有給休暇の基準日を統一する手順|一斉付与で外せない3つの要件と、入社月別の付与日

年次有給休暇の基準日は、職員ごとに入社日から決まります。1月に入社した職員は7月1日、4月に入社した職員は10月1日というように、採用のたびに基準日が増えていきます。

中途採用が続く事業所では、職員の数だけ基準日があるという状態になります。誰にいつ何日を付与するのか、残日数がいくつなのかを、それぞれの日付で管理し続けることになります。

この負担を軽くする方法として、基準日を全職員で同じ日に揃えるやり方があります。一斉付与、あるいは斉一的取扱いと呼ばれるものです。

ただし、揃え方には要件があります。要件を外すと、法定を下回る付与になります。この記事では、基準日を統一する手順と、外してはいけない3つの要件を、入社月別の付与日まで含めて整理します。

目次

基準日がばらばらだと、何が起きるか

年次有給休暇は、雇入れの日から6か月間継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与されます(労働基準法39条1項)。この6か月を経過した日が最初の基準日で、以後は1年ごとに、勤続年数に応じた日数を付与します。

起点が入社日である以上、基準日は入社日ごとに決まります。4月と10月にまとめて採用する事業所であれば基準日は2つで済みますが、欠員が出るたびに補充する運用では、採用のたびに新しい基準日が生まれます。

管理の負担は、人数ではなく基準日の数で増えます

職員が20人いても、基準日が2つなら管理は年2回です。しかし基準日が15種類あれば、年間を通じて15回、付与の処理が発生します。

各基準日で確認することは、次のとおりです。

  • その職員の勤続年数に応じた付与日数(6か月で10日、1年6か月で11日、2年6か月で12日、以後は2日ずつ増えて6年6か月以降は20日)
  • 週の所定労働日数に応じた比例付与に該当するかどうか、該当する場合の日数
  • 直前1年間の出勤率が8割以上かどうか
  • 前年度からの繰越日数(2年で時効消滅するため、消滅する分の把握も必要)

これを職員ごとに別々の日付で行うことになります。表計算ソフトで管理している事業所では、基準日が10を超えたあたりから処理の抜けが起きやすくなります。付与日の管理をシステムに移す方法については、クラウド勤怠管理で介護の複数施設は何が変わるかでも触れています。

ばらばらであること自体は、違法ではありません

念のため申し添えると、基準日が職員ごとに違う状態は、法律どおりの姿です。是正しなければならないものではありません。

問題は管理の負担であり、負担が処理の抜けにつながることです。付与を忘れる、繰越の計算を誤る、比例付与の日数を間違える。こうした誤りは、労働基準監督署の調査で指摘されるだけでなく、退職時の未消化日数の計算をめぐるトラブルにもなります。

揃えるかどうかは、この負担と、揃えるために必要な手間を比べて決める判断です。揃えないという選択も当然にあります。

なお、基準日を統一すると、年5日の取得義務の履行期間の考え方も変わります。付与日と取得義務の起算は別の話になるため、この記事では扱いません。

基準日は統一できる。年1回か年2回かを先に決める

基準日を全職員で揃える取り扱いは、行政の通達で認められています(平成6年1月4日基発第1号)。事業所が独自に判断してよい範囲で、労働基準監督署への特別な申請なども必要ありません。

ただし、揃え方には方向の制約があります。

揃える方向は「前倒し」しかありません

労働基準法は労働条件の最低基準を定めたものです。法定の基準日より遅い日に付与することは、その分だけ付与が遅れることになり、認められません。

つまり、基準日を統一するとは、各職員の法定の基準日を、統一日まで前倒しするという意味になります。後ろにずらすことはできません。

ここから、統一日の置き方によって前倒しの幅が決まる、という関係が出てきます。

年1回にすると、前倒しの幅が大きくなります

統一日を4月1日の年1回とした場合を考えます。

入社日から6か月後が4月1日より後になる職員には、4月1日に初回の10日を前倒しで付与します。3月末に入社した職員であれば、入社の直後に10日が発生することになります。

