介護施設で夜勤専従のパート職員を採用するとき、社会保険と雇用保険に加入させる必要があるかどうかは、月に何回夜勤に入るかで決まります。1回17時間拘束・休憩2時間・実働15時間の夜勤であれば、おおよそ月6回が分かれ目です。ただしこれは、正職員が週40時間・月20日勤務である場合の計算です。自施設の数値で計算し直す必要があります。
そして、加入させたあとに気をつけたい手続きがあります。夜勤専従は出勤日数が少なくなるため、退職時に作成する離職票で、事業主が労働時間数を備考欄に記載しなければならない場合があります。この記載が漏れると、本来は失業給付の受給資格を満たすはずの職員が、満たさないと判定される可能性があります。
この記事では、加入の判定から、退職時の手続きで注意する点までを順に整理します。
「夜勤専従は社会保険に入れない」というのは、どこまで正しいか
夜勤専従の職員について、「何回夜勤に入っても社会保険には入れない」という理解が、介護の現場に一定程度存在します。根拠として挙げられるのは勤務日数です。夜勤は日をまたぐため、出勤する日が正職員より大幅に少なくなる。だから正職員の勤務日数の4分の3には届かない。したがって加入対象にならない、という筋道です。
夜勤専従のパートが社会保険に入れないというのは本当なのか?
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入判定に使われる基準の一つが、いわゆる4分の3基準です。1週間の所定労働時間と、1か月の所定労働日数の両方が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上であること。これが要件になります。時間だけを満たしても、日数だけを満たしても足りません。夜勤専従は出勤日数が少なくなりやすいため、この基準では日数の側で引っかかりやすい。ここまでは、そのとおりです。
見落とされているのは、社会保険の加入判定にはもう一つ別の基準があることです。
短時間労働者の適用拡大という枠組みでは、次の要件を満たす場合にも加入対象になります(日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」)。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 2か月を超える雇用の見込みがあること
- 学生でないこと
- 特定適用事業所に使用されていること
ここに、所定労働日数の要件は入っていません。
つまり、出勤日数が少ないことは、この基準では判定に影響しません。4分の3基準では日数で届かない夜勤専従が、適用拡大の基準では労働時間だけで加入対象になる。「何回やっても入れない」という理解は、この2つ目の基準を視野に入れていないことになります。
しかもこの基準は、これから単純になります。所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件は、令和8年(2026年)10月に撤廃される予定です。全国の最低賃金が時給1,016円以上となり、週20時間働けば所定内賃金が自動的に8.8万円に達するようになったためです。撤廃後は、週の所定労働時間が20時間以上かどうかが、判定の唯一の分かれ目になります。
ただし、適用拡大の基準がすべての事業所で働くわけではありません。適用されるのは、厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上と見込まれる法人等(特定適用事業所)と、労使の合意にもとづいて申し出をした事業所に限られます。50人以下の事業所では、現時点ではこの基準は働かず、4分の3基準だけで判定することになります。この規模による分岐は第3章で扱います。(実際には、夜勤1回の労働で、2日分として取り扱うことも可能です。そのように計算すると週2回の夜勤で4日分働いたことになる。1回15時間の勤務だとすれば、2回で30時間。週4日、30時間となれば、社会保険の加入義務となることもあると考えることができます。)
なお、雇用保険には、そもそも所定労働日数の要件がありません。1週間の所定労働時間が20時間未満の者が適用除外と定められているため(雇用保険法第6条第1号)、判定は労働時間だけで決まります。夜勤専従の場合、社会保険より先に雇用保険の加入義務が生じる場面が多くなります。
4分の3基準そのものの考え方、分母になるのは自施設の正職員であり、全国一律の時間数はないことについては、クリニックの社会保険加入判定を扱った記事で詳しく整理しています。
16時間夜勤の「週の所定労働時間」を計算する
