介護事業所が外国人職員の受け入れを決めると、多くの施設はまず在留資格の手続きに目を向けます。どの制度で受け入れるか、試験はどうなっているか、どの監理団体や登録支援機関に依頼をするか。
しかし、施設が最初に手をつけるべきなのは、そこではありません。
外国人職員を受け入れると、これまで誰も見に来なかった自社の就業規則、36協定、労使協定が、外部の目にさらされます。監理団体、登録支援機関、出入国在留管理庁、そして労働基準監督署。そこで問題になるのは、外国人固有のルール違反ではありません。日本人職員に対しても、もともと整備できていなかった部分です。
このことは、厚生労働省の統計にはっきり表れています。
本記事では、医業・社会福祉に特化した社会保険労務士(外国人技能実習生管理団体のサポート経験もあり)が、介護事業所が外国人職員を受け入れる前に点検しておくべき労務の整備を整理します。在留資格の申請手続きや試験の内容は扱いません。それらは行政書士や登録支援機関の領域であり、本記事が扱うのは労働法の側です。
なお、賃金からの控除と社会保険の詳細は、それぞれ別の記事で扱います。
※本記事の内容は2026年9月時点の法令・統計に基づいています。
7割が法令違反 —— 監督指導の統計が示していること
まず、事実から入ります。
厚生労働省は令和7年9月26日、労働基準監督署などが令和6年に、技能実習生または特定技能外国人を使用する事業場に対して行った監督指導と送検の状況を公表しました。
数字はこうなっています
技能実習生を使用する事業場では、監督指導を実施した11,355事業場のうち、8,310事業場(73.2%)で労働基準関係法令違反が認められました。重大・悪質な違反による送検は16件です。
特定技能外国人を使用する事業場では、5,750事業場のうち4,395事業場(76.4%)で違反。送検は7件です。
この特定技能の数値は、令和6年分が初めての公表です。これまで特定技能の受け入れ施設は、監督指導の統計として可視化されていませんでした。可視化された結果、違反率は技能実習を上回っていました。
注目すべきは、違反の中身です
主な違反事項は次のとおりです。
| 順位 | 技能実習生関係 | 特定技能外国人関係 |
|---|---|---|
| 1位 | 使用する機械等の安全基準(25.0%) | 使用する機械等の安全基準(24.0%) |
| 2位 | 割増賃金の支払(15.6%) | 割増賃金の支払(17.2%) |
ここを読み違えないでいただきたいのですが、これらは外国人固有の違反ではありません。
安全基準も、割増賃金の支払いも、日本人だけを雇っている事業場にまったく同じように適用される規定です。外国人を受け入れたから新しい違反が生まれたのではなく、もともとあった未整備が、監督の対象になって表に出た。統計が示しているのは、そういう構図です。
「外部の目が入る」ということ
外国人職員を受け入れるまで、多くの中小の介護事業所では、就業規則や労使協定を外部の第三者が確認する機会がほとんどありません。労働基準監督署の臨検も、申告や労災を契機としない限り、頻繁にあるものではありません。
受け入れを決めた瞬間に、これが変わります。監理団体は定期的に監査に来ます。登録支援機関は定期面談を行い、出入国在留管理庁に報告します。入管は報告徴収や立入検査の権限を持ちます。そして労働基準監督署が、統計に表れているとおり監督指導を行います。
実務でも、36協定の時間外労働の上限を把握できていなかった、必要な労使協定が締結されていなかったという理由で、監理団体から指導を受ける受け入れ施設が見られます。本来、労働関係法令の遵守は施設自身の責任であり、監理団体が指導する立場に回らざるを得ない状態は、その時点で整備が追いついていないことを意味します。
つまり、外国人職員の受け入れ準備とは、外国人のための特別な労務管理を新しく始めることではありません。日本人職員に対して当然にやっておくべきだった整備を、期限が切られた状態で済ませることです。
この視点で読み進めていただくと、次章以降の内容が、すべて「外国人固有の話ではない」ことに気づいていただけるはずです。
在留資格が何であれ、労働法の適用は変わらない
前章の統計を、制度の側から説明します。
労働関係法令は、国籍でも在留資格でも区別しない
日本国内で雇用される限り、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法は、外国人労働者にも適用されます。国籍による例外はなく、在留資格の種類による例外もありません。
労働基準法第3条は、次のように定めています。
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