一方、入社日から6か月後が4月1日より前に来る職員には、法定どおり6か月後に初回を付与し、2回目以降を4月1日に揃えます。ここで問題になるのが9月末の入社です。法定の初回は翌年3月末で、2回目を4月1日にすると、初回からわずか数日で11日が発生します。

極端な職員が必ず出ます。制度として違法ではありません。労働者に有利な方向だからです。しかし事業所から見れば、想定外の付与が生じることになります。

年2回にすると、幅が収まります

統一日を4月1日と10月1日の年2回にすると、この極端さが緩和されます。職員ごとに、初回から一定の期間が空く側の統一日を割り当てられるためです。前倒しの幅は、おおむね6か月以内に収まります。

管理の回数は年2回になりますが、それでも基準日が10種類ある状態よりは大幅に単純です。

どちらを選ぶか

判断の材料は2つです。

採用の時期が偏っているか。4月と10月にまとまって採用する事業所であれば、年2回の統一日と実態が近く、前倒しの幅も小さくなります。年間を通じて随時採用している事業所では、どちらにしても幅の大きい職員が出ます。

前倒しによる費用をどこまで許容するか。前倒しは、その分だけ付与を早めることです。勤続年数のカウントも前倒しになるため、日数が増えるタイミングも早まります。人数が多いほど影響が出ます。

迷う場合は年2回を勧めます。極端な職員が出にくく、説明もしやすいためです。年1回に単純化する利点は、年2回にした場合と比べて、それほど大きくありません。

なお、事業所全体で日を揃えるのではなく、個々の職員に入社の時点で前倒し付与するという方法もあります。目的も副作用も別のものになるため、有給の前借りは回収できない|介護事業所の入社時付与と就業規則で扱っています。

外せない3つの要件

基準日の統一で押さえるべき要件は3つです。いずれも通達(平成6年1月4日基発第1号)に示されているもので、外すと法定を下回る付与になります。

要件1|法定の基準日より前に付与すること

繰り返しになりますが、統一日は各職員の法定の基準日以前でなければなりません。

法定の基準日は、初回が雇入れの日から6か月経過日、2回目以降はその1年後です。統一日をこれより後に置くと、その職員は本来受け取るべき時期に年次有給休暇を受け取れないことになります。

基準日より後に付与するとどうなるか。その職員については、法定の基準日から統一日までの間、本来あるはずの日数がない状態になります。この期間に休みを申し出られた場合、事業所は「まだ付与されていない」と扱うことになりますが、法的には付与済みとみなされる日数です。付与漏れとして是正の対象になります。

実務で起きやすいのは、「4月1日に統一する」と決めた際に、すでに法定の基準日が来ている職員の扱いを後回しにしてしまうケースです。切り替えの時点で、全職員の法定基準日を洗い出す必要があります。

要件2|短縮された期間は、全期間出勤したものとみなすこと

これが最も見落とされやすい要件です。

年次有給休暇の付与には、全労働日の8割以上出勤という要件があります(労働基準法39条1項)。基準日を前倒しすると、この出勤率を算定すべき期間が、本来の6か月または1年より短くなります。

通達は、斉一的取扱いによって法定の基準日以前に付与する場合、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすとしています。

具体例で説明します。5月1日が法定の基準日である職員について、統一日を4月1日にしたとします。この場合、4月1日から5月1日までの1か月は、実際の出勤状況にかかわらず、全期間出勤したものとして出勤率を計算します。

計算方法を間違えるとどうなるか。短縮された期間を実績どおりに計算すると、分母である全労働日が減り、欠勤があった職員の出勤率が実際より低く出ます。その結果、本来8割以上を満たしている職員を「8割未満」と判定し、付与しないという誤りが起きます。付与日数が0日になるため、影響は大きくなります。