前章で見たとおり、社会保険の適用拡大も雇用保険も、判定に使うのは週の所定労働時間です。したがって、夜勤専従パートの加入を判断するには、まずその職員の週の所定労働時間が何時間なのかを確定させる必要があります。
ここで手が止まる施設が少なくありません。夜勤専従の雇用契約書には、「月4回」「月6回程度」といった回数だけが書かれていたり、「シフトによる」としか記載がなかったりすることがあるためです。週単位の記載がなければ、週20時間と比べようがありません。
月単位の定めを週に換算する
所定労働時間が1か月単位で定められている場合の計算方法は、公的に示されています。1か月の所定労働時間を12分の52で除して(12を掛けて52で割って)、1週間の所定労働時間を算出します。1年を52週とし、1か月を52分の12年と見る考え方です(日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集」問31)。
雇用保険でも同じ方法が用いられます。三重労働局は、月単位で勤務が決まっている職員について、月平均の所定労働時間を12分の52で除して週の所定労働時間を判断した計算例を公開しています。
この式を逆に使うと、週20時間に相当する1か月の所定労働時間は、86時間40分になります。夜勤専従の判定は、月の所定労働時間がこの数字を超えるかどうかで決まります。
夜勤の回数に置き換える
拘束17時間・休憩2時間・実働15時間の夜勤を前提にすると、次のようになります。
| 月の夜勤回数 | 月の所定労働時間 | 週換算 | 週20時間 |
|---|---|---|---|
| 4回 | 60時間 | 13.8時間 | 届かない |
| 5回 | 75時間 | 17.3時間 | 届かない |
| 6回 | 90時間 | 20.8時間 | 超える |
| 7回 | 105時間 | 24.2時間 | 超える |
| 8回 | 120時間 | 27.7時間 | 超える |
実働15時間の夜勤であれば、月6回から週20時間を超えます。
ただし、1回の実働時間が変われば境界も動きます。休憩が3時間で実働13時間の施設なら、月7回でようやく91時間となり、月6回(78時間)では届きません。自施設の夜勤1回の実働時間で計算し直してください。
休憩・仮眠時間の扱いと、所定の定め方
計算の分子になるのは所定労働時間なので、休憩・仮眠として労働時間から除いている時間は含めません。ここが1時間違うだけで、月6回なら6時間の差になります。境界に近い職員では結論が変わり得る幅です。
もう一点、実務上の前提があります。1日の所定労働時間を8時間を超えて定めるには、変形労働時間制の導入が必要です。労働基準法は1日8時間・週40時間を上限としているためです。16時間夜勤を「所定労働時間15時間の勤務」として組んでいる施設は、通常その前提として1か月単位の変形労働時間制を採用しています。これを採用していない場合、その勤務は所定8時間と時間外7時間に分かれることになり、後述する離職証明書の記載にも影響します。変形労働時間制そのものの要否については、1か月単位の変形労働時間制が必要かを整理した記事で扱っています。
なお、契約書に所定の定めがなく、実態だけで運用している場合は、勤務実態から判断されることになります。判定の起点を持たないまま運用を続けるのは、次章以降のすべての判断を曖昧にします。
月の夜勤回数で決まる、3つの加入の線
夜勤専従パートの加入判定には、確認すべき線が3本あります。雇用保険の線、社会保険の適用拡大の線、社会保険の4分の3基準の線です。それぞれ要件が異なるため、同じ職員でも「雇用保険には入るが社会保険には入らない」という状態が普通に生じます。
拘束17時間・休憩2時間・実働15時間の夜勤、正職員は週40時間・月20日勤務、という前提で整理します。
| 要件 | 実働15時間の夜勤に換算すると | |
|---|---|---|
| 雇用保険 | 週の所定労働時間20時間以上、31日以上の雇用見込み | 月6回から |
| 社会保険(適用拡大) | 週の所定労働時間20時間以上ほか。51人以上の法人等に限る | 月6回から(規模要件を満たす場合) |
| 社会保険(4分の3基準) | 週の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、正職員の4分の3以上 | 時間の面では月9回から |

事業所の規模で結論が変わる
適用拡大の基準が使えるかどうかは、事業所の規模で決まります。
厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上の法人等であれば、適用拡大の基準が働きます。この場合、月6回の夜勤専従パートは、雇用保険と社会保険の両方の加入対象になります。
