常勤の社会保険加入、医療法の「常勤32時間」で判断してはいけない理由

クリニックで働くパートや非常勤スタッフを、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させるべきか。この判断で迷ったとき、「非常勤で契約しているから対象外」「医療法でいう常勤は週32時間だから、それ未満なら加入しなくてよい」と考えていないでしょうか。

結論から申し上げると、社会保険に加入させるかどうかは、契約上の「常勤・非常勤」という呼び方でも、医療法上の「常勤(週32時間)」でもなく、社会保険独自の基準で決まります。そして、その判定基準は本来2つ存在しますが、従業員50人以下の小規模クリニックでは、実質的に「4分の3基準」という1つの基準だけを見れば足ります(理由は本文で説明します)。この「医療法の常勤」と「社会保険の判定」を同じものとして扱う取り違えは、当事務所が医療機関の労務に関わるなかで、最も多く見かける誤解の一つです。そして判定を誤ると、後から最大2年さかのぼって加入手続きと保険料の納付を求められる、重い結果につながりかねません。

この記事では、小規模の医科・歯科クリニックで人を雇う側(院長・事務担当者)が、自院で加入の要否を判定できるように、順を追って整理します。

目次

クリニックの社会保険加入は、小規模なら「4分の3基準」で決まる

まず押さえるべき結論は、パート・非常勤スタッフが社会保険の加入対象(被保険者)になるかどうかは、小規模なクリニックであれば「4分の3基準」というものさしで判定できる、という点です。

判定基準は本来2つある

正確には、社会保険の加入判定の基準は2つあります。

  • 4分の3基準 — 所定労働時間・所定労働日数が、自院の正職員の4分の3以上かどうか
  • 短時間労働者の適用拡大の基準 — 週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月を超える使用見込み・学生でないこと、をすべて満たすかどうか

このうち2つ目(適用拡大の基準)が適用されるのは、厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上の事業所(特定適用事業所)か、労使の合意によって申し出をした事業所(任意特定適用事業所)に限られます。

裏を返すと、被保険者数が50人以下で、労使合意による申し出もしていない小規模クリニックでは、この2つ目のものさしは当面働きません。結果として、判定は1つ目の「4分の3基準」だけで行えばよいことになります。この記事は数人〜数十人規模のクリニックを前提としているため、以下では4分の3基準を中心に解説します(51人以上規模になった場合や、将来の制度改正については後の章で触れます)。

4分の3基準とは

4分の3基準とは、次の2つの要素を、自院の通常の労働者(正職員)と比べる基準です。

  • 1週間の所定労働時間が、正職員の4分の3以上であること
  • 1か月の所定労働日数が、正職員の4分の3以上であること

この両方を満たす場合に、そのスタッフは社会保険の加入対象になります。どちらか片方だけを満たしても加入対象にはなりません。たとえば労働時間は4分の3以上でも、出勤日数が4分の3に満たなければ、この基準では加入対象とならない、という判定になります。

もう一つ重要なのが、判定は「所定」で行うという点です。所定労働時間・所定労働日数とは、雇用契約書や就業規則であらかじめ定めた、通常勤務すべき時間・日数のことです。繁忙期にたまたま残業が増えた月の「実働」時間で、ただちに判定されるわけではありません(ただし、所定があいまいなまま実態が続くと別の問題が生じます。これは後の章で扱います)。

分母は「自院の正職員」──全国一律の時間ではない

ここが誤解の起きやすいところですが、4分の3基準に「週30時間以上なら加入」といった全国一律の絶対的な時間数はありません。あくまで自院の正職員の所定労働時間・所定労働日数を分母にした相対的な基準です。

つまり、正職員の働き方が何時間かによって、パートの加入ラインは変わります。

  • 正職員の所定が週40時間のクリニック → その4分の3は週30時間
  • 正職員の所定が週38時間のクリニック → その4分の3は週28.5時間
  • 所定労働日数も同様に、正職員が月22日勤務なら、その4分の3は月16.5日

自院の正職員が週何時間・月何日勤務なのかを確認し、その4分の3を計算する——これが判定の出発点になります。

なお、この4分の3基準は、平成28年(2016年)10月から社会保険の資格取得の基準として明確に位置づけられたものです。それ以前は「おおむね4分の3」を目安に、勤務実態を総合的に勘案して判断するという、やや幅のある運用でしたが、現在は所定労働時間と所定労働日数という客観的な数値で判定する仕組みになっています(2026年7月時点)。詳しくは、日本年金機構「適用事業所と被保険者」もあわせてご確認ください。