出勤率の算定では、このほかに、年次有給休暇を取得した日、産前産後の休業期間、育児休業・介護休業をした期間、業務上の負傷や疾病による療養のための休業期間も、法令や行政通達により出勤したものとして扱います。基準日の統一を機に出勤率の計算方法を見直す際は、これらの扱いも合わせて確認してください。産休・育休を欠勤として計算している事業所は珍しくありません。

要件3|一度繰り上げたら、それ以降も同じかそれ以上の期間を繰り上げること

付与日を法定の基準日より前倒しした場合、その次の年以降の付与日についても、前倒しした期間と同じかそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げる必要があります。

これは「一度だけ調整して、次の年からは法定に戻す」ということができない、という意味です。

4月1日に入社した職員を例にとります。法定の初回基準日は10月1日ですが、統一日である翌年4月1日まで待たせることはできないため、10月1日に10日を付与します。ここまでは法定どおりです。

次に、統一日である翌年4月1日に11日を付与します。法定の2回目は翌年10月1日ですから、6か月の繰上げです。その次も、翌々年10月1日ではなく翌々年4月1日に12日を付与します。以後も同様です。

基準を間違えるとどうなるか。統一日に揃えた翌年、法定基準日である10月1日に戻してしまうと、前回付与(4月1日)から18か月が空くことになります。法定は12か月ごとですから、6か月分の付与が遅れる状態です。付与漏れになります。

つまり、基準日の統一は一度きりの調整ではなく、以後ずっと維持する運用です。担当者が代わったときに元に戻してしまう事故が起きやすい部分なので、就業規則に明記しておく意味があります。

3要件の関係

3つは独立した注意点ではありません。「前倒しでしか揃えられない」という一点から派生した帰結です。

前倒しするから、出勤率を見る期間が短くなる(要件2)。前倒しするから、翌年以降もその位置を維持しなければ間隔が開く(要件3)。要件1は前倒しそのものの制約です。

この関係を押さえておくと、個別の場面で迷ったときに判断できます。「これは労働者にとって法定より不利になっていないか」が、すべての判断基準です。

入社月別に、いつ何日を付与するか

要件を実際の日付に当てはめます。統一日を4月1日の年1回とし、週5日勤務の職員を例にします。

前倒しするかどうかは、法定の初回基準日が統一日の前か後かで決まります

判定は単純です。

  • 法定の初回基準日が4月1日より後に来る職員 → 4月1日に10日を前倒しで付与する
  • 法定の初回基準日が4月1日より前に来る職員 → 法定どおりに10日を付与し、2回目を4月1日に揃える

入社日から6か月後が4月1日より後になるか前になるかで分かれます。10月1日入社を境に、扱いが変わります。

入社月別の一覧

括弧内は、いずれも入社日からの経過期間です。

入社月法定の初回基準日初回の付与2回目の付与3回目の付与
4月1日入社6か月後の10月1日10月1日に10日(6か月後)4月1日に11日(1年後)4月1日に12日(2年後)
5月1日入社6か月後の11月1日11月1日に10日(6か月後)4月1日に11日(11か月後)4月1日に12日(1年11か月後)
6月1日入社6か月後の12月1日12月1日に10日(6か月後)4月1日に11日(10か月後)4月1日に12日(1年10か月後)
7月1日入社6か月後の1月1日1月1日に10日(6か月後)4月1日に11日(9か月後)4月1日に12日(1年9か月後)
8月1日入社6か月後の2月1日2月1日に10日(6か月後)4月1日に11日(8か月後)4月1日に12日(1年8か月後)
9月1日入社6か月後の3月1日3月1日に10日(6か月後)4月1日に11日(7か月後)4月1日に12日(1年7か月後)
10月1日入社6か月後の4月1日4月1日に10日(6か月後)4月1日に11日(1年6か月後)4月1日に12日(2年6か月後)
11月1日入社6か月後の5月1日4月1日に10日(5か月後)4月1日に11日(1年5か月後)4月1日に12日(2年5か月後)
12月1日入社6か月後の6月1日4月1日に10日(4か月後)4月1日に11日(1年4か月後)4月1日に12日(2年4か月後)
1月1日入社6か月後の7月1日4月1日に10日(3か月後)4月1日に11日(1年3か月後)4月1日に12日(2年3か月後)
2月1日入社6か月後の8月1日4月1日に10日(2か月後)4月1日に11日(1年2か月後)4月1日に12日(2年2か月後)
3月1日入社6か月後の9月1日4月1日に10日(1か月後)4月1日に11日(1年1か月後)4月1日に12日(2年1か月後)
統一日を4月1日とした場合に入社月別の付与日と間隔がどう変わるかを示した図|キャプション:2回目以降は全職員が4月1日に揃うが、初回までの期間と初回から2回目までの間隔は入社月ごとに異なる

