医療機関・介護事業所は両立支援等助成金を使えるか|中小企業の判定、育児系4コースの支給額、申請に間に合わせる準備の時期(2026年度)

両立支援等助成金は、「中小企業向けの助成金」と受け取られがちです。しかし令和8年度(2026年度)は、事業主の規模によって使えるコースが3段階に分かれており、常時雇用する労働者が300人を超える事業主でも使える区分があります。

一方で、この助成金の要件の多くは、職員の休業が始まる前に満たしておく必要があります。職員から妊娠や出産予定の報告を受けてから準備を始めても、間に合わないものがあります。

この記事では、医療機関・介護事業所を前提に、自社が対象になるかの判定、育児に関する4つのコースの支給額、そして申請に間に合わせるための準備の時期を整理します。

なお、職員が家族の介護をしながら働き続けるための「介護離職防止支援コース」は、この記事では扱いません。別の記事で取り上げる予定です。

目次

両立支援等助成金とは

両立支援等助成金は、職員が仕事と育児・介護などを両立できる職場づくりに取り組む事業主に対して、厚生労働省が支給する助成金です。申請先は、本社など人事労務管理を担う部署がある事業所を管轄する、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。

令和8年度は、次の6つのコースがあります。

コース支援の内容
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)男性職員の育児休業の取得、男性の育休取得率の上昇
介護離職防止支援コース職員の介護休業の取得・復帰、介護のための両立支援制度の利用
育児休業等支援コース育休復帰支援プランに基づく育児休業の取得と職場復帰
育休中等業務代替支援コース育休中・育児短時間勤務中の職員の業務を代替する体制づくり
柔軟な働き方選択制度等支援コース育児期の柔軟な働き方に関する制度の導入と利用
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース不妊治療や月経・更年期の症状に対応する制度の整備と利用

この記事で扱うのは、このうち育児に関する4つのコースです。

  • 出生時両立支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 育休中等業務代替支援コース
  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース

介護離職防止支援コースは別の記事で扱い、不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは扱いません。

また、両立支援等助成金は雇用関係助成金の一つです。どのコースにも、雇用関係助成金に共通する要件があります。たとえば、支給申請の前年度より前の労働保険料に未納がないこと、過去に不正受給による不支給・支給取消を受けてから5年が経過していることなどです。

制度の全体と最新の手引きは、厚生労働省の両立支援等助成金のページで確認できます。

医療機関・介護事業所が対象になるかの判定

両立支援等助成金は、「中小企業しか使えない」と説明されることがよくあります。しかし令和8年度は、コースや区分によって対象になる事業主の範囲が異なり、中小企業に当たらない事業主でも使えるものがあります。自社がどこに当たるかは、次の順で判定します。

医療・介護福祉は「サービス業」の基準で判定する

雇用関係助成金では、中小企業に当たるかどうかを業種ごとの基準で判定します。医療機関や介護事業所の事業は「医療、福祉」に分類され、「サービス業」の基準が使われます。

サービス業の基準は、次のいずれか一方を満たすことです。

  • 資本金または出資の総額が5,000万円以下
  • 常時雇用する労働者が100人以下

法人の形態によって、使える基準が変わります。

  • 株式会社・合同会社:資本金が5,000万円以下であれば、人数に関係なく中小企業に当たります。職員が200人いても、資本金1,000万円の株式会社は中小企業です。
  • 出資持分のある医療法人:出資の総額でも判定できます。厚生労働省の令和8年度の助成金パンフレットは、医療法人などで資本金・出資金を有している事業主も、資本金・出資の総額か労働者の数で判定する、としています。
  • 出資持分のない医療法人・社会福祉法人・個人開業のクリニック:資本金の基準を使えないため、人数だけで判定します。

人数は「フルタイム相当」の職員だけで数える

ここでいう「常時雇用する労働者」は、2か月を超えて雇用され、かつ週の所定労働時間が正職員とおおむね同じ人を指します。

そのため、次のように数えます。

  • 短時間勤務のパート職員は、数に入りません。
  • 夜勤専従の職員も、週の所定労働時間が正職員と同程度であれば数に入ります。
  • 個人開業のクリニックの院長本人や、法人の役員は、雇われて働く立場ではないため、通常は含まれません。