「賃金、労働時間その他の労働条件」とあるとおり、この条文が及ぶ範囲は賃金額だけではありません。労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、安全衛生、災害補償まで、労働条件の全体に及びます。
出身国の賃金水準が日本より低いことを理由に、日本人より低い条件を設定することは認められません。ここは行政も明確に示しているところです。
特定技能でも、技能実習でも、育成就労でも同じ
現場でよく聞かれるのが、「特定技能と技能実習で、労務管理は何が違うのか」という問いです。
労働関係法令の適用に関して言えば、違いはありません。
在留資格の側には確かに違いがあります。従事できる業務の範囲、在留期間、転職の可否、必要な試験、受け入れ機関に課される支援義務。これらは制度ごとに異なります。
しかし、雇用契約を結んで働かせる以上、労働基準法上の義務は同一です。36協定なしに時間外労働をさせれば違反ですし、割増賃金を払わなければ違反です。年次有給休暇も、日本人と同じ基準で発生します。
2027年4月に制度が変わっても、この章の内容は変わりません
技能実習制度は、2027年4月1日に廃止され、育成就労制度に移行します。施行日は2025年9月26日の閣議決定と、同年12月1日の政令公布で確定しました。施行日時点で在留している技能実習生には経過措置が設けられ、認定された計画に基づいて実習を継続できます。
制度の枠組みは大きく変わります。転籍の要件、日本語能力の要件、監理団体から監理支援機関への移行。ただし、受け入れ施設が負う労働関係法令上の義務は変わりません。
これは実務上、重要な意味を持ちます。在留資格の側の情報は、2027年4月を境に大半が書き換わります。一方で、就業規則、36協定、労使協定、労働条件の明示といった労務の整備は、いま整えたものがそのまま使えます。
どちらから手をつけるべきかは、この点からも明らかです。制度改正で無駄になる作業ではなく、制度が変わっても残る土台を先に固めるほうが、投じた時間は回収できます。
事業主に求められる配慮は、別に定められている
労働関係法令の適用が同じであることと、外国人労働者への配慮が不要であることは別です。
労働施策総合推進法に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年厚生労働省告示第276号)が定められています。ここでは、労働条件の明示にあたって本人が理解できるようにすること、安全衛生教育を理解できる方法で行うこと、労働・社会保険の内容を雇入れ時に説明することなどが、事業主の講ずべき措置として示されています。
この指針は繰り返し改正されており、直近では令和8年5月29日に改正告示が出されています。受け入れを検討している施設は、最新版を厚生労働省のサイトで確認してください。
つまり、法令の適用は日本人と同じ。そのうえで、理解できる形で伝えるという配慮が別に求められる。この二段構えが、外国人雇用の労務管理の基本構造です。
誰が何を見に来るのか —— 外部機関の権限と、施設に残る責任
外国人職員を受け入れると、複数の外部機関が関与します。それぞれ根拠となる法律が違い、見る対象も権限も異なります。まず、この地図を持っておくことが必要です。
5つの機関が、それぞれ別の権限で関わる
監理団体(2027年4月以降は監理支援機関)
技能実習法に基づき、実習実施者に対する定期的な監査と訪問指導を行います。育成就労制度への移行後も、監理支援機関として同様の役割を担います。団体監理型で受け入れる場合の、最も身近な関与者です。
登録支援機関
特定技能制度において、受け入れ機関から支援計画の実施を委託されます。特定技能外国人との定期面談を行い、支援の実施状況を出入国在留管理庁に報告します。
外国人技能実習機構
技能実習法に基づき、実習実施者や監理団体に対する実地検査、報告徴収を行い、改善勧告・改善命令を出す権限を持ちます。
出入国在留管理庁
入管法に基づき、特定技能の受け入れ機関に対する報告徴収や立入検査、業務改善命令を行う権限を持ちます。受け入れ機関には、労務に関わる事項を含む定期的な届出義務も課されています。
労働基準監督署
労働基準法・労働安全衛生法に基づき、事業場への臨検、帳簿書類の確認、是正勧告、送検を行います。前章で見た統計は、この監督指導の結果です。
「監理団体が見てくれるから大丈夫」の、どこが誤りか
ここが本章の核心です。
監理団体や登録支援機関は、受け入れ施設が労働関係法令を守っているかを確認し、指導する立場にあります。ですから実際に、36協定が出ていない、必要な労使協定がない、といった指摘を受けることがあります。
しかし、確認する立場と、責任を負う立場は別です。
労働基準法上の義務を負うのは、雇用契約の当事者である受け入れ施設です。監理団体が見落としても、施設の違反が消えるわけではありません。是正勧告を受けるのも、送検されるのも、施設です。
そして実務上、より重要なのは監査という仕組みの設計です。