表から読み取れること

3月入社の職員には、入社の翌月に10日が発生します。法定なら6か月後の9月1日ですが、統一日を4月1日にする以上、それより前に付与しなければなりません。入社1か月で年次有給休暇が10日ある状態になります。

このとき、要件2が効きます。短縮された期間は全期間出勤したものとみなすため、出勤率を理由に付与しないことはできません。

9月入社の職員は、初回から1か月で2回目が来ます。法定の初回は6か月後の3月1日で、統一日の4月1日まで1か月しかありません。3月1日に10日、4月1日に11日を付与し、この職員は入社から7か月で21日を持つことになります。

いずれも違法ではありません。労働者に有利な方向だからです。しかし採用の時期によって、初年度に受け取る日数に差が出ることは、あらかじめ想定しておく必要があります。

年2回にする場合

統一日を4月1日と10月1日の2つにすると、この偏りが小さくなります。

判定の考え方は同じで、法定の初回基準日の直前に来る統一日に揃えます。前倒しの幅は最大でも6か月に収まり、3月入社のような極端な例は生じません。

管理の回数は年2回に増えますが、基準日が10種類ある状態と比べれば大幅に単純です。

比例付与の職員も同じです

週の所定労働日数が少ない職員も、判定の考え方は変わりません。付与する日は同じで、日数だけが比例付与の表に従います。週3日勤務であれば、初回は10日ではなく5日です。

なお、比例付与の日数は基準日時点の週の所定労働日数で判定します。基準日を前倒しした結果、判定する時点も早まる点には注意してください。シフトの変更で所定労働日数が変わる職員では、統一前と統一後で日数が変わることがあります。

すでに在籍している職員をどう移行するか

新しく入る職員の扱いは前章のとおりです。問題は、すでに在籍していて、それぞれの基準日で付与を受けてきた職員をどう切り替えるかです。ここが切り替え作業の山場になります。

全員に、次の統一日で付与します

結論から言えば、在籍者は全員、切り替え後の最初の統一日に、次回分を前倒しで付与します。

たとえば統一日を4月1日と決め、今年の4月1日から運用を始めるとします。現在の基準日が11月1日の職員は、本来なら11月1日に次回分を受け取るはずでしたが、それを4月1日に繰り上げます。6月1日が基準日の職員も、2月1日が基準日の職員も、同じく4月1日です。

これで全員の基準日が4月1日に揃います。以後は要件3に従い、毎年4月1日に付与し続けます。

付与日数を減らすことはできません

移行でよく問題になるのがここです。

基準日を繰り上げると、前回の付与から次の付与までの間隔が1年より短くなります。11月1日が基準日だった職員を4月1日に繰り上げれば、間隔は5か月です。事業所から見れば、1年分の日数を5か月で付与することになります。

