クラウド勤怠管理で介護の複数施設は何が変わるか?労働時間・給与計算・有給管理と、導入時の初期設定

複数の施設を運営していて、給与計算は本部でまとめて行っている。ただし勤怠の記録は各施設で紙のタイムカードを使っていて、毎月の締め日を過ぎると集計作業に追われる。この状態を変えたくてクラウドの勤怠管理システムを調べている、という方に向けた記事です。

この記事では、製品の比較は扱いません。どの製品を選んでも決めることになる中身、つまり導入によって何がどう変わり、初期設定で何を決めることになるのかを扱います。労働時間の把握、給与計算との連携、年次有給休暇の管理という3つの業務を軸に、導入前に見えておいた方がよいことを整理します。

目次

複数施設の勤怠集計が本部で回らなくなるとき

本部に届くのは、すでに集計された結果

紙のタイムカードで運用している事業所では、締め日を過ぎると各施設が自施設分を集計し、その結果を本部へ送ります。集計表を印刷して郵送する施設もあれば、Excelに入力して送る施設もあり、法人内で形式が完全に揃っていないことも珍しくありません。本部はそれを受け取って給与計算に取りかかります。

ここで重要なのは、本部の手元にあるのが集計済みの結果であって、打刻そのものではないという点です。数字の根拠は各施設に残ったままになっています。

確認は、本部と施設の間で往復する

給与計算を進めていると、必ず確認が必要な箇所が出てきます。退勤の打刻が抜けている、出勤の記録と勤務表が合わない、休憩時間の扱いが施設によって違う。こうした箇所は、本部だけでは判断できません。

このとき、確認は次のように動きます。

本部が施設に問い合わせる。施設は手元のタイムカードを見るが、なぜ打刻が抜けているのかは本人に聞かないと分からない。施設から本人に確認する。本人の回答が施設に戻り、施設が本部に回答する。

1件の確認で、少なくとも4回のやり取りが発生します。しかも本部から見えるのは、最初に問い合わせた時点と、回答が返ってきた時点だけです。その間に何が起きているか、いつ返ってくるかは分かりません。職員が休みに入っていれば数日空きますし、施設の担当者が現場に出ていれば、そもそも問い合わせに気づくのが翌日になります。

集計作業そのものにかかる時間は、慣れれば読めるようになります。読めないのは、この確認の往復です。締め日から給与支給日までの日数は決まっているため、この往復が長引くほど、本部の作業は後半に圧縮されていきます。

紙のタイムカードによる集計と確認の流れ。各施設が集計した結果が本部に届き、確認は本部から施設、施設から職員本人へと往復する|キャプション:紙の運用では、1件の確認が本部・施設・本人の間を往復する

この作業ができる人が限られている

もうひとつ、複数施設で共通して起きることがあります。

施設ごとに手当の内容や勤務の組み方が違い、集計表の形式も揃っていない。そのため、届いた数字をどう読み、どこを疑うべきかの判断が、経験の蓄積に依存します。「この施設のこの欄はいつもこう書かれてくる」「この時期はこの数字が動く」といった了解が、担当者の中に溜まっていきます。

結果として、この作業は誰にでも代われるものではなくなります。本部の人員が限られている事業所ほど、この傾向は強くなります。

集計が終わった時点で、データの価値が無くなっている

ここまでは作業量の話ですが、紙の運用にはもうひとつ、性質の違う制約があります。

本部が全施設分の労働時間を把握できるのは、各施設からの集計が出そろった後です。つまり、対象の月がすべて終わってからになります。ある職員の残業時間が想定より積み上がっていたことに気づくのは、その残業がすでに発生し終わった後ということです。

労働時間の管理には、月が終わってからでは対応できない種類のものがあります。次の章では、そこを見ていきます。

集計に追われているのは、集計している本人

現場の時間外は、構造的に発生しにくい

介護施設では、現場職員の時間外労働はそれほど大きくなりません。シフトによって必要な人員が時間帯ごとに配置されているため、誰かが所定時間を超えて働き続ける形にはなりにくいからです。申し送りや記録の作成で多少延びることはあっても、月45時間に届くような水準にはなかなかなりません。