「医療法の常勤=週32時間」と社会保険の加入判定は別物

ここが、この記事で最もお伝えしたい論点です。医療機関の現場では「常勤とは週32時間」という言葉が広く知られています。そのため、「週32時間に満たない非常勤スタッフは、社会保険の加入対象ではない」と考えてしまうケースが少なくありません。しかし、この「週32時間」と社会保険の加入判定は、まったく別の制度の話です。

「週32時間」はどこから来た数字か

医療の世界で使われる「常勤(週32時間)」は、もともと医療法第25条に基づく立入検査要綱に由来します。これは、病院・診療所が必要な医師などの人員を配置しているかを確認するための基準で、非常勤者の勤務時間を合算して「常勤何人分か」を計算する「常勤換算」に使われます。この換算のとき、医師の通常の勤務時間が週32時間未満と定められている場合は、計算の分母を週32時間とする、という取り扱いが要綱で定められています(立入検査要綱は毎年度更新されます)。

つまり「週32時間」は、あくまで医療機関の人員配置が足りているかを計算するための”ものさしの分母”であって、そのスタッフを社会保険に入れるかどうかを決める数字ではありません。管轄する役所も目的も異なります。片方は医療提供体制を確認するための医療行政上の基準、もう片方は労働者の社会保障を確保するための社会保険制度の基準です。

社会保険には「32時間」という絶対値は存在しない

前の章で見たとおり、社会保険の4分の3基準は、自院の正職員の所定労働時間を分母にした相対的な基準でした。「週32時間」という固定の数字は、社会保険のどこにも出てきません。

この違いを、具体例で見てみます。正職員の所定労働時間が週40時間のクリニックを考えます。

  • 社会保険の加入ライン(4分の3)= 週40時間 × 3/4 = 週30時間
  • 医療法の「常勤」の目安 = 週32時間

この場合、週31時間勤務のパートスタッフは、医療法の感覚では「32時間未満だから非常勤」ですが、社会保険では「30時間(4分の3)以上だから加入対象」になります。「週32時間未満だから社会保険は関係ない」という思い込みが、そのまま加入漏れにつながる典型的なパターンです。

さらに注意したいのは、正職員の所定労働時間が短いクリニックほど、社会保険の加入ラインは32時間より下がるという点です。たとえば正職員が週36時間のクリニックなら、4分の3は週27時間。週28時間のパートは、医療法上は非常勤でも、社会保険では加入対象になります。正職員の働き方が短いほど、「32時間」と社会保険のラインのズレは大きくなり、気づかないうちに加入義務が生じている、という事態が起きやすくなります。

なぜこの取り違えが起きるのか

医療機関では、施設基準や人員配置を考えるうえで「常勤・非常勤」「常勤換算」という言葉を日常的に使います。この感覚がしみついているために、社会保険の加入を考えるときにも、つい同じ「常勤」の物差しを当てはめてしまう。これが取り違えの正体だと、当事務所では受け止めています。しかし、両者はそもそも別の制度であり、「医療機関の常勤」と「社会保険の被保険者」は連動しません。加入の要否を考えるときは、いったん医療法の「32時間」を頭から外し、自院の正職員の所定労働時間を分母にした4分の3で計算し直す——この切り替えが、正しい判定の第一歩になります。

「非常勤だから」「本人が希望しないから」は通用しない

社会保険の加入判定でもう一つ多いのが、契約の呼び方やスタッフ本人の意向で、加入の要否が変わると考えてしまうケースです。しかし、いずれも判定には影響しません。

「パート」「非常勤」という呼称は判定に関係しない

「このスタッフとはパートで契約しているから、社会保険は不要」——こうした理解は正確ではありません。社会保険の加入判定は、雇用契約上の呼び方(常勤・非常勤・パート・アルバイトなど)や職種によって決まるものではなく、あくまで所定労働時間・所定労働日数という客観的な労働条件で判断されます。

したがって、契約書に「非常勤」と書かれていても、実際の所定労働時間・日数が自院の正職員の4分の3以上であれば、そのスタッフは社会保険の加入対象です。呼称を「非常勤」にしておけば加入義務を免れられる、ということはありません。

本人が「加入したくない」と言っても、判定は変わらない

現場でよくあるのが、スタッフ本人からの「夫(配偶者)の扶養から外れたくないので、社会保険には入りたくない」という申し出です。気持ちは理解できますが、これも判定を左右しません。

