「夜勤をさせている職員には、年2回の健康診断が必要」——ここまでは、介護施設の労務担当者であればご存じの方がほとんどだと思います。当事務所に寄せられる相談も、必要かどうかではなく、「常時夜勤とは何を指すのか」と「いつ受けさせればよいのか」の2つに集中しています。
いつ受けさせればいいのか。施設の一斉健診に合わせて全員まとめてでいいのか。年の途中で夜勤シフトに入れた職員は、次の一斉健診まで待っていいのか。中途採用ですぐ夜勤に入れる場合はどうか。夜勤専従の職員を、夜勤明けにそのまま受診させてよいのか。
この記事では、介護施設の施設長・労務担当者に向けて、「いつ受けさせるか」を主題に据えて整理します。誰が年2回の対象になるのかという判定も後半でまとめて扱いますが、先に日程の話から始めます。実務で先につまずくのは、そちらだからです。
受けさせるタイミングは3つ。起点は「施設の一斉健診の月」ではない
先に結論をお伝えします。夜勤者の健康診断をいつ受けさせるかは、次の3つで決まります。
- その職員を夜勤を含む勤務に入れた時点(配置替えの際)
- そこから6か月以内ごとに1回
- 中途採用で最初から夜勤に入れる場合は、雇入れの際の健康診断が実質の起点になる
労働安全衛生規則第45条第1項は、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対して、「当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回」健康診断を行わなければならないと定めています。「年2回」と呼ばれているのは、この「6月以内ごとに1回」を1年に引き直した言い方です。
そして実務が狂う原因は、ほぼ例外なく、起点の取り違えにあります。
「定期健診に、夜勤者だけもう1回足す」ではない
多くの施設では、春か秋に全職員の健康診断をまとめて実施しています。その日程を基準に「4月に全員受けたから、10月に夜勤者だけもう1回」と組んでいるところが多いはずです。運用としては、これで問題ありません。
ただし、法令の建て付けは違います。労働安全衛生規則第44条第1項は、定期健康診断の対象を「常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)」と定めています。つまり、夜勤に常時従事する職員は、そもそも定期健康診断の対象から外れています。厚生労働省のリーフレットでも、定期健康診断の対象は「常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)」と整理されています。
夜勤者にとっては、春の健診も秋の健診も、どちらも第45条の健康診断です。「年1回の定期健診に、夜勤者は1回足す」のではなく、「2回とも夜勤者用の健診」というのが正確な理解になります。
これは言葉の問題にとどまりません。回数の起点が、施設の一斉健診の日程ではなく、その職員を夜勤に入れた日になるという結論に直結するからです。
6か月のカウントは、職員ごとに始まる
条文が「配置替えの際」を起点に置いている以上、6か月のカウントは職員ごとにスタートします。一斉健診の日から全員一律に6か月、ではありません。
たとえば、6月に日勤専従だった職員を夜勤シフトへ組み入れたとします。この職員は、6月の配置替えの時点で1回目を実施し、次は12月までに2回目です。施設の一斉健診が4月と10月であっても、この職員の期限は10月ではなく12月になります。
問題が起きるのは逆のパターンです。一斉健診の日程だけで管理していると、年の途中で夜勤に入った職員の起点が拾えません。5月に夜勤へ入った職員を「4月に受けたばかりだから」と扱い、次を10月の一斉健診まで待つと、配置替えの時点での実施が抜けたまま6か月を数え始めることになります。監督署の調査で対象者リストと実施記録を突き合わせたときに、実施漏れとして表に出やすいのがこのケースです。

では、この職員ごとの起点を抱えたまま、施設全体の年間スケジュールをどう組めばいいのか。次章で、実務で回るサイクルの作り方を見ていきます。
年間サイクルをどう組むか——2回とも同じ項目ではない
6か月のカウントは職員ごとに始まるとはいえ、職員一人ひとりの起点に合わせて健診を個別手配していては、施設の事務が回りません。
実務の落としどころは、施設としての実施月を年2回固定し、そこに全員を乗せる。乗り切らない職員だけ個別に追うという二段構えです。この章では、その設計と、2回の中身が同じではないという点を押さえます。
実施月を2つ決めて、まとめる
たとえば4月と10月を実施月に決め、夜勤者は両方、日勤のみの職員は4月だけ、という形にします。これで大半の職員の6か月要件は満たせます。
そのうえで、年の途中で夜勤に入った職員だけを例外として拾います。6月に夜勤へ配置替えした職員なら、6月に1回目を実施し、次は12月までです。10月の一斉健診で受けさせれば、6月から数えて4か月なので要件は満たします。以後この職員は一斉健診のサイクルに合流できます。
つまり、配置替えの時点で1回挟んでおけば、その後は施設のサイクルに戻せるということです。
2回目は項目が軽くなる
「年2回」と聞くと、同じ内容の健診を2回受けさせると考えがちですが、そうではありません。項目を減らせる根拠が、主なものだけで2つあります。