だからこそ、本部で全職員の時間外労働を毎月点検する運用にはなりません。ほとんどの職員がほとんどの月でゼロに近い数字を確認するために、全施設分を見直す時間を取る事業所はまずないはずです。

時期を決めて発生する時間外がある

一方で、時間外労働が特定の時期に集中する層があります。本部の事務部門です。

給与計算の締め日から支給日までの数日と、月末の経理処理。この2つの山が毎月来ます。しかも本部の人員が限られている事業所では、この2つを同じ担当者が兼ねていることが少なくありません。前の章で見た確認の往復が長引けば、給与計算側の山はさらに後ろへずれ込みます。

管理的な立場の職員にも、同様に時期を決めて業務が集中することがあります。ただし本記事では、本部の事務部門に絞って見ていきます。

自分の勤怠を、自分で集計している

ここに、他の職員とは違う事情があります。

現場職員の勤怠は、施設が集計し、本部が確認します。少なくとも記録した本人以外の目が一度は入ります。ところが本部スタッフの勤怠は、その本部スタッフ自身が集計しています。自分の記録を自分で集計し、自分で締める。この工程には、他人の目が入る場面がありません。

加えて、本部の事務作業は記録に残りにくい性質があります。現場職員であれば、勤務時間が事前に決まっているため、シフト表と実際の記録を突き合わせれば違いが見えます。事務作業は所定の終業時刻を過ぎてもそのまま続くだけなので、意識して記録しなければ、何も残りません。紙のタイムカードであれば、押さずに帰ることもできます。

その結果、本部スタッフの時間外労働は、月全体で均せば大きな数字に見えません。締め日前後と月末に集中していても、月の合計としては繁忙期の一時的なものとして処理されます。

割増賃金が発生しなくても、把握の義務は残る

労働時間の上限は、次のように定められています。

区分上限
原則月45時間・年360時間
特別条項を締結した場合年720時間以内。単月100時間未満、複数月平均80時間以内(いずれも休日労働を含む)。月45時間を超えられるのは年6回まで

(2026年8月時点。労働基準法36条)特別条項を用いるには、あらかじめその内容を定めた協定を締結しておく必要があります。協定の締結や届出の手続きについては、事業所を増やしたときに必要になる労務手続きで整理しています。

本部スタッフが管理監督者に当たる場合、時間外労働に対する割増賃金は発生しません。ただし、それとは別に、労働時間の状況を把握する義務があります。労働安全衛生法66条の8の3により、2019年4月1日から、管理監督者を含むすべての労働者について、使用者は労働時間の状況を把握しなければならないとされています。長時間労働者に対する医師の面接指導を確実に行うための規定です。

つまり、割増賃金の対象かどうかと、記録を残すかどうかは別の話です。割増賃金が発生しない層ほど記録が残りにくいという点は、意識しておいた方がよい部分だと思います。

クラウド勤怠で最初に変わるのは、本部自身の記録

クラウドの勤怠管理システムを導入すると、打刻は自動的に記録として残ります。所定時間を超えて作業を続けた分も、本人が意識して申告しなくても記録に反映されます。上限に近づいた職員がいれば、通知が出る設定にすることもできます。

この機能は、残業が多い職場のためのものだと受け取られがちです。しかし実際には、発生頻度が低い事象ほど、人が探すのは難しい。年に数回しか起きないことを見つけるために毎月全員分を点検するのは現実的ではなく、そこは仕組みに任せた方が確実です。

そして導入後、最初に自分の労働時間を客観的な記録として見ることになるのは、システムを導入した本部の担当者自身である場合が多いはずです。

導入の山場は、最初の登録にある

「つなげば動く」ものではない

クラウドの勤怠管理システムは、給与計算システムと連携できることを特徴として挙げているものがほとんどです。実際、連携そのものは可能です。ただし、連携すれば自動的に給与計算まで進むわけではありません。

