「職員がインフルエンザにかかりました。これは労災になるのでしょうか。休ませる間の給料はどうすれば……」
インフルエンザや新型コロナの流行期になると、医療機関や介護施設の経営者・労務担当者から、この種のご相談が集中します。尋ねられることは、ほぼ決まっています。労災申請できるのか。休ませた場合の給料はどうなるのか。労災の給付が出ない最初の3日間は誰が払うのか。そして、どのような手続きが必要なのか。
本記事では、医業・社会福祉に特化した社会保険労務士が、職員が感染症(新型コロナ・インフルエンザ・ノロウイルス・疥癬・結核・針刺し事故など)にかかったときの、施設側の判断と手続きを順に解説します。
結論を先に言えば、医療・介護の現場は、感染症の労災について一般企業とは前提が大きく異なります。「うちの業界でも、感染症は労災にならないだろう」という思い込みが、いちばんの落とし穴です。
※本記事の内容は2026年7月時点の制度に基づいています。
医療・介護の職員の感染症は「労災になり得る」——法令に明記されている
結論から述べます。医療機関や介護施設の職員が業務を通じて感染症にかかった場合、それは労災(業務上の疾病)になり得ます。「なり得る」どころか、医療・介護の仕事は、感染症が職業病として法令に明文で書き込まれている数少ない業種です。
根拠は、労災補償の対象となる病気の範囲を定めた「職業病リスト(労働基準法施行規則別表第1の2)」です。このリストの第6号に「細菌、ウイルス等の病原体による疾病」という区分があり、その最初に挙げられているのが次の文言です。
患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
「診療・看護の業務」「介護の業務」と、名指しに近い形で書かれています。つまり法令は、医療・介護の現場で働くこと自体に感染のリスクが内在していることを、最初から想定しているのです。なお、「介護の業務」はもともとこの条文にはなく、平成22年(2010年)の改正で正式に追加されました。介護現場の感染リスクが、医療と並ぶものとして制度上も位置づけられてきた経緯です。
一般企業と何が違うのか
もちろん、一般企業の従業員でも、業務が原因の感染であれば労災の対象にはなります。ただ実務では、「どこで感染したのか」を特定できないことが大きな壁になります。通勤電車か、家庭か、職場か。切り分けられなければ、業務起因性(業務が原因であること)は認められにくいのが実情です。
医療・介護の現場では、この構造が逆転します。感染源になり得る患者・利用者が業務の中にいて、「いつ、誰のケアをしたか」が記録に残ります。発熱した患者を診察していた、担当フロアの利用者に陽性者が出ていた——こうした事実を示せれば、業務との結びつきを説明しやすいのです。職業病リストの明文規定と、この立証のしやすさが重なって、医療・介護における感染症の労災は、世間で思われているよりずっと現実的な制度です。
ただし、誤解のないように付け加えると、「医療・介護なら自動的に労災になる」わけではありません。家庭内で家族から感染したことが明らかな場合など、業務外の感染は対象になりませんし、最終的に労災に当たるかどうかを判断するのは労働基準監督署です。施設側にできるのは、正しい知識を持ち、判断材料になる記録を残し、職員の申請を妨げないことです。こうした「職員を守る体制づくり」は、患者ハラスメントへの対応など、施設が負う安全配慮義務の全般に共通する考え方でもあります。次章から、疾患ごとの認定の考え方と、施設が実際に行う対応を順に見ていきます。
疾患別に見る労災認定——コロナ・インフルエンザ・ノロ・疥癬・結核・針刺し
前章のとおり、医療・介護の職員の感染症は労災になり得ます。ただし、疾患によって認定のされ方には濃淡があります。ここでは現場で問題になりやすい感染症を、施設側が押さえておくべきポイントに絞って整理します。
新型コロナウイルス——医療・介護は「原則対象」
コロナには、他の感染症にはない強い特則があります。厚生労働省は、患者の診療・看護や介護の業務に従事する医師・看護師・介護従事者等がコロナに感染した場合、業務外での感染が明らかな場合を除き、原則として労災の対象とする、という取扱いを示しています(厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」)。感染経路を一つひとつ立証しなくても、医療・介護の従事者であること自体が業務起因性を推定させる、という考え方です。