1つ目は、胸部エックス線検査です。労働安全衛生規則第45条第1項は、定期健康診断と同じ項目を実施するよう定めたうえで、そのうち胸部エックス線検査および喀痰検査については「一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りる」としています。年2回のうち1回で足りる、ということです。
2つ目は、血液検査などです。同条第2項は、6か月ごとの健診(配置替え時のものを除く)について、前回の健康診断で貧血検査・肝機能検査・血中脂質検査・血糖検査・心電図検査を受けた職員は、医師が必要でないと認めるときに限り、これらの全部または一部を省略できるとしています。
これとは別に、年齢などを理由とする省略もあります。同条第3項が定期健康診断の規定を準用しており、厚生労働大臣が定める基準に当てはまる場合に、医師が必要でないと認めれば省略できる仕組みです。2027年4月に追加される血清クレアチニン検査についても、40歳未満はこの仕組みで省略できるとされました。なお、聴力検査についても、年2回のうち1回は医師が適当と認める方法によることができるとされています(同条第4項)。
注意したいのは、これらの省略が自動ではないことです。条文は「医師が必要でないと認めるとき」を条件にしています。施設側の判断で減らすものではなく、健診機関の医師の判断です。
この点について、厚生労働省は2026年4月の通達改正で注意喚起を追加しています。改正後の通達は、血液検査等の省略の判断を医師でない者が一律に行うなど、適切に省略の判断が行われていないことが懸念されるとしたうえで、省略の判断は一律に行うものではなく、経時的な変化や自他覚症状を勘案するなどして、個々の労働者ごとに医師が省略可能と認める場合にのみ可能である、と述べています。
しかも、この注意喚起の根拠条文には、今回特定業務従事者健診(第45条第3項)が書き加えられました。改正前は定期健康診断(第44条第2項)しか挙げられていませんでした。夜勤者の2回目について「毎回この項目は省く」と定型化している施設は、この改正後は説明を求められる可能性があります。
実務では、健診機関に「特定業務従事者の2回目」と伝えれば対象区分に応じたコースを案内してくれるため、施設側で項目を組み立てる必要はありません。
直前に別の健診を受けている職員は、重複を省ける
年の途中で夜勤に入る職員については、もう一つ別の省略規定があります。
労働安全衛生規則第45条第3項は、同規則第44条第3項を準用し、その中の「一年間」を「六月間」と読み替えると定めています。読み替えた結果はこうなります。雇入れの際の健康診断(第43条)、海外派遣労働者の健康診断(第45条の2)、または労働安全衛生法第66条第2項前段の健康診断を受けた職員については、その健診の実施日から6か月間に限り、相当する項目を省略できる、という内容です。
介護施設で実際に使うのは、ほぼ雇入時健診のケースです。採用時に健診を受けさせ、その職員を6か月以内に夜勤へ配置替えするなら、配置替えの際の健診は重複項目を省略した形で実施できます。
一方で、定期健康診断(第44条)は、この省略の対象に挙がっていません。そもそも前章のとおり、夜勤に常時従事する職員は定期健康診断の対象から除かれています。「4月の定期健診を受けたばかりだから、秋の配置替え時は省略できる」という整理は、条文の上では成り立ちません。
小規模施設ならこう実践
夜勤者が数名という施設であれば、複雑な管理表は不要です。年間カレンダーに実施月を2つ印だけつけておき、そこに「年の途中で夜勤に入れた職員」を書き足す欄を1行足しておく。この1行があるかないかで、実施漏れの起きやすさが変わります。
なお、健診項目そのものは2027年(令和9年)4月1日から一部変わります。血清クレアチニン検査が追加され、喀痰検査が削除されるほか、肝機能検査の酵素名がGOTからAST、GPTからALT、γ-GTPからγ-GTへ変更され、健康診断個人票や結果報告書の様式も変わります。上で触れた「1年以内ごとに1回でよい項目」の範囲にも関わるため、その時期が近づいたら実施月の設計を見直すことになります。
夜勤専従者——「対象か」ではなく「いつ組むか」
夜勤専従の職員について、対象かどうかを迷う施設はまずありません。月8回から10回前後の夜勤が常態である以上、常時従事にあたることは明らかだからです。
つまずくのは、その先です。健診をいつ組むのか。夜勤明けにそのまま受けさせてよいのか。日勤の日を作って呼び出すなら、その時間の賃金はどうなるのか。
夜勤明けの受診は、禁じられてはいない。ただし別の問題がある
法令に、受診の時間帯を制限する規定はありません。夜勤明けに健診を受けさせること自体が違法になるわけではありません。
ただし、健康診断の目的は健康状態を把握することにあります。16時間夜勤を終えた直後の状態で測った数値が、その職員の通常の状態を表しているといえるかは、慎重に考える必要があります。血圧や心電図をはじめ、睡眠や食事のタイミングの影響を受ける項目は少なくありません。健診機関側でも、空腹時採血の要請から受診時刻の指定があるのが通常です。
一度だけの便宜であればともかく、「夜勤専従者は毎回夜勤明けに受診」という運用を固定してしまうと、事後措置の判断材料としての質が下がる可能性があります。有所見と判定された場合、事業者は医師の意見を聴き、必要な措置を講じることになりますが、その出発点となる数値の信頼性が揺らぐことになります。
実務としては、健診機関に夜勤専従である旨と直近の勤務時間を伝えたうえで受診時刻を相談するか、日勤の日を作って組むか、どちらかになります。
受診時間は労働時間か?