ここで注意したいのが、この人数は施設単位ではなく法人単位で数えるという点です。日本年金機構は、法人事業所の場合、同一法人格に属する(法人番号が同一である)すべての適用事業所の被保険者数の総数で判断すると示しています。複数の施設を運営する法人では、一つひとつの施設が50人以下でも、法人全体で51人を超えていれば適用拡大の対象になります。介護事業者は小規模事業所を複数持つ形が多いため、施設の職員数だけを見て「うちは対象外」と判断すると誤ります。
一方、法人全体で50人以下であり、労使の合意にもとづく申し出(任意特定適用事業所)もしていない場合、適用拡大の基準は働きません。この場合、社会保険については4分の3基準だけで判定することになります。
50人以下の施設に残る、判断の難しさ
4分の3基準は、週の所定労働時間と1か月の所定労働日数の両方を満たすことが要件です。
時間の面では計算できます。正職員が週40時間なら4分の3は週30時間で、これは月130時間にあたります。実働15時間の夜勤なら月9回で135時間となり、この線を超えます。
問題は日数です。正職員が月20日勤務なら、4分の3は月15日。夜勤専従が月15日の所定労働日数に届くかどうかは、日をまたぐ1回の夜勤を何日と数えるかによって変わります。そして、この数え方について、社会保険の加入判定の場面を明確に定めた通達を確認できませんでした。1回を2日と数えるなら月9回で18日となり要件を満たしますが、1日と数えるなら9日にとどまります。(実務的には1回で2日の計算で18日として、加入するべきでしょう。)
したがって、法人全体で50人以下の施設では、夜勤専従パートの社会保険加入について、この記事で一意の結論を示すことができません。管轄の年金事務所に、自施設の勤務形態を示して確認することをおすすめします。確認の際は、正職員の所定労働時間・所定労働日数、夜勤1回の所定労働時間、月の夜勤回数の4点を用意しておくと話が早くなります。
なお、雇用保険には所定労働日数の要件がないため、この曖昧さは生じません。規模にも左右されません。月6回であれば、50人以下の施設でも雇用保険の加入対象です。
これから、判定は単純になっていく
この曖昧さは、制度改正によって縮んでいきます。
まず、適用拡大の賃金要件(所定内賃金が月額8.8万円以上)が令和8年(2026年)10月に撤廃される予定です。撤廃後、適用拡大の判定は実質的に週20時間の一点になります。
次に、企業規模要件が段階的に引き下げられます。
| 時期 | 対象となる事業所 |
|---|---|
| 現在 | 厚生年金被保険者数51人以上 |
| 2027年10月 | 36人以上 |
| 2029年10月 | 21人以上 |
| 2032年10月 | 11人以上 |
| 2035年10月 | すべての事業所 |
つまり、多くの介護事業者は、遠くない時期に適用拡大の対象に入ります。対象に入れば、4分の3基準の日数をどう数えるかで悩む必要がなくなり、週20時間だけで判定できるようになります。裏を返せば、これまで社会保険の対象外としてきた夜勤専従パートが、順次加入対象になっていくということでもあります。
雇用保険も、2028年10月に適用拡大となる
社会保険だけではありません。雇用保険についても改正が成立しており、2028年(令和10年)10月1日から、加入の要件が週の所定労働時間10時間以上に引き下げられます(雇用保険法等の一部を改正する法律・令和6年法律第26号。厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要」)。
週10時間は、1か月では43時間20分です。実働15時間の夜勤なら、月3回から雇用保険の加入対象になります。現在は対象外である月4回・5回の夜勤専従が、加入対象に入ります。
あわせて、週20時間を基準に設定されていた各種の基準が、いずれも現行の2分の1に改正されます。次章で扱う被保険者期間の算定基準も、その一つです。
| 現在 | 2028年10月以降 | |
|---|---|---|
| 加入の要件 | 週20時間以上 | 週10時間以上 |
| 被保険者期間の算定 | 賃金支払基礎日数11日以上、または80時間以上 | 6日以上、または40時間以上 |
つまり、加入ラインも、被保険者期間ラインも、同じ割合で下がります。それぞらのラインの位置は変わりますが、加入の判定は所定労働時間、被保険者期間の算定は実績という構造は、そのまま残ります。次章の内容は、2028年以降も同じように当てはまります。