重要なのは、この取扱いが5類移行後の現在も生きている点です。同じQ&Aで、厚生労働省は5類感染症に変更された後もこの取扱いに変更はないと明記しています。「コロナはもう普通の病気だから労災にならない」という理解は誤りです。
インフルエンザ——医療・介護では認定されにくくない
インフルエンザについては、「感染経路が特定できないから労災は難しい」という解説が世間には多く見られます。しかしそれは一般企業の話です。医療・介護の現場では事情が異なります。この点は本記事の要となるため、次章で詳しく扱います。ここでは、インフルエンザも前章の職業病リスト第6号1「病原体を取り扱う業務による伝染性疾患」の枠組みで判断される、という点だけ押さえてください。
ノロウイルス・疥癬——排泄物処理や身体介護に感染源がある
ノロウイルスや疥癬(かいせん)も、介護現場では労災になり得る感染症です。嘔吐物や排泄物の処理、入浴・移乗などの身体介護には、感染源との濃厚な接触が伴います。施設内で利用者に発生し、その対応にあたった職員が感染した、という時系列が示せれば、業務との結びつきを説明しやすくなります。実際、こうした感染で複数の職員が労災として処理された例も報告されています。
結核——発症前の「予防」段階でも対象になり得る
結核には、特徴的な取扱いがあります。医療従事者等が業務で結核菌に感染し、「潜在性結核感染症」(まだ発症していないが感染はしている状態)と診断され、医師が治療(予防的な服薬など)を必要と判断した場合、症状が出ていなくても労災の対象になり得るとされています(潜在性結核感染症の取扱いについて(平成24年基労補発0202第1号))。「発症してはじめて労災」という一般的な感覚とは異なる点です。
針刺し事故——感染確定前の予防投薬も療養の範囲
医療現場に特有なのが、針刺し・切創による血液媒介感染(B型・C型肝炎、HIVなど)です。実務で見落とされやすいのが、HIVの予防内服(曝露後予防、PEP)の扱いです。針刺し後、感染したかどうかが確定する前に行う予防的な抗HIV薬の投与について、厚生労働省は、感染の危険に対し有効と認められる場合には労災保険の療養の範囲として取り扱う、としています(労災保険におけるHIV感染症の取扱いについて(厚生労働省の通達))。結果的に感染していなかったとしても、予防投薬にかかった費用が労災でカバーされ得るということです。高額になりがちな費用だけに、施設として知っておく価値があります。
このように、感染症は「労災になるか・ならないか」の二択ではなく、疾患ごとに認定の考え方が異なります。共通するのは、業務との結びつきを示す記録が判断を左右するという点です。
「インフルエンザは労災にならない」——その常識は、医療・介護には当てはまらない
ここまで読んで、意外に思われた方もいるかもしれません。「インフルエンザやノロが労災になるなんて聞いたことがない」と。その感覚は、決して間違いではありません。ただし、それは一般企業の話です。
通説はどこから来ているか
人事労務の解説記事の多くは、「インフルエンザは通勤電車や家庭でも感染しうるため感染経路を特定できず、労災認定はほぼ不可能」と説明します。オフィスワークが中心の一般企業では、これは正しい。どこで感染したか分からない以上、業務が原因だと示せないからです。
問題は、この「一般企業の常識」が、医療・介護の経営者や労務担当者にもそのまま浸透していることです。その結果、「うちで職員がインフルにかかっても、どうせ私病(業務外の病気)扱いだろう」と考え、健康保険で処理したり、欠勤・有給で片づけたりする施設が少なくありません。
医療・介護では前提が違う
しかし第1章で見たとおり、医療・介護の仕事は職業病リストに名指しで書かれた「病原体を取り扱う業務」です。そして第2章で見たとおり、感染源となる患者・利用者が業務の中にいて、接触の記録が残ります。一般企業では壁になる「感染経路の特定」が、医療・介護では相対的に示しやすい。この一点が、認定のされやすさを大きく分けます。