夜勤専従者を日中に呼び出すとなると、次に問題になるのが賃金です。ここは、まず健診の分類を正しく押さえる必要があります。
特定業務従事者の健康診断は、労働安全衛生法第66条第1項に基づく「一般健康診断」の一つです。厚生労働省の通達も、一般健康診断とは、労働安全衛生規則第43条の雇入時の健康診断、第44条の定期健康診断、第45条の特定業務従事者の健康診断、第45条の2の海外派遣労働者の健康診断をいう、と明示しています。都道府県労働局の解説でも同じ整理がされています。
一方で、インターネット上の解説の中には、深夜業健診を「特殊健康診断」の一覧に並べているものがあります。有機溶剤健診や鉛健診と同じ枠に入れている図表です。これは分類の誤りです。特殊健康診断は同法第66条第2項・第3項に基づくもので、対象は有害業務です。
なぜこの区別が実務に効くかというと、受診時間の賃金の扱いが正反対になるからです。行政解釈(昭和47年9月18日基発第602号)は、一般健康診断について、業務の遂行と直接の関連において行われるものではないことから、受診に要した時間の賃金は当然に事業者が負担すべきものではなく、労使の協議によって定めるべきものとしています。あわせて、支払うことが望ましいとも述べられています。これに対し特殊健康診断は、事業の遂行と密接に関連するため受診時間は労働時間と解され、時間外や休日に実施すれば割増賃金の対象になります。
深夜業健診を特殊健診と取り違えると、払わなくてもよい前提の整理を、払う義務があると誤って読むことになります。逆にいえば、正しい分類を知ったうえで無給とするかどうかは、施設の判断です。
夜勤専従者の場合、「原則無給でよい」のか?
とはいえ、法令上の原則をそのまま当てはめて済む話でもありません。
日勤者であれば、勤務時間中に受診させて通常どおり賃金を支払う運用が一般的で、この論点はそもそも表面化しません。ところが夜勤専従者は、日中に受診させようとすると、勤務のない日に出てくることになります。これを無給で求めれば、実質的に休日を削って無償で拘束する形になり、不満が生じやすい構図です。
一方で、業務命令として出勤を指示すれば、指揮命令下に置かれた時間として労働時間性が生じる可能性があります。行政解釈が「労使の協議によって定める」としているのは、まさにこうした場面を想定しているといえます。
したがって、夜勤専従者を抱える施設では、受診時間の扱いを先に決めておくことをおすすめします。決めるべきは、受診時間を勤務扱いとするか、時間単位の年次有給休暇の使用を認めるか、あるいは所定の勤務日に受診時刻を組み込むか、といった点です。就業規則や労使の取り決めに落としておけば、毎年の健診時期に個別交渉をしなくて済みます。
職員が自分で受けてきた健診結果は使えるか
夜勤専従者から「自分で受けてきたので、それでよいか」と言われることがあります。
労働安全衛生法第66条第5項ただし書は、労働者が事業者の指定した医師以外の医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出することを認めています。項目が法定のものを満たしていれば、事業者が実施した健診に代えることができます。
また、深夜業に従事する労働者については、自発的に受けた健康診断の結果を事業者に提出できる仕組みも設けられています。ただしこれは事業者の実施義務を消すものではなく、提出があった場合に事業者が事後措置を講じる、という建て付けです。「本人が自分で受けているから施設としては何もしなくてよい」ということにはなりません。結果の提出を受けて個人票に整えるところまでが施設の実務です。
小規模施設ならこう実践
夜勤専従者が1〜2名という施設であれば、受診時間の扱いを就業規則に書き込むより先に、「健診の受診は所定の勤務日の日中に組み、その時間は勤務扱いとする」と決めて周知するだけでも足ります。そのうえで、夜勤明け直後の受診は避ける、という一言を添えておく。この2点を決めておけば、毎年の調整はほとんど発生しません。
中途採用で最初から夜勤に入れる場合、起点は「採用の日」になる
介護施設の採用は、中途採用が中心です。夜勤に入れる前提で経験者を採り、入職後まもなくシフトに組み込むことも珍しくありません。この場合、健診の起点は配置替えではなく採用の時点になります。
まず、採用時の健診は別に必要
労働安全衛生規則第43条は、常時使用する労働者を雇い入れたときに健康診断を行うよう定めています。夜勤に入れるかどうかとは関係なく、採用の時点で1回必要です。
省略できるのは1つの場合だけです。同条ただし書により、医師による健康診断を受けた後3か月を経過しない者を雇い入れる場合で、本人がその結果を証明する書面を提出したときは、当該健診の項目に相当する項目を実施しなくてよいとされています。前職の健診結果や、本人が受けた人間ドックの結果がこれにあたります。介護の中途採用では実際に出てくる場面なので、採用時に「直近3か月以内の健診結果があれば提出を」と案内しておくと、二重の受診を避けられます。
なお、採用時の健診には、定期健診や特定業務従事者健診にあるような「医師が必要でないと認めるときの省略」の仕組みがありません。項目をそのまま実施するのが原則です。
短時間の職員は、夜勤に入れるなら期間の要件が変わる
パート職員を採用して夜勤に入れる場合、健診義務の判定にひとつ特例があります。