加入していても、被保険者期間から除かれる月がある
夜勤専従パートを雇用保険に加入させ、保険料を納め続けていても、その職員が退職したときに失業給付を受けられないことがあります。事業所が違反をしているわけではありません。加入するかどうかと、失業給付を受けられるかどうかで、判定に使う材料が違うためです。
加入の判定に使うのは、契約上の所定労働時間です。前章まで見てきたとおり、週20時間以上と定めていれば被保険者になります。
一方、失業給付の受給資格を判定するのは、実績です。実際に賃金が支払われた日数、または時間数で数えます。

このズレは、厚生労働省自身が認めているものです。都道府県労働局・ハローワークと連名で出しているリーフレットには、令和2年の改正理由について、週の所定労働時間が20時間以上であり、かつ雇用見込み期間が31日以上であるという雇用保険被保険者となる要件を満たしながらも、賃金支払の基礎となった日数が11日に満たないことにより被保険者期間に算入されない期間があるため、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定する、と書かれています(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「失業等給付の受給資格を得るために必要な『被保険者期間』の算定方法が変わります」)。
加入要件を満たしながら算入されない期間がある。これが改正の出発点でした。
被保険者期間はどう数えるか
失業給付(基本手当)を受けるには、原則として離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12か月以上必要です。倒産・解雇等による離職などでは、離職の日以前1年間に6か月以上に緩和されます。
この「1か月」は、離職日から1か月ごとに区切った期間について、次のいずれかを満たす場合に数えます。
- 賃金支払の基礎となった日数が11日以上
- 賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上
2つ目は令和2年8月1日以降の離職者から適用されているもので、日数だけでは足りない場合を補う位置づけです。
賃金支払基礎日数は、実際に出勤した日に、年次有給休暇を取得した日や休業手当が支払われた日を加えて数えます。無給の欠勤は含みません。
夜勤は2日と数える。ただし条件がある
暦日をまたぐ夜勤を何日と数えるかについて、雇用保険には明確なルールがあります。労働局が事業主向けに出しているリーフレットは、深夜労働に従事して翌日にわたり、かつ労働時間が8時間を超える場合は2日として計算し、8時間を超えない場合は1日として計算すると示しています(石川労働局「2日にわたって労働した場合の賃金支払基礎日数について」)。
ここで注意すべき条件が2つあります。
第一に、この「労働時間」は所定労働時間を指します。同じリーフレットは、日勤で時間外労働をした結果、実労働時間が翌日にわたって8時間を超えたとしても、前日の所定労働時間の延長とみなして1日として計算する、と明記しています。
したがって、第2章で触れた点を思い出してください。変形労働時間制を採用して夜勤日の所定労働時間を15時間と定めている施設では2日と数えますが、採用しておらず所定8時間と時間外という形で運用している場合は、1日と数えることになります。同じ16時間夜勤でも、勤務時間制度の設計によって数え方が変わります。
第二に、労働基準監督署の許可を受けた宿直勤務は、この扱いから除かれます。
80時間の基準は、備考欄に記載しなければならない
ここが実務上、最も見落とされやすい部分です。
離職証明書には、労働時間数を記載する専用の欄がありません。賃金支払基礎日数を書く欄(9欄・11欄)はありますが、時間数の欄はないのです。
そのため、先ほどのリーフレットは事業主に対して、9欄と11欄に記載する賃金支払基礎日数が10日以下の期間については、当該期間における賃金支払の基礎となった労働時間数を13欄(備考欄)に記載するよう求めています。
つまり、80時間の基準は自動的に適用されません。基礎日数が10日以下の月について、事業主が備考欄に労働時間数を書いて初めて、ハローワークがその月を算入できます。記載がなければ、日数だけで判定されます。
夜勤専従は、まさにこの「基礎日数が10日以下」に該当しやすい働き方です。備考欄は自由記入の欄であり、日数や賃金額のように自動で計算されるものではありません。離職証明書を作成する担当者が、この記載が必要な月かどうかを意識していなければ、空欄のまま提出されます。
どの月が被保険者期間とならないか?