技能実習の定期監査で行うことは法令で定められており、実習の実施状況の実地確認、技能実習責任者と技能実習指導員からの報告の聴取、技能実習生の4分の1以上との面談、事業所の設備と帳簿書類等の閲覧、宿泊施設等の生活環境の確認の5つです。
帳簿書類等の「閲覧」は含まれますが、賃金計算の検算ではありません。割増賃金の単価に算入すべき手当が漏れていないか、変形労働時間制の総枠を超えていないかを確かめる作業は、監査の方法として想定されていません。
これは監理団体の問題ではなく、制度がそう設計されているということです。監理団体に求められているのは技能実習の適正な実施と技能実習生の保護であって、受け入れ施設の労務監査ではありません。
したがって、指摘されなかったことは、適法であることを意味しません。これは、外部の関与を受けている施設ほど陥りやすい誤解です。
「指導を受けてから直す」と、コストが跳ね上がる
外部から指摘を受けて是正する場合、次の3つが同時に起きます。
第一に、期限が切られます。監査や監督指導での指摘には、是正の期限が伴います。就業規則の変更には本来、職員への説明と意見聴取の手続きが必要ですが、期限に追われると、この過程を丁寧に踏めなくなります。
第二に、遡及の問題が出ます。36協定なしに時間外労働をさせていた、割増賃金の計算が誤っていた。こうした指摘は、将来に向けた是正だけでは済まないことがあります。
第三に、在留資格の側に影響します。労働関係法令の違反は、受け入れ機関としての適格性に関わります。次の受け入れや在留期間の更新に響けば、確保したはずの人材計画が崩れます。
受け入れが決まった時点で自主的に整備しておけば、この3つはいずれも回避できます。期限は自分で決められますし、遡及が必要な箇所も自分のペースで処理できます。
社労士と行政書士の役割は、法律上分かれています
外部に委託する場合の線引きにも触れておきます。
在留資格認定証明書の交付申請や在留期間の更新許可申請といった入管への手続きは、届出をした行政書士や弁護士が業として取次ぎを行える領域です。
一方、就業規則や36協定をはじめとする労使協定の作成、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行、法定帳簿の調製は、社会保険労務士法に基づく社会保険労務士の業務です。
どちらか一方に全部を頼むことはできません。外国人材の受け入れでは、入管の手続きと労務の整備が同時に走ります。誰がどこを担当するのかを最初に決めておかないと、「相手がやっていると思っていた」という空白が生まれます。前章までに見た未整備の多くは、この空白で起きています。
受け入れ前に棚卸しする4点
ここからは実際の作業です。外国人職員の受け入れが決まったら、次の4点を順に確認してください。いずれも外国人固有の手続きではなく、日本人職員に対してもともと必要だったものです。

1. 36協定 —— 締結の有無ではなく、中身を見る
時間外労働や休日労働をさせるには、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。これは国籍を問いません。
ここで確認するのは、協定があるかどうかだけではありません。中身が実態に合っているかです。
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があって特別条項を結んだ場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内、単月100時間未満という上限を超えることはできません。介護事業所に適用除外や猶予はありません。
確認すべきは次の点です。
- 協定の有効期間が切れていないか(有効期間は1年とするよう労働基準監督署から指導されるのが通例で、実務上は毎年締結・届出を行います)
- 協定した時間数を、実際の残業が超えていないか
- 過半数代表者の選出手続きが適正に行われたか
3点目は見落とされやすいところです。過半数代表者の選出では、事業場のすべての労働者が母集団になります。労働基準法上の労働者であれば、国籍も雇用形態も問いません。外国人職員も、選出の手続きに含める必要があります。
受け入れ後に協定を結び直す際、外国人職員を母集団から外していると、協定そのものの有効性が問われます。
2. 労働条件の明示 —— 理解できる方法で行う
労働契約を結ぶときは、労働基準法第15条と施行規則第5条に基づき、労働条件を明示しなければなりません。2024年4月から明示事項が追加されている点に注意してください。
追加されたのは、すべての労働者について就業場所と従事すべき業務の変更の範囲、有期契約の労働者について更新上限の有無と内容、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件です。外国人職員は有期契約であることが多く、後者が直接効いてきます。労働条件通知書をいつ出し直すかについては、労働条件通知書は変更のたびに必要かで整理しています。