短時間労働者に健診を実施する義務が生じるのは、期間の定めのない契約か、1年以上の使用が見込まれる場合が原則です。ところが深夜業などの特定業務に従事する短時間労働者については、この期間が6か月に短縮されます。契約期間が6か月以上1年未満のパートでも、夜勤に入れるなら健診の対象になるということです。
ただし、これは期間の要件だけの話です。1週間の所定労働時間が通常の職員の4分の3以上という要件は、そのまま残ります。期間が6か月に緩和されたからといって、週16時間の登録ヘルパーに義務が生じるわけではありません。
起点は採用の日。次は6か月以内
採用と同時に夜勤へ入れる場合、実務上は採用時の健診が1回目を兼ねます。そして次の期限は、その健診日から6か月以内です。
前章で触れた省略規定が、ここで効きます。採用時に健診を実施し、その職員をすぐ夜勤に入れるなら、配置替えの際の健診は重複項目を省いた形で足ります。
注意したいのは、省略できるのは項目であって、起点ではないという点です。採用日を起点とする6か月のカウントは動きません。4月採用・即夜勤の職員なら、10月までに2回目が必要です。施設の一斉健診が11月なら、この職員だけ間に合いません。
採用時は日勤、あとから夜勤に入れる場合
介護施設で多いのは、むしろこちらのパターンだと思います。入職後しばらく日勤で慣らし、夜勤に入れるのはその後、という流れです。この場合、判断は採用日と夜勤開始日の間隔で分かれます。
- 6か月以内に夜勤へ入れる場合 — 採用時の健診から6か月以内なので、配置替えの際の健診は重複項目を省略できます。ただし起点は配置替えの日に移り、そこから6か月以内に次を実施します。
- 6か月を超えてから夜勤へ入れる場合 — 省略の仕組みが使えません。配置替えの時点で改めて健診を実施し、そこから6か月のカウントを始めます。
「入職時に受けたばかりだから」という理由で配置替え時の健診を飛ばせるのは、6か月以内に限られるということです。7月に採用して翌年2月に夜勤へ組み入れたなら、2月に健診が必要になります。
起点がばらけたときの実務
中途採用が続くと、職員ごとの起点は採用月の数だけ散らばります。これを一人ずつ個別手配していては事務が回りません。
前章の二段構えに戻します。施設としての実施月は2つに固定したまま、中途採用者は「採用時(または配置替え時)に1回挟む」ことだけを徹底し、その後は一斉健診のサイクルへ合流させます。合流できるかどうかは、次の一斉健診が6か月以内に来るかで判定できます。
たとえば実施月を4月と10月にしている施設で、6月に採用して即夜勤に入れた職員がいるとします。6月に健診を実施すれば、次の10月まで4か月なので、10月の一斉健診に乗せられます。逆に、11月採用の職員は、11月に実施すると次は翌年4月まで5か月なので、こちらも乗ります。採用月がいつであっても、採用時に1回挟んでおけば、半年ごとの実施月のどちらかで必ず拾えるという設計になります。
小規模施設ならこう実践
採用手続きのチェックリストに「健診の実施日」と「夜勤に入れる予定の有無」の2欄を足しておく。この2つが埋まっていれば、次の期限は機械的に計算できます。採用担当と労務担当が分かれている施設ほど、この受け渡しが抜けやすいところです。
そもそも誰が年2回の対象になるのか?「常時従事」の判定
ここまで、日程の組み方を先に見てきました。ただし、そのすべては「その職員が年2回の対象である」という前提の上に成り立っています。この章で、その前提を確認します。
まず、深夜業とは午後10時から午前5時まで
労働安全衛生規則が定める特定業務のひとつに「深夜業を含む業務」があり、これが夜勤者の健診の根拠です。ここでいう深夜業とは、午後10時から翌午前5時までの時間帯の労働を指します。
この時間帯に少しでもかかれば、深夜業を行ったことになります。夜勤専従や2交代の16時間夜勤だけでなく、遅番の終業が午後10時を回る勤務も、この時間帯に入ります。介護施設では、遅番の終業時刻が午後10時前後に設定されていることがあり、記録上は日勤扱いでも深夜業に該当している職員が出てきます。
「常時従事」の物差しは、週1回以上または月4回以上
条文は「常時従事する労働者」としか書いておらず、回数の定義はありません。実務の物差しになるのは行政通達です。
大阪労働局のパンフレットは、「深夜業を含む業務」とは業務の常態として深夜業(22時から翌5時)を1週1回以上または1か月に4回以上行う業務をいう、と説明しています(昭和23年10月1日基発第1456号)。介護施設では、この「月4回以上」が対象者を見分ける最初の目安になります。
外せないのは「常態として」という条件
ここで落としてはいけないのが「常態として」という条件です。
普段は日勤中心の職員が、急な欠員対応であるひと月だけ4回夜勤に入った——このような一時的・突発的なケースまで、年2回の対象に含める趣旨ではありません。
逆方向もあります。シフト表の上では月3回でも、恒常的に残業が深夜帯に食い込んで実態として月4回以上になっているなら、対象と考える必要があります。数えるのは「予定の回数」ではなく、「深夜の時間帯に実際に働く回数が常態としてどうか」です。所定の終業が午後10時より前の職種でも、残業が常態的に深夜へ及ぶなら対象になり得ます。
16時間夜勤は、単月で数えると判定が毎月ひっくり返る
介護施設で判定が最もぶれやすいのが、2交代制の16時間夜勤です。