打刻の記録から給与計算に渡せる数字を作るには、自社の勤怠のルールをシステムに登録しておく必要があります。この登録作業が、導入における最大の作業になります。

紙のタイムカードには、初期設定がない

紙のタイムカードには、始めるための準備がほとんどありません。カードを用意して、時計を置けば、その日から打刻できます。集計は毎月手作業になりますが、運用を始める時点で決めておくべきことは多くありません。

クラウドの勤怠管理システムはこの逆です。運用を始める前に、勤怠に関わるルールを一通り登録し終えておく必要があります。登録が済んでいない状態では、打刻はできても正しい集計になりません。

つまり、手間の総量が増えるというより、手間の発生する時点が違うということです。紙は毎月少しずつ払い続け、クラウドは最初にまとめて払います。「クラウド勤怠は手間がかかる」という受け止め方は、この最初の山だけを見た評価だと言えます。

何を登録することになるか

登録する項目は、おおむね次のようなものです。

区分決めること
期間締め日、支給日
労働時間雇用区分ごとの所定労働時間、休憩の扱い
勤務パターン施設ごとの日勤・夜勤・早番・遅番などの区分と時間帯
手当手当ごとの支給要件と金額(施設ごとに異なる場合はそれぞれ)
賃金計算割増賃金の算定基礎に含める手当と含めない手当
運用ルール打刻漏れや修正の申請と、誰が承認するか
休暇年次有給休暇の付与基準日

項目の数そのものは、それほど多くありません。負担が大きくなるのは、このうちのいくつかが施設ごとに異なるからです。

複数施設を運営している事業所では、手当の支給要件や金額が施設によって違うことが珍しくありません。開設した時期が違えば当時の相場が違いますし、法人の統合を経ていれば、統合前の制度がそのまま残っていることもあります。日々の給与計算では、施設ごとの数字を当てはめて処理すればよいため、この違いが問題になる場面はほとんどありません。

ところがシステムに登録する段階では、全施設分をそれぞれ設定していくことになります。手当の種類が5つあって施設が4つあれば、確認して登録する組み合わせはその掛け算になります。ここが、導入作業の量を決める部分です。

金額ではなく、条件を組み立てる手当がある

登録の中でも、特に時間がかかるものがあります。支給の可否が勤務実績によって決まる手当です。

たとえば皆勤手当は、金額を登録するだけでは終わりません。何をもって皆勤とするかを、システムが判定できる形にする必要があります。欠勤があれば不支給とするのは分かりますが、有給休暇を取得した日はどう扱うのか。遅刻や早退は何回までなら支給するのか。こうした条件を一つずつ整理し、条件式として組み立てていくことになります。

夜勤手当も同様に、支給の判定に時間帯が関わります。何時から何時までの勤務を対象とするか、日をまたぐ勤務をどう数えるかによって、設定の仕方が変わります。

複数のクラウド勤怠と給与計算システムで連携設定を行った経験から言えば、導入作業の中で最も時間を要するのは、こうした条件付きの手当の設定です。金額を入力するだけの項目は、数が多くても作業としては進みます。判断が必要になるのは、条件を持つ手当の方です。

この山は、最初の一度だけ

もっとも、この作業が毎年発生するわけではありません。

一度登録が済めば、以降に必要になるのは差分の更新だけです。施設を新しく開設したとき、手当の内容を見直したとき、法改正に対応するとき。そうした場面で追加の作業は発生しますが、最初の全件登録ほどの規模にはなりません。

導入の判断をするときは、この点を織り込んでおくと見通しが立てやすくなります。初期の作業量だけを見て重いと判断すると、その後に続く期間の軽さが評価に入らないためです。効果が出るのは導入した時点ではなく、登録を終えた後の運用に入ってからになります。

全部を最初に揃える必要はない

もっとも、登録をすべて終えてから運用を始めなければならないわけではありません。段階を分ける入れ方があります。

まず、打刻の部分だけを先に稼働させます。誰がいつ出勤し、いつ退勤したかを記録する機能です。ここは登録する項目が少なく、比較的短い期間で動かせます。この段階で、紙のタイムカードは廃止できます。各施設に紙が置かれ、それを集めて本部に送るという流れが、まず一つなくなります。