社会保険の加入は、要件を満たせば法律上当然に生じるもので、事業主と本人の合意で加入・不加入を選べる性質のものではありません。本人が希望しないからといって加入させないでいると、後の調査で加入漏れを指摘され、さかのぼって加入手続きと保険料の納付を求められるリスクを、事業主が負うことになります。

扶養の範囲内で働きたいという希望があるのであれば、加入・不加入を選ぶのではなく、そもそもの所定労働時間・所定労働日数を4分の3未満に設定して働いてもらう、という労働条件そのものの調整で対応するのが筋道です。ここを混同すると、「本人が希望しないから」という理由で未加入のまま働かせ続けてしまい、加入漏れが蓄積していきます。

小規模クリニックほど、契約と実態の整理を

小規模なクリニックでは、雇用契約書の内容が実態と合っていなかったり、口頭の合意で運用していたりするケースも見られます。しかし、社会保険の判定は所定労働時間・所定労働日数が基礎になります。誰が加入対象なのかを正しく見極めるためにも、一人ひとりの契約上の所定を書面で明確にしておくことが、結果的に事業所を守ることにつながります(所定を定めずに運用した場合の問題は、次章で扱います)。

医師国保・歯科医師国保のクリニックはどうなるか

医師国保(医師国民健康保険組合)や歯科医師国保に加入しているクリニックでは、社会保険の考え方が少し複雑になります。「うちは医師国保だから、社会保険(協会けんぽ)は関係ない」という理解を見かけますが、これは正確ではありません。ここは医療機関特有の論点なので、丁寧に整理します。

「健康保険は国保のまま、厚生年金は加入」というハイブリッド

まず前提として、法人化したクリニックや、常時5人以上の従業員を使用する個人クリニック(法定業種の場合)は、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。本来であれば、協会けんぽの健康保険と厚生年金保険の両方に加入することになります。

ところが、医師国保・歯科医師国保に加入しているクリニックでは、所定の手続きを踏むことで、健康保険は医師国保(歯科医師国保)のまま継続し、厚生年金保険だけに加入する、という組み合わせが認められます。健康保険と厚生年金保険が別々の制度に分かれる、いわばハイブリッドな形です。

この扱いを受けるために必要なのが、「健康保険被保険者適用除外承認申請」という手続きです。年金事務所にこの申請をして承認を受けることで、協会けんぽの健康保険への加入を除外し、医師国保を続けられます。厚生年金保険については、この場合も加入が必要です(適用除外の対象は健康保険であって、厚生年金保険ではありません)。

なお、この適用除外の対象になるのは、開設者本人だけでなく、4分の3基準を満たして社会保険の加入対象になる従業員も含まれます。つまり、前章までで見た「加入対象かどうか」の判定は、医師国保のクリニックでもまず必要で、そのうえで健康保険の部分を国保にするかどうかを手続きする、という二段構えになります。

手続きには期限がある──14日以内

この適用除外承認申請には、実務上とくに注意すべき期限があります。申請は、事実が発生した日(新規採用日や法人設立日など)から14日以内に、管轄の年金事務所へ提出する必要があります。14日を過ぎると、遅れた理由を記載した理由書の添付が求められ、正当な理由が認められない場合には、遡及しての適用除外が承認されず、協会けんぽの健康保険に加入することになる可能性があります。この14日には土日祝も含まれる点にも注意が必要です。

手続きの順序に落とし穴がある

もう一つ、見落とされがちな実務上の注意点があります。厚生年金保険の資格取得手続きだけを先に済ませてしまうと、医師国保に加入できなくなる取り扱いをしている組合があります。健康保険の適用除外の手続きと、厚生年金保険の加入手続きは、切り離さず同時に進める必要があります。「とりあえず厚生年金だけ先に」と進めた結果、本来続けられたはずの医師国保に入れなくなる、という事態は避けたいところです。

加入できるかは、組合の規約次第

最後に重要な留保です。適用除外承認という仕組み自体は全国共通ですが、そもそも医師国保・歯科医師国保に加入できるかどうかの要件は、各都道府県の組合の規約によって異なります。たとえば「法人化後に新しく採用した従業員は加入を認めない」といった独自ルールを設けている組合もあります。自院が所属する組合の最新の規約を、事前に必ず確認してください。手続きの詳細は、日本年金機構「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」および、自院が加入する国保組合の公式案内もご確認ください。

判定を誤るとどうなるか──最大2年の遡及追徴

社会保険の加入判定を誤り、本来加入させるべきスタッフを未加入のままにしていた場合、後からどのような影響があるのか。ここを正しく知っておくことが、判定を丁寧に行う動機になります。

