑りなどの出来事と、そのときの姿勢 | 突発的な出来事、通常と異なる動作 |
| どのような災害が発生したか | 腰に急激な力がかかった瞬間と、その後の様子 | 腰への急激な力の作用 |
記入が甘い例と、事実を漏れなく書いた例
次の例は、説明のために作った架空のものです。
記入が甘い例
利用者の移乗介助中に腰を痛めた。
この書き方では、どんな介助で、何が起きて、腰にどんな力がかかったのかが分かりません。「突発的な出来事」も「通常と異なる動作」も読み取れないため、監督署は改めて事情を確かめることになります。
事実を漏れなく書いた例
○月○日午後2時ごろ、2階居室のベッドサイドで、利用者(体重約60kg、立ち上がりに一部介助が必要な方)を、車椅子からベッドへ1人で移乗介助していた。立ち上がりの途中で利用者の右膝が急に折れ、前方に崩れ落ちそうになったため、転倒を防ごうと、前かがみで上体を右にひねった姿勢のまま利用者の体を抱き止めた。その際、腰に強い痛みが走り、その場で動けなくなった。介助は同僚職員に交代し、同日午後に医療機関を受診した。

ぎっくり腰の場合、扱った重さ(利用者の体重)、そのときの体勢、どのような作業をしていたかは、欠かせない要素です。特に数値は、書いていなければ監督署から確認されます。体重や時刻などは、分かる範囲で具体的な数値で書いておくことをお勧めします。
業務の内容・期間・それまでの就労状況も書き込む
突発的な出来事がはっきりしない事案や、長く続けてきた業務による慢性的な腰痛の可能性がある事案では、同じ欄に、次のような事実も書き込みます。
- 担当している業務の内容(どの介助を、1日にどの程度行っているか)
- その業務に就いている期間(勤続年数)
- 発症前の就労の状況(勤務の形態や、発症前の勤務の続き方など)
第2章で見たとおり、災害性の原因によらない腰痛では、業務の内容と従事した期間が判断の材料になります。特に慢性的な腰痛の場合は、勤続年数を書いておくべきです。
書くときの注意
- 起きた事実を書き、推測や評価は書かない。「無理な体勢だったので労災だと思う」といった判断は、監督署がすることです。
- 事実を膨らませない。認定されやすいように、実際になかった出来事や姿勢を書き加えてはいけません。偽りの記載で給付を受ければ、不正受給として返還を求められることがあります。
- ほかの記録と食い違わないようにする。当日の聞き取りの記録や、労働者死傷病報告に書いた内容と、日時・場所・状況がそろっているかを確かめます。
- 欄に書ききれない場合は、別紙に続きを書いて添付する。
事業所が漏れやすい手続き
労災と認定されるかどうかとは別に、事業所自身が果たすべき手続きがあります。いずれも、腰痛が労災として申請される場面で抜けやすいものです。
最初の3日間は事業所が補償する
仕事中のけがや病気で休業した場合、労災保険の休業補償給付は休業4日目から支給されます。最初の3日間(待期期間)は労災保険から支給されないため、事業所が1日につき平均賃金の60%以上を補償しなければなりません(労働基準法76条)。
待期期間に公休日が含まれる場合でも、当事務所では休業補償が必要と考えています(完全月給制の場合の扱いなど、細部には異なる整理もあります)。
なお、通勤中のけがや病気(通勤災害)は、労働基準法に補償の規定がありません。就業規則などに定めがなければ、待期期間の3日間は無給になります(労災保険情報センター「休業から3日間の取扱い」)。訪問介護で利用者宅へ移動する途中の事故などは、通勤災害ではなく業務災害に当たる場合もあります。どちらに当たるかは、移動が業務として行われていたかによって変わります。
労働者死傷病報告は、認定を待たずに出す
職員が労働災害で休業した場合、事業所は労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を出さなければなりません(労働安全衛生規則97条)。
- 休業4日以上:遅滞なく提出
- 休業1〜3日:四半期ごとにまとめて提出
2025年1月からは、原則として電子申請で提出することになりました(厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます」)。
腰痛も報告の対象です。厚生労働省が公表している労働災害の統計で、「動作の反動・無理な動作(腰痛等)」として集計されているのは、この報告にもとづく数字です。令和7年の休業4日以上の死傷者のうち、この型は22,166人で、全体の16.4%を占めています(厚生労働省「令和7年 労働災害発生状況について」)。
この報告は、労災保険の請求とは別の手続きで、労災と認定されるかどうかに関係なく必要です。請求書の作成に気を取られて、出し忘れが起きやすい手続きでもあります。報告をしなかったり、事実と異なる報告をしたりすると、いわゆる「労災かくし」として、50万円以下の罰金の対象になります(労働安全衛生法100条、120条)。
報告に書く発生状況は、請求書の「災害の原因及び発生状況」欄と内容をそろえておきます。
事業所として意見があるときは「意見申出」で
職員の説明と事業所の認識が違う、仕事が原因とは考えにくい事情がある、といった場合でも、事業主証明を拒んで手続きを止めるのは適切ではありません。