このことは統計にも表れています。厚生労働省の「業務上疾病発生状況等調査」を見ると、コロナ流行前であっても、病原体による疾病の労災は毎年一定数(数百件規模)発生し続けてきました。そしてその大半は、医療保健業と社会福祉施設に集中しています。平時から、「感染症の労災」という制度は、実質的に医療・介護のために機能してきたと言ってよいものです。コロナ禍で申請が急増した際も、医療・介護従事者を中心に、認定件数に対する認定率は9割を大きく超える水準で推移しました。
当事務所の実感
当事務所がこれまでサポートしてきた範囲でも、クリニックや介護現場でのインフルエンザの労災申請が、業務外と判断されて却下された例は、今のところありません。もちろん、これは「必ず認定される」という保証ではありません。個々の判断は感染状況や記録次第であり、最終的に決めるのは労働基準監督署です。それでも、「インフルエンザだから労災にならない」と施設側が最初から決めつけてしまうのは、実態に照らして正確ではない、というのが現場感覚です。
大切なのは、施設側が「感染症は私病」という思い込みを手放し、職員が正当な補償を受けられる可能性を閉ざさないことです。そのうえで次に問題になるのが、「では、休ませる間の給料はどうするのか」という、もう一つの誤解の多い論点です。
休ませた場合の給料——最初の3日間は施設が払う
「労災になるのは分かった。では、休んでいる間の給料はどうなるのか」。相談の実態としては、むしろこちらが本題です。ここには施設側が誤解しやすい落とし穴があります。結論から言えば、業務上の感染で休ませる最初の3日間は、施設が自ら給料に相当する補償を払わなければなりません。
労災の休業補償は「4日目」から
労災保険から休業に対する給付(休業補償給付)が出るのは、休業4日目からです。最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、労災保険からは支給されません(労働者災害補償保険法第14条)。
4日目以降は、労災保険から給付基礎日額(おおむね直前3か月の平均賃金)の60%が休業補償給付として支給され、これに社会復帰促進等事業からの休業特別支給金20%が上乗せされます。合わせて、実質的に平均賃金の約80%が非課税で職員に支払われる仕組みです。
問題は、給付が出ない最初の3日間です。
待期3日間は「無給」にできない
ここが最大の誤解ポイントです。「労災保険からお金が出ないなら、その3日間は無給で仕方ない」——そう考える施設は少なくありません。しかし、これは誤りです。
業務上の負傷・疾病で休業した場合、労災保険の給付が始まる前の待期期間について、使用者は労働基準法に基づき、平均賃金の60%の休業補償を行わなければならないと定められています(労働基準法第76条)。これは事業主が直接負うべき義務です。労災保険から給付が出る4日目以降は使用者の補償義務が免除されますが(同法第84条)、給付の出ない待期3日間についてはこの免除が働かず、施設側の補償責任がそのまま残ります。
したがって、施設内で感染して休んだ職員に対し、最初の3日間を無給で処理することは、労働基準法違反(賃金の未払い)にあたり得ます。「恩情のつもりで有給休暇を使わせてあげた」というのも、実は問題です。年次有給休暇を充てるかどうかは職員本人が決めることであり、施設側が待期期間の補償義務を免れる目的で有休の消化を強制することはできません。
健康保険の傷病手当金は使えない
もう一つの誤解が、「健康保険の傷病手当金でまかなえばよいのでは」という発想です。これも使えません。健康保険は業務外の病気・けが(私傷病)を対象とする制度であり、業務が原因の傷病は労災保険の領域です。両者は二者択一で選べるものではなく、業務起因性があれば労災が優先します。
そのため、「手続きが面倒だから」「保険料への影響を避けたいから」といった理由で、業務上の感染をあえて健康保険で処理することはできません。仮に健康保険証で受診してしまった場合、後から労災への切り替えが必要になり、いったん医療費を全額自己負担して返還する、といった煩雑な手続きが職員に発生します。この切り替えの実務は後半のQ&Aでも触れます。
整理すると