16時間夜勤(たとえば16時30分から翌9時30分)は1回の拘束時間が長いため、シフトを組むと1人あたりの月の夜勤回数が3回から5回のあたりで月ごとに揺れます。これを単月で機械的に「今月は3回だから対象外、翌月は5回だから対象」と扱うと、判定が毎月ひっくり返り、前章までの日程管理が成り立ちません。
実務では、単月の回数に振り回されず、雇用契約や勤務の割り振り上「常態として月4回以上の夜勤が組み込まれているか」で一貫して判定するのが妥当です。
参考になる考え方があります。深夜業に従事する労働者が自発的に受けた健康診断の結果を事業者に提出できる仕組みでは、対象者を「6か月間を平均して1か月あたり4回以上の深夜業に従事した者」としています。これは本来、労働者側からの提出の要件を定めたものですが、単月ではなく一定期間の平均でならして見るという考え方は、変則シフトの対象判定においても拠り所になります。
境界線上で迷う職員については、安全側、つまり対象に含める運用にしておくほうが、後の確認で指摘を受けるリスクを避けられます。

小規模施設ならこう実践
深夜の勤務回数を勤怠システムで自動集計できない施設も少なくありません。その場合は、夜勤・準夜勤を含むシフトに定常的に入っている職員をまず対象者リストに挙げ、直近半年の夜勤回数を数えて「月平均4回以上」を一つの線とする。この単純な物差しで、大半の職員は判定できます。完璧な自動計算にこだわるより、毎回同じ基準で漏れなく拾える運用のほうが、現場では続きます。
なお、施設が複数ある法人で集計そのものを仕組み化したい場合は、複数施設の勤怠をクラウドで管理する場合の初期設定もあわせてご覧ください。
判定に迷う3つのケース(登録ヘルパー・宿直・たまに夜勤)
前章の「月4回以上」という物差しは、フルタイムの夜勤職員ならそのまま当てはめられます。ただ介護現場には、この物差しだけでは割り切れない働き方があります。ここでは、判定の相談が特に多い3つのケースを取り上げます。
ケース1:週に数回だけ入る登録ヘルパー・短時間パート
「パートやアルバイトは、正社員の所定労働時間の4分の3以上でなければ健診の義務はない」——このルールを耳にしたことがある担当者は多いと思います。
この4分の3という労働時間の基準は、夜勤者向けの特定業務従事者健診にも当てはまります。大阪労働局のパンフレットは、短時間労働者に対する健康診断の対象として、定期健康診断・雇入時健診と並べて特定業務従事者健診を挙げたうえで、「常時使用する短時間労働者」の要件として、1週間の労働時間数が同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であることを示しています。深夜業だからといって、労働時間の基準が外れるわけではありません。
介護施設に当てはめます。常勤職員の所定労働時間を週40時間とすると、その4分の3は週30時間です。したがって、週16時間ほどしか働かない登録ヘルパーは、たとえ深夜業に月4回以上入っていても、法令上の実施義務そのものは生じません。「夜勤に入っている=自動的に年2回の義務」ではない、ということです。
ただし、義務がないことと、実施しなくてよいことは別です。1週間の労働時間が通常の職員のおおむね2分の1以上(週40時間なら20時間以上)ある短時間労働者については、健診を実施することが望ましいとされています。さらに、深夜業が心身に与える負担の大きさを踏まえれば、義務の有無にかかわらず、月4回以上コンスタントに夜勤へ入る短時間職員には、安全配慮の観点から自主的に健診を受けさせておくのが望ましい対応といえます。
なお、この論点は解説が割れています。「6か月以上の使用見込みと月4回以上の深夜業を満たせば対象」と、労働時間の要件に触れずに説明しているものが実際にあります。しかし労働局の資料が示す義務の線引きとしては、4分の3という労働時間の要件が外せません。義務なのか、望ましい対応なのか、それとも安全配慮としての自主的な実施なのか——この3段階を区別しておくと、判断がぶれません。労働時間が境界線上にある職員は、所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。
なお、同じ「4分の3」でも、社会保険や雇用保険の加入判定は健診とは別の基準で動きます。夜勤専従のパート職員については、夜勤16時間の週所定労働時間の数え方と社会保険・雇用保険の加入判定で詳しく整理しています。
ケース2:仮眠をはさむ宿直(宿日直許可を受けているケース)
施設によっては、労働基準監督署から断続的な宿直・日直の許可(いわゆる宿日直許可)を受けて夜間帯を配置している場合があります。
この扱いは、実務で「対象外」と整理されることが多い一方、そう言い切れる根拠を公的資料で確認できませんでした。宿日直許可は労働基準法第41条と労働基準法施行規則第23条に基づき、宿直勤務が断続的な労働と認められる場合に労働時間から除外する仕組みです。ほとんど労働がないことを前提とする以上、業務の常態として深夜業を行っているとはいえない、という理屈は成り立ちます。ただし同条の適用除外が及ぶのは労働時間・休憩・休日の規定であり、深夜業に関する規定まで外れるわけではありません。
本記事では「対象外」と断定しません。宿日直許可を受けている施設で対象判定に迷う場合は、自施設の宿直の実態を示して所轄の労働基準監督署に確認してください。なお、名目上は許可を受けていても、夜間に急変対応などの実作業が頻繁に発生しているなら、そもそも許可の前提を欠いている可能性があります。