そこで「間隔が短いのだから、その分だけ日数を減らせないか」と考えたくなります。これはできません。

労働基準法39条2項は、継続勤務した期間に応じた日数を付与するよう定めています。日数は勤続年数で決まるのであって、前回付与からの間隔で決まるものではありません。繰り上げた分だけ日数を按分して減らす扱いは、法定を下回る付与になります。

繰り上げるということは、その分だけ早く次の日数を渡すということです。これは基準日を統一する以上、避けられない負担です。

移行の年は、付与が二重に発生します

もう一点、費用の見積りに関わる話です。

移行の年は、多くの職員で「従来の基準日での付与」と「統一日での付与」が近接します。11月1日に付与を受けた職員が、5か月後の4月1日に次回分を受け取る。つまり1年間のうちに2回の付与が発生します。

繰越の上限に注意が必要です。年次有給休暇は2年で時効消滅しますが、移行の年は前年分と当年分が短い間隔で重なるため、繰越を含めた保有日数が一時的に大きくなります。40日近くを保有する職員が出ることもあります。

これは制度上正しい状態で、問題ではありません。ただし、移行の年だけ人件費の見積りが変わることは想定しておく必要があります。

移行のときに確認しておくこと

切り替えは、全職員の年次有給休暇を一度に見直す機会でもあります。次の点を合わせて確認してください。

  • 各職員の現在の基準日と、次回の付与日数(勤続年数の数え間違いがないか)
  • 繰越日数と、時効で消滅する日数
  • 比例付与の対象者について、現在の週の所定労働日数が実態と合っているか
  • 出勤率の算定で、産前産後休業や育児休業を欠勤として扱っていないか

移行の作業で基準日を揃えても、元の日数が間違っていれば、その誤りをそのまま持ち越すことになります。揃える前に、現状が正しいかを確認するほうが順序として先です。

年次有給休暇の管理簿は、時季、日数、基準日を職員ごとに記録し、保存する必要があります。保存期間は施行規則上5年とされていますが、経過措置により当分の間は3年で足ります。移行の前後で記録が途切れないよう、様式も合わせて見直しておくとよいでしょう。

就業規則の規定例と変更の手順

基準日の統一は、就業規則に書いて初めて制度になります。運用だけで揃えても、根拠がありません。

就業規則への記載が必要です

休暇に関する事項は、就業規則に必ず記載しなければならない事項です(労働基準法89条1号)。年次有給休暇の付与日をいつにするかは、この「休暇に関する事項」に含まれます。

記載せずに運用すると、次のような場面で説明できなくなります。

  • 職員から「自分の付与日はいつか」と聞かれたときに、根拠を示せない
  • 担当者が代わったときに、なぜこの日付なのかが引き継がれない
  • 労働基準監督署の調査で、規定と実際の運用の食い違いを指摘される

特に2つ目は、要件3(繰上げの維持)に直結します。規定がないと、担当者の交代を機に法定基準日へ戻してしまう事故が起きます。

規定例(統一日を4月1日とする場合)

厚生労働省のモデル就業規則は、基準日を統一しない前提の条文です。統一する場合は、次のような形になります。

(年次有給休暇)

第○条 従業員が入社の日から6か月を経過し、その期間の全労働日の8割以上出勤したときは、次条に定める日数の年次有給休暇を与える。

2 前項にかかわらず、年次有給休暇の付与日は毎年4月1日とする。ただし、入社の日から6か月を経過した日が4月1日より前に到来する場合は、その日に初回の年次有給休暇を与え、次回以降を4月1日とする。

3 前項により法定の基準日より前に年次有給休暇を与える場合、短縮された期間は、全期間出勤したものとみなして第1項の出勤率を算定する。

4 第2項により付与日を繰り上げた従業員については、次年度以降も同様に4月1日を付与日とする。

第3項と第4項が要点です。第3項が要件2、第4項が要件3に対応します。この2つを書いておかないと、運用する側が要件を思い出せません。

第2項のただし書は、入社から6か月経過日が4月1日より前に来る職員を法定どおりに扱うための規定です。これがないと、その職員の初回付与が法定より遅れます。

統一日を年2回にする場合は、第2項の「毎年4月1日」を「毎年4月1日および10月1日」とし、どちらに割り当てるかの基準を書き足します。

変更の手順

1. 労働者代表の意見を聴く

事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴きます(労働基準法90条1項)。同意までは必要ありませんが、意見を聴くことは必要です。