給料まわりを時系列で整理すると、次のようになります。休業1〜3日目(待期期間)は、施設が労働基準法に基づき平均賃金の60%を補償する。休業4日目以降は、労災保険から実質80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が職員に支給され、施設の補償義務は免除される。健康保険の傷病手当金は、業務上の傷病では使えない。
この3点を押さえておけば、「休ませた間の給料」をめぐる相談のほとんどには筋の通った対応ができます。次章では、実際にこれらの給付を受けるための手続きの流れを見ていきます。
手続きの流れ——様式・事業主証明・死傷病報告
ここまでで「労災になる」「給料は施設も関わる」と分かったところで、最後に実際の手続きを整理します。施設側が押さえるべきは、大きく3つ。労災保険の請求様式、事業主証明の位置づけ、そして労災保険とは別に必要になる労働者死傷病報告です。
労災保険の請求様式
労災の請求は、労働者本人が労働基準監督署に対して行うのが原則です。施設は、その請求に協力する立場になります。使う様式は、目的によって分かれます。
治療費については、受診先が労災指定医療機関であれば「様式第5号」を窓口に提出することで、自己負担なく治療を受けられます。労災指定でない医療機関にかかった場合は、いったん医療費を立て替えたうえで「様式第7号」に領収書を添えて請求し、後日払い戻しを受けます。そして、休業4日目以降の休業補償給付を請求するのが「様式第8号」です。感染症の場合、これらに加えて感染の経緯を説明する書類の提出を求められることもあります。
事業主証明——「押さない」で止められると思うのは誤解
各請求様式には「事業主証明欄」があります。ここで施設が証明するのは、あくまで「その労働者が在籍し、いつからいつまで休んだ」といった事実関係であって、施設が「これは労災だ」と法的な判断を下すものではありません。業務起因性を最終的に判断するのは労働基準監督署です。
実務で問題になるのが、施設側が証明の押印を渋るケースです。「うちで感染した証拠はない」「後述する保険料への影響が心配だ」といった理由で証明を拒む、という相談は実際にあります。しかし、ここは正確に理解しておく必要があります。事業主が証明を拒否しても、労働者はその旨を記載して労働基準監督署に直接請求でき、監督署は請求を受理して調査を進めます。つまり、施設が押印を拒んでも労災申請を止めることはできません。
むしろ、証明を渋る対応は、監督署から事情を問われる火種になり、職員との信頼関係も損ないます。事業主には、労働者が手続きを行えるよう助力する義務も定められています(厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」)。渋るより、事実関係を正確に証明して協力する方が、施設にとっても安全な対応です。
労働者死傷病報告——労災を使わなくても提出義務がある
見落とされやすいのが、労災保険の請求とは別物の「労働者死傷病報告」です。これは、職員が業務上の負傷・疾病で死亡または休業した場合に、事業者が労働基準監督署へ提出する義務がある報告です(労働安全衛生規則第97条)。労災保険を使うかどうかとは関係なく、業務上の感染で職員が休業すれば、提出しなければなりません。
重要なのは、この報告を怠ったり虚偽の内容を提出したりすると、「労災かくし」として労働安全衛生法違反に問われ、50万円以下の罰金の対象になり得るという点です。「労災にすると保険料が上がるから、報告もしないでおこう」という判断は、罰則を伴う重大なリスクを抱えることになります。
なお、この労働者死傷病報告は、2025年1月から原則として電子申請で行うことが義務化されました。従来の紙の様式(様式第23号・第24号)は使えなくなり、e-Govや厚生労働省の入力支援サービスを通じて提出します(労働者死傷病報告の報告事項の改正・電子申請義務化(厚生労働省))。ただし、パソコン環境がないなど電子申請が難しい場合は、当分の間、書面での報告も認められています。過去の解説記事にある「窓口で紙をもらって提出する」という手順は、現在では原則あてはまらない点に注意してください。
よくある質問
Q1. 保育所や障害者施設の職員も、同じように労災の対象になりますか?