未加入が発覚するきっかけ

社会保険の加入漏れは、多くの場合、年金事務所による事業所調査(適用調査)で明らかになります。この調査は、加入手続きや届出が適正に行われているかを確認するために、日本年金機構が定期的または随時に実施しているもので、特別な事業所だけが対象になるわけではありません。毎年、全国で多数の事業所に対して行われています。

調査のきっかけは、無作為な抽出のほか、雇用保険の加入情報との突き合わせで未加入者がいると見込まれる場合や、退職したスタッフなどからの通報が端緒になる場合もあります。小規模なクリニックだから調査の対象にならない、とは言い切れません。

遡及は最大2年、しかも一括で

調査で加入漏れが指摘されると、加入要件を満たしていた時点にさかのぼって、資格取得の手続きと保険料の納付を求められます。この遡及の期間は、最大で2年です(保険料を徴収する権利の時効が2年であることによります)。

問題は、この保険料の負担の仕方です。社会保険料は本来、事業主と本人が折半して負担します。しかし、遡及して納付する場合、年金事務所からの納付告知は事業主に対して行われるため、事業主がまず全額を一括で立て替えて納めることになります。そのうえで、本人負担分を後からスタッフに請求する形になりますが、ここに実務上の難しさがあります。

本人負担分を回収できないリスク

すでに退職したスタッフの場合、連絡がつかず、本人負担分を回収できないことがあります。在籍中のスタッフであっても、過去2年分の保険料をまとめて請求すれば、月々の給与から少しずつ天引きされるはずだった金額が一度に本人に及ぶため、労使間のトラブルに発展しかねません。結果として、本来は折半だったはずの保険料を、クリニックが実質的に肩代わりする形になることも珍しくありません。

数名のパートの加入漏れでも、遡及分の保険料は決して小さな額にはなりません。「非常勤だから」「32時間未満だから」という思い込みで判定を続けた結果が、こうした隠れた負担として一度に表面化する——これが、判定を軽視できない理由です。日々の判定を正しく行うことが、最も確実な備えになります。

これからのクリニックが備えること──2027年からの適用拡大

ここまでは「今」の判定の話でした。最後に、これから数年で状況が変わる点をお伝えします。小規模クリニックであっても、社会保険の適用対象は今後段階的に広がっていく見込みだからです。

企業規模要件が段階的に撤廃される

2025年(令和7年)6月、年金制度の改正法が成立しました。この改正には、短時間労働者の社会保険の適用を広げる内容が含まれています。

前の章までで、短時間労働者の適用拡大の基準(週20時間以上など)は「51人以上の事業所」に限られる、と説明しました。この「51人以上」という企業規模要件が、2027年(令和9年)10月から2035年(令和17年)10月にかけて、段階的に引き下げられ、最終的に撤廃される方向です。あわせて、賃金要件(月額8.8万円以上)も、法律の公布から一定期間内に撤廃されることになっています。

これが意味するのは、これまで「50人以下だから4分の3基準だけを見ればよかった」小規模クリニックも、いずれは週20時間以上のパートスタッフの社会保険加入を検討しなければならなくなる、ということです。段階的な措置なので、いつ自院が対象になるかは今後の政令などで具体化されていきますが、大きな方向性として「小規模も対象に近づいていく」ことは、今の時点で見えています。

今からできる備え──所定労働時間を書面で整える

では、今のうちに何をしておくべきか。答えはシンプルで、一人ひとりのスタッフの所定労働時間・所定労働日数を、雇用契約書で明確にしておくことです。

これまで見てきたとおり、4分の3基準も、これからの適用拡大の週20時間基準も、判定の出発点は「所定労働時間・所定労働日数」です。ここが契約書で定まっておらず、実態任せの運用になっていると、現在の判定を誤るだけでなく、今後の制度変更にも対応しづらくなります。逆に、所定が書面で整理されていれば、基準が変わっても「誰が対象になるか」をすぐに確認できます。

制度が広がる前の今こそ、雇用契約書と就業規則を見直し、所定労働時間の記載を整えておく好機です。就業規則の整備そのものについては、「クリニックに就業規則は必要か?10人未満でも整備すべき理由」でも解説していますので、あわせて参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

クリニックのパートは、週何時間から社会保険に入れないといけませんか?