ケース3:欠員対応などで「たまに」夜勤に入る職員
日勤が基本の職員が、欠員やシフトの都合で時々夜勤に入る——このケースは、前章の「常態として」という条件に立ち返れば整理できます。
ポイントは、その夜勤が一時的・突発的なのか、恒常的なのかです。ある月にたまたま欠員が重なって4回夜勤に入ったが、通常はほとんど夜勤がない、という職員であれば、常態として深夜業を行っているとはいえず、年2回の対象とはなりません。一方、「日勤中心だが、毎月コンスタントに4回前後は夜勤に入る」という状態が続いているなら、それはもう常態です。対象として扱うべきといえます。
判断に迷ったときは、単月ではなく直近半年をならして見る——前章の考え方が、ここでも有効です。一過性の増減に振り回されず、その職員の夜勤が続いているかで見極めてください。
健診の「あと」の実務——個人票の保存と結果報告書
健診は受けさせて終わりではありません。実施後に、記録の保存と、規模によっては労働基準監督署への報告が続きます。ここは施設の規模で義務の範囲が変わるので、自施設がどこまで必要かを最初に切り分けておくと迷いません。
すべての施設に共通——個人票の作成と保存
規模にかかわらず必要なのが、健康診断個人票(様式第5号)の作成と保存です。特定業務従事者健診を含む健康診断の結果は、労働者ごとに個人票を作成し、5年間保存しなければならないとされています(労働安全衛生規則第51条)。
小規模なグループホームであっても、この記録の保存義務は免れません。健診機関から返ってくる結果を職員任せにせず、施設側で個人票として整えて保管する。ここは全施設共通の基本です。
なお、2027年4月からは個人票の様式も変わります。血清クレアチニン検査の追加と喀痰検査の削除、肝機能検査の酵素名変更が反映されるためです。既存の用紙は、合理的に必要と認められる範囲内で、当分の間、必要な改訂をしたうえで使用できるとされています。
報告が必要なのは、常時50人以上の事業場だけ
労働基準監督署への報告は、すべての施設に課されているわけではありません。
労働安全衛生規則第52条第1項は、常時50人以上の労働者を使用する事業者が、第44条または第45条の健康診断(定期のものに限る)を行ったときは、遅滞なく定期健康診断結果報告書(様式第6号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならないと定めています。第45条が名指しされているとおり、夜勤者の特定業務従事者健診も、この報告書にまとめて報告する扱いです。
裏を返せば、常時50人未満の事業場には、この報告書の提出義務はありません。
注目したいのは「定期のものに限る」という括弧書きです。特定業務従事者健診には「配置替えの際」のものと「6か月以内ごと」のものがあります。報告の対象になるのは後者だけで、年の途中で夜勤に配置替えした職員に実施した健診は、報告書に載せる必要がありません。中途採用や配置替えが頻繁な施設ほど、この区別を知っておくと、報告のたびに迷わずに済みます。
介護の現場感覚でいえば、常時50人以上の労働者を抱える事業場はそれほど多くありません。小規模な事業所が中心の業界特性を踏まえると、報告書の提出義務が生じるのは一定規模以上の施設に限られます。「うちも報告書がいるのか」と身構える前に、まず自施設が50人以上に当たるかを確認してください。
見落としやすい——「50人」は法人単位ではなく事業場単位で数える
ここが最も誤解の多いところです。この「50人以上」は、法人全体の従業員数ではなく、事業場ごとにカウントします。
事業場とは何か。労働者健康安全機構の解説によれば、工場、事務所、店舗のように一定の場所において相関連する組織の下に継続的に行われる作業の一体をいい、一の事業場であるか否かは主として場所的観念によって決定すべきものとされています。同一場所にあるものは原則として一の事業場、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場、という考え方です。
これを介護法人に当てはめると、判定が2方向に分かれます。
離れた場所に施設がある場合は、別々に数えます。一つの社会福祉法人が特別養護老人ホームを3施設運営していて、法人全体では職員が90人いるとします。しかし各施設の職員数がそれぞれ30人ずつであれば、提出義務がかかる「50人以上の事業場」はひとつもない、という判定になります。法人の規模が大きくても、施設単位で分ければ50人未満に収まるケースは、介護業界では珍しくありません。
逆に、同一敷地内に複数の事業所がある場合は注意が要ります。特別養護老人ホームに併設のデイサービスとショートステイがある、といった形は介護では標準的です。場所的観念を原則とするなら、これらは一の事業場として扱われるのが基本の考え方になります。指定申請の単位が事業所ごとに分かれていても、労働安全衛生法上の事業場の数え方はそれとは別です。介護保険の事業所単位で30人ずつだから50人未満、という数え方をしていると、判定を誤る可能性があります。
ただし、同一場所にあっても労働の態様が著しく異なる場合など、別個の事業場として扱う整理もあり得ます。併設型で合計が50人前後になる施設は、自施設の構成を示して所轄の労働基準監督署に確認しておくのが確実です。