そのうえで、年次有給休暇の管理、休日やシフトの区分、手当の支給要件といった設定を進めます。これらは自社の就業規則や賃金規程に沿って決めていく部分で、時間がかかるのはこちらです。

注意が必要なのは、この設定と給与計算システムとの連携は、同時に進める必要があるという点です。設定が済んでいない状態で連携すると、システムから出てくる計算結果が自社の実際の賃金計算と合いません。合わない数字を確認する作業が発生し、かえって手間が増えます。

分けられるのは「打刻」と「計算」の間であって、「設定」と「連携」の間ではない、と考えると整理しやすいと思います。打刻を先に動かして紙をなくし、設定と連携はセットで後から進める。この順序であれば、導入の負担を一度に受け止めずに済みます。

年次有給休暇管理簿を、別に作らなくてよくなる

有給休暇の管理は、勤怠とは別の場所にある

紙のタイムカードで運用している事業所では、年次有給休暇の管理は勤怠とは別に行われていることがほとんどです。Excelの一覧表や、施設ごとの台帳。取得の記録はタイムカードにも残りますが、残日数や取得日数の管理は別の帳票で行い、両者を突き合わせる形になります。Excelで労務の情報を管理すること自体に伴う注意点は、勤怠・マイナンバー・給与計算をExcelで扱う場合のリスクで扱っています。

この二重管理は、クラウドの勤怠管理システムに移行すると解消できる部分です。ただし、自動的にそうなるわけではありません。

管理簿が求めているのは3つの項目

年次有給休暇管理簿は、法令上の作成義務がある書類です。労働基準法施行規則24条の7により、労働者ごとに次の3つを明らかにした書類を作成することとされています。

  • 時季 — 取得した日
  • 日数 — 取得した日数
  • 基準日 — 有給休暇を取得する権利が生じた日

保存期間は、条文上は有給休暇を与えた期間中と、その期間の満了後5年間です。ただし労働基準法143条の経過措置により、当分の間は3年間とされています(2026年8月時点)。厚生労働省の資料も3年間で案内していますが、この経過措置がいつまで続くかは示されていないため、5年分を保存できる状態にしておく方が安全です。

様式の指定はありません。この3項目が労働者ごとに明らかになっていれば、形式は問われません。労働者名簿や賃金台帳と兼ねて管理することも認められています(同規則55条の2)。

システムの出力が、そのまま管理簿になる条件

多くのクラウド勤怠管理システムは、有給休暇の取得状況を一覧で出力できます。この出力が上の3項目を満たしていれば、管理簿を別に作る作業はなくなります。

確認しておく点は2つです。ひとつは、出力に基準日が含まれているかどうか。取得日と日数は残日数の管理に必要なので大抵含まれていますが、基準日は表示されない設定になっていることがあります。もうひとつは、その出力を保存できる形で残せるかどうかです。画面で見られるだけでは、保存義務を果たす形になりません。

導入前のデモや無料期間があれば、この2点は実際に出力して確かめておくと、後の手戻りが減ります。

期中に進捗が見えるようになる

管理簿の作成が自動化されること以上に、実務で効いてくるのは別の点です。

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者については、付与日から1年以内に5日を取得させることが使用者の義務とされています(労働基準法39条7項)。パートタイムで働く職員も、勤務日数に応じた比例付与で10日以上になれば対象です。

問題は、この5日が足りているかどうかを、期限が来る前に把握できるかです。Excelで管理している場合、集計するのは年度末や、誰かが気づいたときになります。付与日が職員ごとに違えば、期限も職員ごとに違います。介護事業所は中途採用が多く、基準日は入社日に応じてばらばらになりがちです。基準日を統一する運用もありますが、統一には条件があり、どの事業所でも採れるわけではありません。

システム上で管理されていれば、誰があと何日必要で、期限がいつなのかを、期の途中で確認できます。残り2か月で3日足りない職員がいると分かれば、シフトを組む段階で対応できます。年度末に判明した場合と比べて、打てる手の幅が違います。