実働15時間の夜勤で、月6回の契約を結んでいる場合を見ます。
| 月の状況 | 賃金支払基礎日数 | 時間数 | 算入 |
|---|---|---|---|
| 6回すべて勤務 | 12日 | 90時間 | される |
| 1回を年次有給休暇で休んだ | 12日 | — | される(日数で判定) |
| 1回を無給で欠勤した | 10日 | 75時間 | されない |
| 6回すべて勤務・1日カウントの施設 | 6日 | 90時間 | される(時間数で判定) |
| 1回欠勤・かつ1日カウントの施設 | 5日 | 75時間 | されない |
1回の欠勤で、その月は被保険者期間として算入されません。
週20時間の契約は、月にすると86時間40分です。80時間まで6時間40分、夜勤半回分の余裕しかありません。常勤職員が月160時間働いていれば、80時間を割るには半月休む必要がありますが、夜勤専従は1回で届かなくなります。回数が少ない働き方は、それだけ1回の重みが大きいということです。
また、上の表からわかるとおり、1日カウントの施設は日数の基準を使えないため、80時間の基準だけが頼りになります。そしてその基準は、備考欄への記載がなければ働きません。
防げる場面は2つある
この問題を防ぐ方法は、水増しではありません。実績を正確に記載することと、実績そのものを確保することの2つです。
一つは、離職証明書を作成する段階です。基礎日数が10日以下の月について、備考欄に労働時間数を必ず記載する。80時間以上ある月であれば、これで算入されます。
もう一つは、シフトを作る段階です。備考欄に書いても80時間に届かない月は救えません。月の夜勤回数が一定水準を下回らないよう管理しておくことが、唯一の予防になります。
シフトを作る段階でできること
前章までの内容を、施設の実務に落とします。夜勤専従パートを雇用するうえで整えておくことは、4つあります。
1. 雇用契約書に、週の所定労働時間を書く
判定の起点は、常に週の所定労働時間です。「月4回」「シフトによる」としか書かれていない契約書では、雇用保険の加入要否も、社会保険の適用拡大の判定もすることができません。
月単位で勤務回数を決めている場合は、第2章の計算式(月の所定労働時間×12÷52)で週に換算した時間を、契約書に併記しておくと確認が早くなります。契約書と実際の勤務が恒常的に食い違っている状態は、加入判定そのものを不安定にします。実態が契約から離れてきたら、契約を実態に合わせて更新してください。
2. 月の夜勤回数に、下限を決める
被保険者期間として算入されるのは、賃金支払基礎日数が11日以上、または賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上の月です。この水準を割る月を作らないことが、唯一の予防策になります。
実働15時間の夜勤なら、月6回で90時間。ここが下限の目安です。実働13時間なら月6回では78時間にとどまるため、月7回が下限になります。自施設の夜勤1回の実働時間で計算してください。
シフトを組む担当者と、労務を担当する事務職員が別であることは珍しくありません。「この職員は月◯回を下回らせない」という情報が、シフトを組む側に伝わっているかを確認しておく価値があります。
3. 休みが出たときの扱いを決めておく
賃金支払基礎日数には、年次有給休暇を取得した日が含まれます。無給の欠勤は含まれません。同じ「1回休んだ」でも、有給休暇として処理されていれば月は落ちず、欠勤として処理されると落ちることがあります。
夜勤専従のパート職員にも、所定労働日数に応じて年次有給休暇は付与されます。付与日数と残日数を把握しておき、本人が休みを申し出たときに年休を使える状態にしておくことが、結果として受給資格を守ることにつながります。
4. 離職証明書の作成手順に、確認項目を入れる
退職者が出たときの手順に、次の1行を加えてください。
賃金支払基礎日数が10日以下の月がある場合は、その月の労働時間数を13欄(備考欄)に記載する
この確認は、夜勤専従に限らず、出勤日数の少ないパート職員全般に必要です。離職証明書の作成が年に数回しかない施設ほど、前回の記憶が残っていません。手順書に書いておくことが、担当者が交代しても残る形になります。
小規模の施設なら、まずこの2つ