なお、この「50人以上の事業場」という基準は、産業医や衛生管理者の選任義務、ストレスチェックの実施義務でも共通です。事業場の単位そのものについては、事業所を増やしたときに本社へ一括できる手続きと、事業場ごとに残り続ける手続きで整理しています。
報告する施設は、提出方法にも変更あり
報告義務のある50人以上の事業場では、提出方法にも変更があります。2025年(令和7年)1月から、定期健康診断結果報告を含む労働安全衛生関係の一部の手続きは、電子申請が原則とされました。ただし当分の間は、電子申請が難しい場合に書面で提出できる経過措置も設けられています。
小規模施設ならこう実践
常時50人未満の事業場であれば、報告書の提出は不要です。やるべきことは、健診結果を個人票として整え、5年間きちんと保管しておくこと。この記録さえ残しておけば、後から調査が入っても実施の事実を示せます。「報告は規模次第、記録の保存は全施設」と覚えておけば十分です。
労働基準監督署の調査で見られるところ
調査(臨検)で何を見るかは、その調査の目的によって変わります。申告を端緒とする調査と、定期的な調査とでは重点が違いますし、労働時間や割増賃金が中心になることも多くあります。ただ、健康診断を実施しているかどうかの確認は行われます。
ここで夜勤者の特定業務健診は、見落とされやすいわりに指摘されやすい項目です。年1回の定期健診はきちんと回していても、「夜勤者は年2回」という点が抜けている。対象者リストと実施記録を突き合わせたときに、そこで初めて漏れが判明する、という形です。個人票の保存ができていれば実施の事実を記録で示せますが、記録がなければ実施していないとみなされかねません。誰が対象で、いつ配置替えをして、いつ実施したか。この一覧が、実施漏れの防止と調査対応の両方を兼ねます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 夜勤者の健康診断は、いつ受けさせればよいですか
その職員を夜勤(深夜業を含む勤務)に配置替えした時点で1回実施し、その後は6か月以内ごとに1回です。起点は施設の一斉健診の日程ではなく、その職員を夜勤に入れた日になります。年の途中で夜勤を始めた場合は、次の一斉健診を待たず、配置替えのタイミングで受けさせるのが原則です。
Q2. 中途採用で最初から夜勤に入れる場合は、どうなりますか
採用時の健康診断が実質の起点になります。次の期限はその健診日から6か月以内です。なお、採用時の健診から6か月以内に夜勤へ配置替えする場合は、配置替えの際の健診で重複する項目を省略できます。ただし省略できるのは項目であって、6か月のカウントそのものは動きません。
Q3. 夜勤明けにそのまま受診させてもよいですか
受診の時間帯を制限する規定はないため、それ自体が違法になるわけではありません。ただし健康診断の目的は健康状態を把握することにあり、夜勤直後の数値がその職員の通常の状態を表しているかは慎重に考える必要があります。健診機関に勤務の状況を伝えて受診時刻を相談するか、勤務日の日中に組むのが無難です。
Q4. 受診に要した時間の賃金は、支払う必要がありますか
特定業務従事者の健康診断は一般健康診断にあたり、行政解釈では、受診に要した時間の賃金は当然に事業者が負担すべきものではなく、労使の協議によって定めるべきものとされています。あわせて、支払うことが望ましいとも示されています。夜勤専従者を日中に呼び出す場合は不満が生じやすいので、扱いをあらかじめ決めておくことをおすすめします。なお、健診の費用そのものは事業者の負担です。
Q5. 週2回だけ夜勤に入るパート・登録ヘルパーも対象ですか
労働時間によって扱いが変わります。実施が義務となるのは、1週間の所定労働時間が通常の職員のおおむね4分の3以上ある場合です。これに満たない短時間のヘルパーは、深夜業が月4回以上あっても、法令上の実施義務までは生じません(おおむね2分の1以上であれば実施が望ましいとされています)。ただし深夜業の負担を踏まえれば、義務の有無にかかわらず自主的に受けさせておくのが安全です。
Q6. 宿直(宿日直許可を受けている場合)も年2回の対象になりますか
実務では対象外と整理されることが多い一方、そう言い切れる根拠は公的資料で確認できませんでした。宿日直許可は労働時間・休憩・休日の規定を適用除外とする仕組みですが、深夜業に関する規定まで外れるわけではないためです。宿日直許可を受けている施設で判定に迷う場合は、宿直の実態を示して所轄の労働基準監督署に確認してください。
Q7. 定期健康診断と特定業務健診は、別々に受けさせる必要がありますか
別々に2回受けさせる必要はありません。そもそも夜勤に常時従事する職員は定期健康診断の対象から除かれており、年2回とも特定業務従事者健診という扱いになります。実務としては、施設の実施月を年2回固定し、夜勤者は両方に乗せる形で足ります。2回のうち1回は、胸部エックス線検査などの項目が軽くなります。
Q8. 常時50人未満の施設でも、監督署への報告は必要ですか
定期健康診断結果報告書の提出義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に課されるものです。50人未満の施設に提出義務はありません。ただし健診結果を個人票として作成し、5年間保存する義務は、規模にかかわらずすべての施設にあります。なお、この50人は法人全体ではなく事業場ごとに数えます。
Q9. 夜勤者の健康診断を実施しなかった場合、罰則はありますか