代表者の選出は、投票や挙手など、労働者の意思が反映される方法で行います。事業所が指名した者では要件を満たしません。

2. 労働基準監督署に届け出る

変更した就業規則に、聴取した意見を記した書面を添えて、所轄の労働基準監督署長に届け出ます(労働基準法89条、90条2項)。

3. 職員に周知する

見やすい場所への掲示、書面の交付、電子データでの提供などの方法で、全職員に周知します(労働基準法106条1項)。周知していない就業規則は効力を生じません。

不利益変更にはあたりません

就業規則の変更というと、不利益変更にあたらないかが気になるところです。

基準日の統一は、付与日を前倒しする変更です。労働者にとって有利な方向であり、不利益変更にはあたりません。前章のとおり、付与日数を減らすことはできないため、日数の面でも不利になりません。

したがって、労働者の同意を個別に取る必要もありません。ただし、付与日が変わることは職員の関心事なので、変更の内容と自分の付与日がいつになるかは、周知の際に説明しておくべきです。

逆に言えば、日数を減らすなど不利益な要素を含む変更にしてしまうと、話がまったく別になります。前章で述べた按分は、その意味でも避けるべき設計です。

よくある質問

基準日を統一した後に入社した職員は、どう扱いますか

入社月別の一覧のとおりです。入社日から6か月後が統一日より後に来る職員には、統一日に初回を前倒しで付与します。統一日より前に来る職員には、法定どおり6か月後に初回を付与し、2回目から統一日に揃えます。

移行が済めば終わりではなく、採用のたびにこの判定が発生します。基準日を統一しても、新しく入る職員については個別の判定が残ります。基準日が揃うのは、その職員の2回目以降です。

統一日を後から変更することはできますか

変更自体は可能ですが、変更の方向に制約があります。

4月1日から10月1日へ動かすというように、統一日を後ろへずらすことはできません。すでに4月1日を基準日として運用している職員にとって、次回の付与が6か月遅れることになるためです。前回の付与から18か月が空き、法定を下回ります。

前へ動かす分には問題ありません。4月1日を1月1日に変えるのであれば、その年の付与が3か月早まるだけです。ただしこの場合も、要件3により、翌年以降も1月1日を維持することになります。

統一日は、動かしにくいものだと考えて最初に決めてください。

パート職員だけ、基準日を統一しない扱いにできますか

できます。統一するかどうかは事業所が決められる事柄で、対象を一部の職員に限ることも可能です。

ただし、勧めません。理由は2つあります。

管理が二重になります。統一した職員は年1回の処理で済みますが、統一しない職員は従来どおり個別の基準日で管理することになります。基準日を揃えて負担を軽くするのが目的だったはずが、目的が半分しか達成されません。パートの比率が高い事業所では、むしろ大部分が個別管理のまま残ります。

もう一つは、説明の難しさです。同じ職場で、正職員は4月1日、パートは入社日ごとという状態になります。合理的な理由を説明できる形にしておく必要があります。

比例付与の職員も、統一の対象に含めて差し支えありません。付与日は同じで、日数だけが週の所定労働日数に応じて変わるだけです。

統一した後、法定より不利になっていないかは、どう確認しますか

職員1人ずつ、次の3点を確認します。

1つ目。前回の付与日から次の付与日までが、12か月以内に収まっているか。12か月を超えている職員がいれば、その分だけ付与が遅れています。要件3を外している可能性があります。