そのうえで、外国人職員には理解できる方法で伝えることが求められます。外国人雇用管理指針では、主要な労働条件について、本人が理解できるよう内容を明らかにした書面を交付することとされています。
厚生労働省は、外国人労働者向けのモデル労働条件通知書を公開しています。英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、インドネシア語、ベトナム語など、複数の言語に対応しています。自前で翻訳を用意する前に、こちらを確認してください。
なお、明示を怠った場合は労働基準法第120条により30万円以下の罰金の対象になります。
3. 就業規則 —— 作ってあるか、ではなく、届けて周知しているか
常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。
問題になりやすいのは、届出と周知です。
就業規則は、作成・変更したら届け出なければなりません。数年前に届け出たきり、その後の改定を届け出ていないケースがあります。
そして周知です。労働基準法第106条と施行規則第52条の2により、見やすい場所への掲示・備え付け、書面の交付、または社内のネットワーク等で常時閲覧できる状態に置く、いずれかの方法で全労働者に周知しなければなりません。金庫や施設長の机の中にある就業規則は、周知されていません。
外国人職員について、よく聞かれる点を2つ整理します。
母国語への翻訳は、法的な義務ではありません。ただし、指針では平易な日本語を用いるなど、本人が理解できるようにする配慮が求められています。服務規律や懲戒の規定は、理解されていなければ実際に適用する場面で機能しません。主要部分だけでも訳しておく価値はあります。
外国人用の就業規則を別に作る義務もありません。むしろ、国籍だけを理由に異なる労働条件を適用すれば労働基準法第3条に触れます。母国への長期帰省に関する特別休暇のように、合理的な理由のある特則を設ける場合は、共通の就業規則の中に定めるか、別規程として適法に届け出ます。
4. 労使協定の棚卸し —— 何を結んでいるかを一覧にする
最後が、実務で最初に詰まる論点です。自社が今どの労使協定を締結しているのかを、一覧で把握してください。
介護事業所で必要になり得る主な協定は次のとおりです。
| 協定 | 根拠条文 | 届出 |
|---|---|---|
| 時間外・休日労働(36協定) | 労働基準法第36条 | 要 |
| 1か月単位の変形労働時間制 | 労働基準法第32条の2 | 就業規則に定めがない場合は要 |
| 賃金控除 | 労働基準法第24条第1項ただし書 | 不要 |
| 年次有給休暇の計画的付与 | 労働基準法第39条第6項 | 不要 |
| 年次有給休暇の時間単位付与 | 労働基準法第39条第4項 | 不要 |
| 育児・介護休業の対象除外 | 育児・介護休業法 | 不要 |
1か月単位の変形労働時間制については、導入の要否と必須要件で整理しています。
このうち、外国人の受け入れで新たに必要になる可能性が高いのが、賃金控除協定です。
寮や社宅を用意して家賃を給与から差し引く場合、この協定がなければ控除できません。日本人職員に社宅を提供していない事業所では、そもそもこの協定が存在しないのが通常です。外国人職員の受け入れで住居を用意することになって初めて、ゼロから締結することになります。
ただし、協定を結べば何でも差し引けるわけではありません。控除できる金額にも、名目にも制限があります。ここは論点が多いため、シリーズ第2部(賃金と控除) で改めて扱います。受け入れ前の段階では、「住居を用意するなら賃金控除協定が必要になる」ということを、予定に組み込んでおいてください。
小規模の事業所ならこう始める
4点すべてを同時に進めるのは負担が大きいはずです。優先順位をつけるなら、次の順になります。
- 36協定(届出が必要で、期限があり、違反が最も直接的)
- 就業規則の届出と周知(作成済みなら、届出と周知の確認だけで済む)
- 賃金控除協定(住居を用意する場合。受け入れ日までに必要)
- 労働条件通知書の様式(モデル様式を使えば短期間で整う)
1と2は、外国人の受け入れとは関係なく、今日から必要なものです。受け入れを、整備のきっかけとして使ってください。
よくある質問
Q1. 外国人職員を夜勤に入れてよいですか。
労働関係法令の側に、外国籍であることを理由に夜勤を制限する規定はありません。深夜業の割増賃金、健康診断、労働時間の上限といったルールは、日本人職員とまったく同じように適用されます。