まず前提として、これは従業員(厚生年金の被保険者数)50人以下で、任意特定適用事業所の申し出をしていない小規模クリニックの場合の説明です(51人以上などの場合は後述の注記をご覧ください)。

その小規模クリニックでは、全国一律の「週◯時間」という決まった数字はありません。判定は、自院の正職員の所定労働時間の4分の3が基準になります。たとえば正職員が週40時間なら週30時間、週38時間なら週28.5時間がラインです。あわせて、1か月の所定労働日数も正職員の4分の3以上であることが必要で、この両方を満たすと加入対象になります。

※従業員51人以上の特定適用事業所(または労使合意で申し出た任意特定適用事業所)の場合は、これに加えて「週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月を超える使用見込み・学生でない」をすべて満たす短時間労働者も加入対象になります。この「週20時間」は正職員の労働時間に関係のない、全国一律の基準です。

正職員の所定労働時間が週38時間の場合、パートの加入ラインは何時間ですか?

週38時間の4分の3なので、週28.5時間が労働時間のラインです。これに加えて、所定労働日数も正職員の4分の3以上である必要があります。時間と日数の両方を満たしたときに加入対象になります。

「非常勤」で契約していれば、社会保険に加入させなくてよいですか?

契約上の呼び方(非常勤・パートなど)は判定に関係しません。呼称が非常勤でも、実際の所定労働時間・所定労働日数が正職員の4分の3以上であれば、加入対象になります。

本人が「扶養から外れたくない」と希望しています。加入させなくてよいですか?

本人の希望で加入・不加入を選ぶことはできません。要件を満たせば法律上加入となります。扶養の範囲内で働いてもらうには、加入の可否を選ぶのではなく、所定労働時間・所定労働日数そのものを4分の3未満に設定して契約する必要があります。

医療法でいう「常勤=週32時間」を基準に判断してはいけないのですか?

「週32時間」は医療法の立入検査要綱で人員配置を計算するための目安(常勤換算の分母)であり、社会保険の加入判定とは別の制度です。社会保険は自院の正職員の4分の3で判定するため、「32時間未満だから加入不要」という判断は誤りになりかねません。

医師国保に加入しているクリニックが法人化した場合、スタッフの厚生年金はどうなりますか?

法人化すると厚生年金保険は強制加入になります。健康保険については、適用除外承認の手続きをすれば医師国保を続けられるため、「健康保険は医師国保のまま、厚生年金は加入」という形になります。適用除外の申請は事実発生から14日以内が原則で、加入できる要件は組合の規約によって異なるため、自院の組合に事前確認が必要です。

パートの社会保険の未加入が見つかると、何年分さかのぼりますか?

最大2年です。年金事務所の調査で加入漏れが指摘されると、要件を満たしていた時点にさかのぼって(最大2年)、加入手続きと保険料の納付を求められます。保険料は本来労使折半ですが、遡及分は事業主がまず一括で立て替えることになります。

まとめ

クリニックのパート・非常勤スタッフを社会保険に加入させるべきかは、契約上の「非常勤」という呼び方でも、医療法上の「常勤(週32時間)」でもなく、社会保険独自の基準で判定します。従業員50人以下の小規模クリニックであれば、自院の正職員の所定労働時間・所定労働日数の4分の3以上かどうか(4分の3基準)を見れば足ります。医療法の「常勤」の感覚をそのまま当てはめると、加入漏れにつながりかねません。医師国保のクリニックでは、健康保険と厚生年金の扱いが分かれる点にも注意が必要です。

社会保険や適用拡大の制度は、今後も改正が続きます。本記事の内容は2026年7月時点のものであり、実際の判定にあたっては、日本年金機構などの公式情報で最新の内容を確認してください。自院の状況にあてはめた具体的な判断に迷われたときは、管轄の年金事務所や、顧問の社会保険労務士など専門家にご相談されることをおすすめします。

参考(出典)

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この記事を書いた人

兵庫県川西市の川西隆之社労士事務所
クラウドツールを活用した労務のデジタル化を得意としています

税理士事務所勤務平成22年3月~平成31年1月
社労士業補助平成22年3月~平成28年8月
社労士登録平成28年9月~
1984年3月9日生まれ。
兵庫(但馬)産まれ兵庫(但馬)育ち。川西市在住。
一人の妻と3人の子どもたち。

2005年社労士試験合格
2016年開業登録(岐阜県)
→2020年より兵庫県川西市にて開業

以下の事項に力を入れています。
・クラウド勤怠管理・給与計算を利用した勤怠管理・給与計算の効率化
→給与計算に必要な時間の圧倒的な削減

・クラウド労務管理を導入することで、法定帳簿の管理・社会保険手続きの効率化
→代行することなく自社での管理・申請が容易に可能

・適切な労務管理を行うことによる、労使トラブルの防止
→疑問点があれば、その都度の相談可能

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