時間単位で取得する制度を導入している場合も同様です。労使協定によって年5日を上限に時間単位の取得が可能ですが、時間単位の取得を日数に換算して管理する作業は、手作業では手間がかかります。

導入した後に残る仕事

打刻がデータになっただけではもったいない

クラウドの勤怠管理システムを導入した事業所の相談を受けていると、導入したものの、打刻の記録以上には使われていない状態を見かけることがあります。

打刻はシステムで行い、集計も自動で出る。ただしその後の使い方は、紙のときと変わっていません。月末に集計結果を出力し、それを見て給与計算に進む。紙のタイムカードがデータに置き換わっただけで、月末にならないと状況が分からない点は同じままです。

導入の作業を終えた時点で一区切りついた感覚になるのは自然ですが、システムに集まっているデータは、集計結果を出す以外にも使えます。しかも、その多くは追加の費用をかけずにできます。

今あるデータでできること

これまでの章で見た内容は、そのまま日常の運用に落とせます。

ひとつは、労働時間の上限に近づいている職員がいないかを、月の途中で確認することです。多くのシステムには通知の設定がありますが、初期状態では有効になっていないことがあります。設定を確認し、誰に通知が届くようにするかを決めておけば、月末を待たずに把握できます。

もうひとつは、年次有給休暇の取得状況です。期限までに5日に届かない職員がいないかを、期の途中で確認しておく。シフトを組む段階で分かっていれば、対応の幅が違ってきます。

三つめは、施設ごとの比較です。同じ法人の中でも、時間外労働の発生の仕方は施設によって違います。特定の施設に偏っていないか、特定の時期に集中していないか。これは紙の運用では見えなかった情報です。集計結果は施設ごとに別々に届いていたため、並べて比べる形になっていなかったからです。

いずれも、新しく何かを買う必要はありません。すでに集まっているデータを、月末以外にも見るという運用の変更です。

数字の根拠が、担当者の外にも残る

もうひとつ、導入によって変わることがあります。

紙の運用では、本部に届くのは各施設が集計した結果でした。数字の根拠は施設に残ったままで、疑問が出れば施設に問い合わせるしかない。そして届いた数字をどう読むかは、経験の蓄積に依存していました。

システムに移すと、打刻そのものが本部から見える状態になります。集計結果だけでなく、その元になった記録が同じ場所にある。特定の担当者を経由しなくても、状況を確認できる形に変わります。

これは業務の引き継ぎのしやすさにも関わりますが、それ以上に、日常の確認の速さに効きます。数字の根拠を確認するための問い合わせは不要になります。打刻漏れの理由を本人に確認する必要は残りますが、本部が施設を経由せずに状況を把握できる分だけ、確認は短くなります。

次の段階は、給与計算との連携

ここまでが、勤怠管理システムの中で完結する話です。

その先の段階として、給与計算システムとの連携があります。前に見たとおり、連携には初期設定の作業が必要ですが、一度設定が済めば、勤怠の集計結果を手作業で給与計算システムに入力する工程がなくなります。締め日以降の作業の中で、転記と検算に使っていた時間が減ります。

すでに給与計算システムを使っている場合は、勤怠側との連携に対応しているかを確認するところから始まります。対応していない場合や、連携できる項目が限られている場合もあるため、ここは導入前に確かめておく方が確実です。

順序としては、まず勤怠管理システムを運用に乗せ、日常の確認が回るようになってから連携に進む形が現実的だと思います。両方を同時に立ち上げると、初期設定の作業が一度に来ます。

よくある質問

紙のタイムカードは、導入後に処分してよいですか

過去の分は保存が必要です。

出勤簿は労働基準法109条の対象となる書類で、保存期間は条文上5年、同法143条の経過措置により当分の間は3年とされています(2026年8月時点)。システムに移行したからといって、それ以前の記録を処分してよいことにはなりません。

将来の分について、紙とシステムを併用するかどうかは、一律には決められません。両方に記録が残れば食い違いの確認はしやすくなりますが、打刻の手間が二重になり、職員側の負担が増えます。移行期に一時的に併用する事業所もありますが、期間を決めずに続けると、どちらが正式な記録なのかが曖昧になります。