事業主には、保険給付の請求について、所轄の労働基準監督署長に意見を申し出る制度があります(労働者災害補償保険法施行規則23条の2)。事実は事実として証明したうえで、事業所としての意見は、この制度を使って書面で監督署に伝えます。
療養中は解雇できない
仕事中のけがや病気で療養のために休業している期間と、その後30日間は、原則としてその職員を解雇できません(労働基準法19条)。腰痛で長く休んでいる職員の今後について考える際にも、この制限を前提にする必要があります。
腰痛健康診断は法令上の義務ではないが、指針が求めている
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日基発0618第1号)は、平成25年の改訂で、対象を福祉・医療分野の介護・看護作業全般に広げました。移乗介助などで人を抱き上げる作業については、原則として人力で抱き上げることは行わせず、リフトなどの機器を使うことを求めています(厚生労働省「職場における腰痛予防の取組を!」)。
この指針は、介護作業など腰に著しい負担がかかる作業に常時従事する職員に対し、その作業に配置する際と、その後6か月以内ごとに1回、腰痛の健康診断を行うよう求めています。
ただし、これは法令で義務づけられた健康診断ではなく、指針にもとづく取り組みです。当事務所の実感としても、小規模な介護事業所で腰痛健康診断を実施しているところは、ほとんどありません。
夜勤のある施設では、深夜業に常時従事する職員に、6か月以内ごとに1回の健康診断が法令で義務づけられています(労働安全衛生規則45条)。実施の間隔が同じなので、腰痛健康診断を取り入れるなら、この健康診断と同じ機会に行えば、職員と事業所の負担を抑えられます。夜勤者の健康診断の時期や対象の考え方は、「介護施設の夜勤者の健康診断はいつ受けさせるか」で解説しています。
よくある質問
Q1. 事業主証明を拒むことはできますか?
事業所には、職員から保険給付の請求に必要な証明を求められたとき、すみやかに証明する義務があります(労働者災害補償保険法施行規則23条)。証明するのは、いつ、どこで、何が起きたかという事実であり、労災と認めることではありません。
なお、事業所が証明を拒んでも、職員は証明がないまま請求でき、請求書は受理されます(厚生労働省「労災保険に関するQ&A」)。その場合、監督署は事業所にも事情を確かめることになります。証明を拒んで手続きを止めるより、事実を証明したうえで、事業所としての意見は「意見申出」の制度で伝える方が、話がこじれずに済みます。
Q2. 健康保険で受診してしまった場合は、どうすればよいですか?
仕事が原因のけがや病気には、健康保険は使えません。まず、受診した医療機関に、労災保険への切り替えができるか相談してください。切り替えができれば、様式第5号を医療機関に出します。
切り替えができない場合は、健康保険が負担した医療費をいったん返したうえで、様式第7号で労災保険に請求します。気づいた段階で早めに手続きをすることが大切です。
Q3. 労災と認められなかった場合は、どうなりますか?
労働基準監督署の不支給の決定に不服があるときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、労働者災害補償保険審査官に審査請求ができます(労働者災害補償保険法38条、労働保険審査官及び労働保険審査会法8条)。
仕事以外の原因による腰痛と判断された場合は、健康保険で治療を受けることになります。休業した場合は、健康保険の傷病手当金の対象になりえます。
Q4. パート職員も労災保険の対象になりますか?
なります。労災保険は、正職員だけでなく、パートやアルバイトを含め、事業所で働くすべての労働者が対象です。雇用形態や週の労働時間にかかわらず、請求の手続きは同じです。
Q5. 労災を申請すると、労災保険料は上がりますか?
労災の発生状況に応じて労災保険料が増減する「メリット制」という仕組みがあります。ただし、メリット制が適用されるのは、常時使用する労働者の数などが一定以上の規模の事業所に限られます。小規模な事業所では多くの場合適用されないため、申請したことで保険料が上がる心配はほとんどありません。
まとめ
- 腰痛が労災に当たるかどうかを判断するのは、労働基準監督署です。事業所は見込みで申請を止めず、起きた事実を証明して職員の申請を支えます。事業所として意見がある場合は、証明を拒むのではなく、意見申出の制度で伝えます。
- 介護の現場で多いぎっくり腰は、災害性の原因による腰痛に当たるかが分かれ目です。仕事中の突発的な出来事、通常と異なる動作や姿勢、腰に加わった急激な力が、「災害の原因及び発生状況」欄に具体的な数値とともに書かれているかどうかで、監督署とのやりとりが変わります。長く続けてきた業務による慢性的な腰痛は、認定のハードルが高くなります。
- 認定とは別に、事業所には、最初の3日間の休業補償、労働者死傷病報告の提出、療養中の解雇制限といった義務があります。
腰痛の認定基準や請求書の様式、労働者死傷病報告の電子申請の扱いは、今後見直される可能性があります。最新の情報は、厚生労働省や都道府県労働局の公式情報で確認してください。判断に迷う場合は、労働基準監督署や顧問の社会保険労務士など、専門家に確認したうえで進めることをおすすめします。