ただし、在留資格の側には制度ごとの要件があります。技能実習では、認定された技能実習計画に沿って実習を行う制度の性質上、夜勤に関して安全確保の措置が求められるなど、労働法とは別の制約が働きます。この点は制度と年次によって運用が異なり、公開されている解説でも見解が分かれています。
したがって、答えは2段階になります。
- 労働法の側: 制限はありません。日本人と同じ扱いです
- 在留資格の側: 制度ごとの要件があります。監理団体、登録支援機関、または所轄の窓口に確認してください
ここは施設が最も混同しやすい箇所です。「夜勤に入れられるか」という問いには、労働法の答えと在留資格の答えの両方が必要で、片方だけを見て判断すると事故になります。
なお、介護保険法上の人員配置基準に算入できるかどうかは、また別の問題です。これも混ざりやすいので、分けて確認してください。本記事では扱いません。
Q2. 就業規則を母国語に翻訳する義務はありますか。
法的な義務はありません。
ただし、外国人雇用管理指針では、労働条件や服務規律を本人が理解できるようにする配慮が事業主に求められています。平易な日本語を用いる、主要部分の翻訳を備え付けるといった対応です。
実務的にも、理解されていない規定は、いざというときに機能しません。服務規律や懲戒の規定を根拠に何らかの対応をしようとしたとき、「読んでいない、意味が分からなかった」と言われる状況は避けたいところです。全文の翻訳が難しくても、服務規律・懲戒・退職の各章だけでも訳しておく価値はあります。
Q3. 外国人職員用の就業規則を、別に作るべきですか。
別に作る義務はありません。原則は、日本人職員と共通の就業規則を適用します。
むしろ注意すべきは逆方向です。国籍だけを理由に異なる労働条件を適用すると、労働基準法第3条に触れます。「外国人職員は賞与の対象外」「昇給の対象外」といった定め方は、合理的な理由を説明できない限り認められません。
一方で、合理的な理由のある特則を設けることは可能です。母国への長期帰省を想定した特別休暇などがこれにあたります。その場合は、共通の就業規則の中に定めるか、別規程として作成し、いずれも適法に届け出ます。
Q4. 監理団体や登録支援機関が見てくれるのに、なぜ自社で整備が必要なのですか。
確認する立場と、責任を負う立場が別だからです。
監理団体や登録支援機関は、受け入れ施設の法令遵守を確認し、指導する立場にあります。実際、36協定が出ていない、労使協定がないといった指摘を受けることがあります。
しかし、労働基準法上の義務を負うのは、雇用契約の当事者である施設です。是正勧告を受けるのも、送検されるのも施設です。監理団体が見落としたことで、施設の違反が消えるわけではありません。
そして、より重要な点があります。監理団体の監査は、労務の適法性を保証する仕組みではありません。法令で定められた監査の方法に帳簿書類等の閲覧は含まれますが、賃金計算の検算は想定されていません。
指摘されなかったことは、適法であることを意味しません。外部の関与を受けている施設ほど、この誤解に陥りやすいというのが実感です。
まとめ —— 受け入れの準備は、自社の労務の棚卸しから始まる
介護事業所が外国人職員を受け入れる前に確認すべき点を振り返ります。
厚生労働省の統計では、技能実習生を使用する事業場の73.2%、特定技能外国人を使用する事業場の76.4%で、労働基準関係法令違反が認められています。そして違反の上位は、安全基準と割増賃金の支払いという、国籍を問わず適用される項目です。
在留資格が何であれ、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労災保険法の適用は変わりません。2027年4月に育成就労制度が施行されても、受け入れ施設が負う労働関係法令上の義務は変わりません。在留資格の情報は書き換わりますが、労務の整備はそのまま残ります。
受け入れが決まったら、36協定の中身、労働条件の明示、就業規則の届出と周知、労使協定の棚卸しの4点を確認してください。住居を用意するなら、賃金控除協定が新たに必要になります。
外国人職員の受け入れは、新しい労務管理を始めることではありません。これまで外部の目が入らなかった部分に、期限つきで点検が入るということです。指摘を受けてから直すと、期限も遡及の範囲も自分では決められなくなります。
最後に、制度や行政の運用は改定されます。実際の対応にあたっては、厚生労働省・都道府県労働局・出入国在留管理庁の最新情報でご確認ください。在留資格に関する手続きは行政書士や弁護士の業務範囲であり、労務の整備とは担当が分かれます。どちらを誰が担当するのかを、受け入れ前に決めておいてください。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や顧問社会保険労務士など、専門家に相談することをおすすめします。
本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。