2つ目。入社日から6か月経過日より前に、初回が付与されているか。初回が遅れている職員は、要件1を外しています。移行の際に、すでに法定基準日が来ていた職員を見落とすと起きます。

3つ目。前倒しした期間について、出勤率を実績どおりに計算していないか。短縮された期間は全期間出勤したものとみなす必要があります。ここを実績で計算していると、欠勤のあった職員の付与日数が0日になっている可能性があります。

3点とも、年に1度、統一日の処理をするタイミングで確認するのが現実的です。特に採用が続いている事業所では、新しく入った職員が判定から漏れていないかを、この機会に見ておいてください。

まとめ

年次有給休暇の基準日は、職員ごとに入社日から決まります。中途採用が続く事業所では基準日の数が増え、そのぶん管理の負担が増えます。基準日を全職員で同じ日に揃える取り扱いは、通達で認められています。

揃える際に外せない要件は3つです。

  • 法定の基準日より前に付与すること。統一日を後ろに置くことはできません
  • 短縮された期間は、全期間出勤したものとみなすこと。実績どおりに出勤率を計算すると、付与日数が0日になる職員が出ます
  • 一度繰り上げたら、それ以降も同じかそれ以上の期間を繰り上げること。翌年に法定基準日へ戻すと、付与が遅れます

在籍している職員を移行する際は、繰り上げた分だけ付与日数を減らすことはできません。日数は勤続年数で決まるためです。移行の年は付与が二重に発生し、保有日数が一時的に大きくなりますが、これは制度上正しい状態です。

決めた内容は就業規則に書いてください。特に、出勤みなしと繰上げの維持は条文に残しておくべきです。規定がないと、担当者が代わったときに元の運用に戻ってしまいます。

なお、基準日を統一すると、年5日の取得義務の履行期間の考え方も変わります。付与日と取得義務の起算は別の話になるため、この記事では扱っていません。

年次有給休暇に関する制度や運用の解釈は改正されることがあります。この記事は2026年8月時点の内容です。実際に規定を作る際は、厚生労働省や都道府県労働局の公表資料で最新の内容を確認してください。判断に迷う場合は、労働基準監督署や顧問の社会保険労務士など、専門家にご相談ください。

ここまでの手順で自社での対応が見通せるようでしたら、専門家への相談は必要ありません。

迷いやすいのは、「今の付与が法定を下回っていないか」の判定です。基準日を揃えた事業所では、要件を外した状態が何年も気づかれずに続き、後から遡って是正することになる場合があります。書類上は整っていても、実際の付与日と出勤率の算定方法を突き合わせないと分かりません。当事務所では、こうした確認を含む労務のご相談を、顧問契約の中で継続的にお受けしています。規定そのものを整える必要がある場合は、就業規則の作成・変更のみのご依頼も可能です。いずれも事業者さま向けのご案内です。お引き受けしている業務の範囲をご覧ください。

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この記事を書いた人

川西 隆之のアバター 川西 隆之 社会保険労務士

兵庫県川西市の川西隆之社労士事務所
クラウドツールを活用した労務のデジタル化を得意としています
(ジョブカン認定アドバイザー)

税理士事務所勤務平成22年3月~平成31年1月
社労士業補助平成22年3月~平成28年8月
社労士登録平成28年9月~
1984年3月9日生まれ。
兵庫(但馬)産まれ兵庫(但馬)育ち。川西市在住。
一人の妻と3人の子どもたち。

2005年社労士試験合格
2016年開業登録(岐阜県)
→2020年より兵庫県川西市にて開業

以下の事項に力を入れています。
・クラウド勤怠管理・給与計算を利用した勤怠管理・給与計算の効率化
→給与計算に必要な時間の圧倒的な削減

・クラウド労務管理を導入することで、法定帳簿の管理・社会保険手続きの効率化
→代行することなく自社での管理・申請が容易に可能

・適切な労務管理を行うことによる、労使トラブルの防止
→疑問点があれば、その都度の相談可能

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