健康診断の実施は事業者の義務であり、実施しなかった場合は労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象になります。夜勤者に必要な6か月以内ごとの健診を怠った場合も同じです。ただし実務上、未実施が直ちに罰金につながることは考えにくく、労働基準監督署の指導を受けてもなお改善しない場合に問われる、という順序になります。罰則を気にするより、対象者と実施日の記録を整えておくほうが現実的な備えです。
まとめ——起点を職員ごとに押さえておけば、あとは回る
介護施設の夜勤職員の健康診断について、実施のタイミングを軸に見てきました。要点を整理します。
受けさせるタイミングは3つでした。夜勤を含む勤務に入れた時点(配置替えの際)、そこから6か月以内ごと、そして中途採用で最初から夜勤に入れるなら雇入れの際の健診が起点になります。「年2回」は、施設の一斉健診にもう1回足すという意味ではありません。夜勤に常時従事する職員はそもそも定期健康診断の対象から外れており、2回とも特定業務従事者健診です。だからこそ、6か月のカウントは施設の日程ではなく、その職員を夜勤に入れた日から始まります。
実務の設計は、施設の実施月を年2回固定し、そこへ全員を乗せる。乗り切らない職員だけ、配置替えや採用の時点で1回挟んで合流させる。この二段構えで足ります。2回とも同じ項目である必要はなく、胸部エックス線検査などは年1回で足ります。ただし血液検査の省略は施設が決めるものではなく、個々の職員について医師が判断するものです。
誰が対象になるかは、業務の常態として深夜業を週1回以上または月4回以上行っているかが目安でした。16時間夜勤のように月ごとに回数が揺れる場合は、単月ではなく直近半年をならして一貫して判定します。短時間の登録ヘルパーは、深夜業の回数だけでなく労働時間の要件(通常の職員の4分の3以上)で義務の有無が分かれます。宿日直許可を受けた宿直の扱いは、公的な根拠を確認できませんでした。迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
健診の後は、規模を問わず個人票を作成して5年間保存すること。常時50人以上の事業場は結果報告書を提出すること。この50人は法人全体ではなく事業場単位で数えます。介護法人では、離れた施設は別々に数える一方、同一敷地の併設事業所は合算される可能性があるという、両方向の注意が必要です。
こうして振り返ると、夜勤者の健診でつまずくのは、多くが起点の管理に集約されます。誰が対象で、いつ夜勤に入れて、いつ実施したか。この3列の一覧を更新しておくだけで、実施漏れの防止にも、調査への備えにもなります。立派なシステムは必要ありません。
最後に留意点をお伝えします。健康診断をめぐる制度は改正されます。本記事で触れた検査項目も2027年4月に変わり、様式も変更されます。実際に手続きを進める際は、厚生労働省や所轄の労働基準監督署が公表する最新の情報をご確認ください。そして、自施設の勤務実態に照らして判断に迷う場合——とくに宿直や短時間職員の対象判定のように線引きが難しいケースでは、所轄の労働基準監督署や顧問の社会保険労務士など、専門家に相談することをおすすめします。


参考(一次情報)
- 労働安全衛生規則(第43条・第44条・第45条・第51条・第52条ほか)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 労働安全衛生法(第66条・第120条ほか)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- 労働基準法(第41条ほか)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf
- 健康診断等を実施しましょう(深夜業を含む業務の定義・短時間労働者の要件)|大阪労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/001245875.pdf
- 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について(令和8年4月28日基発0428第9号|血清クレアチニン検査の追加・喀痰検査の削除・肝機能検査の酵素名変更、令和9年4月1日施行)|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001700009.pdf
- 規模50人以上の事業場の労働安全衛生(事業場の考え方)|労働者健康安全機構 岡山産業保健総合支援センター https://okayamas.johas.go.jp/column-no8/
- 労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請の義務化(令和7年1月1日〜)|三重労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/news_topics/topics/r6denshishinsei_001.html
※本記事の内容は公開時点の情報に基づく一般的な解説です。制度は改正されることがあるため、実際の手続きにあたっては最新の一次情報をご確認のうえ、個別の判断は所轄の労働基準監督署または顧問の社会保険労務士等にご相談ください。