人数は事業所ごとではなく、法人全体で数えます。判定の時点は、支給申請をする月の初日です。職員数が基準の前後で増減している場合は、申請月の初日時点の人数を確認してください。

注意したいのは、同じ「常時雇用する労働者」という言葉でも、次世代法の行動計画とは数え方が違うことです。行動計画の策定が義務になる「101人以上」はパートも含めて数えますが、助成金ではフルタイム相当の職員だけを数えます。パートの多い事業所では、「行動計画上は101人以上だが、助成金上は100人以下の中小企業」ということが起こります(行動計画の人数の数え方は、介護事業者の一般事業主行動計画の記事で解説しています)。

規模別に使えるコース

令和8年度は、中小企業に当たらない事業主のうち、常時雇用する労働者が300人以下の事業主が「特定事業主」として、一部の区分の対象に加わりました。

また、育休中等業務代替支援コースの手当支給等は、規模の要件がなくなり、すべての事業主が対象です。

自社の区分使えるコース・区分
中小企業に当たるこの記事で扱う4コースすべて
中小企業ではないが、フルタイム相当300人以下(特定事業主)出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」/育休中等業務代替支援コースの「手当支給等」「新規雇用」
フルタイム相当301人以上育休中等業務代替支援コースの「手当支給等」

法人の形態と規模を組み合わせると、たとえば次のようになります。

事業主の例判定使えるもの
資本金1,000万円の株式会社(フルタイム相当180人)中小企業4コースすべて
社会福祉法人(フルタイム相当150人)特定事業主取得率の上昇等、手当支給等、新規雇用
出資持分のない医療法人(フルタイム相当400人)どちらにも当たらない手当支給等のみ

「中小企業しか使えない」と判断して申請を見送っている病院や法人本部は、上の表で自社の区分を確認してみてください。

申請の前提になる一般事業主行動計画

この記事で扱う4つのコースは、どれも、次世代法に基づく「一般事業主行動計画」があることを申請の前提にしています。

4コースすべてで、行動計画が必要

行動計画の策定は、常時雇用する労働者が101人以上の事業主には義務、100人以下の事業主には努力義務です。しかし両立支援等助成金を申請する場合は、事業主の規模にかかわらず行動計画が必要です。常勤の職員が10人ほどの個人クリニックでも、この要件は変わりません。

例外は、「プラチナくるみん」の認定を受けている事業主だけです。

「申請日に有効」かつ「申請日までに4つの手続きが完了」

助成金の要件としての行動計画には、次の2つが求められます。

  • 申請の時点で、計画が有効であること(申請日が計画期間の中に入っていること)
  • 支給申請日までに、計画の策定、労働局への届出、外部への公表、職員への周知が済んでいること

申請の際には、労働局に提出した策定届の写しを添付します。計画を作っただけで届け出ていない、あるいは届け出たが公表・周知をしていない場合は、要件を満たしません。

規模によって、計画に入れる中身が違う

2025年4月以降に計画を策定・変更する場合、常時雇用する労働者が101人以上の事業主は、育児休業の取得状況と労働時間の状況を把握したうえで、その両方について数値目標を立てることが義務になっています(詳しくは介護事業者の一般事業主行動計画と数値目標の記事で解説しています)。

一方、100人以下の事業主については、京都労働局のQ&Aが、くるみん認定の申請予定がなければ、これらの状況把握や数値目標の設定は必要ないとしています。助成金のために初めて行動計画を作る小規模な事業所は、比較的軽い負担で計画を用意できます。

ただし、ここでいう「101人」「100人」は、行動計画の数え方(パートを含む)による人数です。前の章で見たとおり、助成金上は中小企業(フルタイム相当100人以下)であっても、パートを含めると101人以上になる事業所では、数値目標が必要です。

また、規模にかかわらず、計画期間が終わっていれば要件を欠きます。すでに行動計画がある事業所も、申請を考える時点で計画期間を確認しておく必要があります。

コース別:どんな場合に申請でき、いくらか

ここからは、4つのコースそれぞれについて、どんな場合に申請でき、いくら支給されるかを整理します。金額はいずれも2026年度(令和8年度)のものです。支給額や要件は年度ごとに見直されるため、申請の際は最新の支給申請の手引きで確認してください。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