はい、基本的な考え方は同じです。本記事では医療・介護を中心に説明してきましたが、職業病リスト第6号1の「介護の業務」には、社会福祉施設での介護的な業務も含まれます。保育所、障害者支援施設、放課後等デイサービスなどでも、利用者(園児・利用者)を感染源とする業務上の感染であれば、労災の対象になり得ます。感染源との接触が業務の中にあり、記録で示せるという構造は、これらの施設でも共通します。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。
Q2. うちの施設に感染した患者や利用者がいなかった場合は、労災にならないのですか?
一概にそうとは言えません。労災の対象外となるのは、家庭内で家族から感染したなど「業務外での感染が明らかな場合」です。施設内で感染源となる患者・利用者が確認されていれば業務起因性を示しやすいのは確かですが、逆に「施設内に感染源がいなかったから、直ちに私病(業務外)になる」というわけでもありません。
医療・介護の現場は、不特定多数の患者・利用者や、その家族・関係者と日常的に接する仕事です。施設内で特定の感染源を指させなくても、業務の性質上ほかに感染の機会が考えにくいといった事情があれば、業務上と判断される余地は残ります。逆に、職員本人に明らかな私生活上の感染機会があったような場合は、業務外と判断されることもあります。
いずれにせよ、最終的に業務上か業務外かを判断するのは労働基準監督署です。施設側が自己判断で「感染源がいなかったから労災ではない」と決めつけて申請に協力しないのは、避けるべき対応です。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。
Q3. 職員がうっかり健康保険証で受診してしまいました。どうなりますか?
業務上の傷病に健康保険は使えないため、労災へ切り替える手続きが必要です。まず受診した医療機関に労災である旨を伝え、切り替えに応じてもらえる場合はその案内に従います。応じてもらえない場合は、いったん医療機関に医療費の全額(健康保険が負担した分を含む)を支払い、改めて労災保険に請求する、あるいは加入している健康保険の保険者に連絡して精算する、といった対応になります。手間はかかりますが、切り替えは可能です。早めに気づくほど手続きは簡単になります。
Q4. 労災にすると、保険料(メリット制)が上がって損ではないですか?
労災の利用が労災保険率に影響する「メリット制」という仕組みはあります。ただし、これは一定規模以上の事業場に適用されるもので、小規模なクリニックや事業所には適用されないことも多くあります。仮に適用される場合でも、前章で述べたとおり、労災を隠して死傷病報告を怠れば「労災かくし」として罰則の対象になり得ます。保険料への影響を避けるために労災を隠すことは、はるかに大きなリスクを招きます。適用の有無や影響の程度は、労働局や顧問社労士に確認することをおすすめします。
まとめ——「感染症は私病」という思い込みを手放す
医療機関や介護施設で職員が感染症にかかったとき、施設側が押さえるべき要点を振り返ります。
医療・介護の仕事は、職業病リストに「病原体を取り扱う業務」として明記されており、業務上の感染は労災の対象になり得ます。一般企業で語られる「インフルエンザは労災にならない」という常識は、感染源が業務に内在し記録も残る医療・介護には、そのままは当てはまりません。休ませる場合、給付の出ない最初の3日間(待期期間)は施設が平均賃金の60%を補償する義務があり、4日目以降は労災保険から実質80%が支給されます。健康保険の傷病手当金は使えません。手続きでは、事業主証明を渋っても申請は止められず、労災保険とは別に労働者死傷病報告の提出義務(怠れば労災かくし)がある点に注意が必要です。
職員が感染症にかかったときの対応は、日頃から就業規則や社内ルールを整えておくことで、迷いなく進められます。感染時の休業の扱いを社内でどう定めておくかは、クリニックの就業規則整備とあわせて考えておきたいテーマです。
最後に、これらの制度は改定されることがあります。特に労災保険の運用や様式、電子申請の取扱いは変わり得るため、実際に手続きを行う際は、厚生労働省や労働局の最新情報で確認してください。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や顧問社会保険労務士など、専門家に相談することをおすすめします。
本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。制度の最新の内容は公式情報でご確認ください。