職員のスマートフォンで打刻させてもよいですか

労働時間の把握の方法について、厚生労働省のガイドラインが原則としているのは、使用者による現認か、タイムカード・ICカード・パソコンの使用記録といった客観的な記録によることです。打刻に使う機器の種類そのものに指定はありません。スマートフォンによる打刻も、客観的な記録として残る限り、この原則から外れるものではありません。

ただし、運用として決めておくことがあります。私物の端末を使う場合の通信費の扱いをどうするか。施設外からの打刻を認めるかどうか。認める場合、どこまでの範囲を認めるか。こうした点は法令で決まっているものではなく、事業所として決めて周知しておく必要があります。何を打刻の対象とするかによって記録の意味が変わる点は、中抜けや着替えの時間をどう扱うかでも扱っています。

導入にはどのくらいの期間がかかりますか

何をどこまで動かすかによって大きく変わります。

打刻の記録だけであれば、登録する項目が限られるため、それほど時間はかかりません。一方、手当の支給要件や休日・シフトの区分まで設定し、給与計算システムとの連携まで進める場合は、相応の期間を見ておく必要があります。

期間を左右するのは、施設の数、手当の種類とその内容が施設ごとに異なる程度、給与計算システムとの連携を行うかどうかの3点です。加えて、設定は一度で終わらないという点もあります。実際に運用してみて初めて想定と違う挙動に気づき、修正する工程が入るためです。

導入の負担を分ける方法については、初期設定を段階的に進める考え方で説明しています。

まとめ

複数の施設を運営し、給与計算を本部で一元管理している事業所にとって、クラウドの勤怠管理システムは主に3つの点をプラスに変えてくれます。

ひとつは、労働時間の把握です。紙の運用では、各施設が集計した結果が本部に届くため、状況が分かるのは月が終わった後になります。特に本部の事務部門は、締め日以降と月末に業務が集中しながら、自分の勤怠を自分で集計しているため、記録が残りにくい位置にあります。

ふたつめは、給与計算との連携です。集計結果を手作業で入力する工程がなくなります。ただしこれは初期設定を終えた後の話で、設定そのものは相応の作業になります。

みっつめは、年次有給休暇の管理です。管理簿を別に作る作業がなくなり、年5日の取得状況を期の途中で確認できるようになります。

導入の判断で押さえておきたいのは、手間の総量ではなく、手間が発生する時点が変わるという点です。紙のタイムカードには初期設定がなく、その代わり毎月の集計が続きます。クラウドはその逆で、最初にまとめて登録し、以降が軽くなります。この山は最初の一度だけで、しかも打刻を先に動かして紙をなくし、設定と給与連携を後から進めるという分け方もできます。

そして、導入した後にも仕事は残ります。集まったデータを月末以外にも見る運用にできるかどうかで、システムの価値は変わってきます。

なお、本記事で触れた法令の内容は2026年8月時点のものです。労働時間や年次有給休暇に関する規定は改正されることがあり、保存期間のように経過措置が続いている項目もあります。実際に運用を決める際は、厚生労働省や都道府県労働局の資料で最新の内容をご確認ください。自社の就業規則や賃金規程との関係で判断に迷う部分があれば、労働基準監督署の窓口や顧問の社会保険労務士にご相談ください。

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この記事を書いた人

川西 隆之のアバター 川西 隆之 社会保険労務士

兵庫県川西市の川西隆之社労士事務所
クラウドツールを活用した労務のデジタル化を得意としています
(ジョブカン認定アドバイザー)

税理士事務所勤務平成22年3月~平成31年1月
社労士業補助平成22年3月~平成28年8月
社労士登録平成28年9月~
1984年3月9日生まれ。
兵庫(但馬)産まれ兵庫(但馬)育ち。川西市在住。
一人の妻と3人の子どもたち。

2005年社労士試験合格
2016年開業登録(岐阜県)
→2020年より兵庫県川西市にて開業

以下の事項に力を入れています。
・クラウド勤怠管理・給与計算を利用した勤怠管理・給与計算の効率化
→給与計算に必要な時間の圧倒的な削減

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