夜勤専従の職員が数名という規模であれば、管理の仕組みを作り込む必要はありません。次の2つだけ決めておけば足ります。
- 雇用契約書に、週の所定労働時間を数字で書く
- その職員の月の夜勤回数の下限を1つ決めて、シフト担当者と共有する
この2つがあれば、加入判定も、被保険者期間の確保も、同じ数字で管理できます。完璧なルールより、守れるルールの方が機能します。
よくある質問
訪問看護のオンコール当番は、週の所定労働時間に入りますか
一律には決まりません。待機時間が労働時間に当たるかどうかは、待機中にどの程度の行動の自由が制限されているか、呼び出しの頻度がどの程度かなどによって判断されます。労働時間に当たらない待機であれば、所定労働時間には算入されません。
訪問系の労働時間の考え方は、訪問介護・看護の移動時間・待機時間を整理した記事で扱っています。
労働基準監督署の宿直許可を受けている場合はどうなりますか
離職証明書の賃金支払基礎日数について、許可を受けた宿直勤務は、8時間を超える夜勤を2日と数える扱いから除かれます。労働局のリーフレットにも、宿直を除く旨が明記されています。
ただし、許可を受けているかどうかが前提になります。実態は宿直だが許可を受けていない、という状態であれば、通常の夜勤として扱われます。
月額8.8万円の判定に、夜勤手当は含まれますか
判定に使うのは所定内賃金です。日本年金機構は、最低賃金法で算入しないと定められている賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)は含まないとしています。時間外・休日・深夜の割増賃金も、同法で算入しないものとされています。
したがって、深夜労働に対する割増賃金の部分は判定に含まれません。ただし、割増分ではない定額の夜勤手当が基本給に準じる性質のものである場合は、扱いが分かれる可能性があります。
なお、この賃金要件は令和8年(2026年)10月に撤廃される予定です。撤廃後は、賃金額による判定そのものがなくなります。
本人が「社会保険に入りたくない」と言っています
本人の希望で加入・不加入を選ぶことはできません。要件を満たせば法律上加入することになります。扶養の範囲で働いてもらうのであれば、加入の可否を選ぶのではなく、所定労働時間そのものを要件未満に設定して契約する必要があります。
この点は、クリニックの社会保険加入判定を扱った記事でも整理しています。
月によって夜勤の回数が違う場合、どう判定しますか
加入の判定と、被保険者期間の算入とで、答えが違います。
加入の判定は契約上の所定労働時間で行うため、実際の回数が月ごとに前後しても、それだけで資格を失うことはありません。一方、被保険者期間として算入されるかどうかは、その月の実績(賃金支払基礎日数または時間数)で判定されます。同じ職員でも、算入される月と算入されない月が生じます。
契約の回数と実際の回数が恒常的に離れている場合は、契約を実態に合わせて見直してください。
まとめ
夜勤専従のパート職員を社会保険・雇用保険に加入させるかどうかは、月の夜勤回数を週の所定労働時間に換算して判定します。1か月の所定労働時間を12分の52で除する方法で、週20時間に相当するのは月86時間40分。実働15時間の夜勤なら、月6回がおおよその分かれ目になります。ただしこれは正職員の勤務条件と夜勤1回の実働時間によって動く数字なので、自施設の値で計算し直してください。
加入させたあとは、離職証明書の記載に注意しましょう。賃金支払基礎日数が10日以下の月については、労働時間数を備考欄に記載する必要があります。この記載がないと、80時間以上働いていた月も算入されません。
社会保険の適用範囲は、令和8年10月の賃金要件の撤廃、令和9年10月からの企業規模要件の段階的な引き下げと、これから適用拡大が続きます。雇用保険も、令和10年10月に加入の要件が週10時間以上に下がり、被保険者期間の算定基準も6日または40時間に緩和されます。加入の線は、今後さらに下がっていきます。
本記事の内容は2026年8月時点のものです。実際の判定にあたっては、日本年金機構や都道府県労働局・ハローワークの最新の情報をご確認ください。自施設の勤務形態にあてはめた判断に迷われたときは、管轄の年金事務所やハローワーク、顧問の社会保険労務士など専門家にご相談されることをおすすめします。