男性職員が、子の出生後8週間以内に育児休業を取得した場合に使えるコースです。育休を取りやすい雇用環境の整備と、休む職員の業務を引き継ぐ体制づくりを行ったうえで、実際に男性職員が育休を取得することが条件です。

区分男性労働者の育児休業取得男性労働者の育児休業取得率の上昇等
対象事業主中小企業特定事業主(中小企業を含む)
支給額1人目20万円(雇用環境整備の措置を4つ以上実施した場合は30万円)、2人目・3人目は各10万円60万円(1回限り)
主な要件子の出生後8週間以内に始まる育休を、1人目は連続5日以上、2人目は10日以上、3人目は14日以上取得男性の育休取得率が前の事業年度より30ポイント以上上昇し、50%以上になった場合など
申請期限育休の終了日の翌日から2か月以内要件を満たした事業年度の翌事業年度の開始日から6か月以内

どちらの区分にも、情報公表加算(2万円・1回限り)があります。「両立支援のひろば」で自社の育休取得率などを公表した場合に加算されます。

育休が始まる前に済ませておくこと

育休の開始日の前日までに、次の2つを済ませておく必要があります。

  1. 雇用環境整備の措置:次の5つのうち、1人目は2つ以上、2人目は3つ以上、3人目は4つ以上を実施します。
    • 育休に関する研修
    • 相談窓口の設置
    • 育休の取得事例の収集と提供
    • 制度と取得促進の方針の周知
    • 業務の配分や人員配置の見直し
  2. 業務見直しの規定:育休を取る職員の業務の整理・引き継ぎと、引き継いだ業務の見直しについて定めた規定を作ります。

また、育休の制度そのものが就業規則に定められていることも前提です。

医療機関・介護事業所で使うときのポイント

  • 男性の看護師、介護職員、医療技術職、勤務医などの育休が対象になります。1人目は連続5日以上で対象になるため、シフトの調整がしやすい短い育休でも申請できます。
  • ただしシフト勤務の職場では、連続5日の中に所定労働日が4日以上含まれている必要があります。公休日が多く入ると、この条件を満たさないことがあります。
  • 取得率の上昇等の区分には、男性職員の少ない職場向けの要件もあります。基準となる事業年度に配偶者が出産した男性職員が5人未満の場合は、直前の2事業年度の取得率がいずれも70%以上であれば対象になります。

育児休業等支援コース

育休を取る職員ごとに「育休復帰支援プラン」を作り、プランに沿って育休の取得と職場復帰を支援した場合に使えるコースです。女性職員・男性職員のどちらにも使えますが、実際には、産休から続けて育休を取る女性職員に使う場面が中心になります。

項目内容
対象事業主中小企業のみ
支給額育休取得時30万円、職場復帰時30万円
支給回数1事業主につき2回まで(期間の定めのない職員と有期契約の職員、各1回)
主な要件産後休業を含めて連続3か月以上の育休を取得すること。復帰時は、原則として原職等に復帰させ、復帰後6か月以上雇用を続けること
申請期限取得時:育休開始日(産後休業から続けて休む場合は、産前休業ではなく産後休業の開始日)から3か月を経過した日の翌日から2か月以内。復帰時:復帰後6か月を経過した日の翌日から2か月以内

このコースにも、情報公表加算(2万円・1回限り)があります。

休業が始まる前に済ませておくこと

休業の開始日の前日までに、次の3つを済ませておく必要があります。

  • 育休の取得と復帰を支援する方針を、職員全体に周知すること
  • 対象職員と面談し、その結果を踏まえて育休復帰支援プランを作ること
  • プランに沿って、業務の引き継ぎを行うこと

医療機関・介護事業所で使うときのポイント

  • 最も注意したいのは、準備の期限です。産前休業から続けて休む女性職員の場合、上の3つの準備は、育休ではなく産前休業の開始日の前日までに済ませる必要があります。
  • 産前休業は出産予定日の6週間前から始まります。そのため、妊娠の報告を受けてから準備に使える期間は、思っているより短くなります(準備の時期は、次の章で時系列に整理します)。
  • 準備の期限は産前休業の開始日が基準ですが、申請期限の3か月は産後休業の開始日から数えます。起点が違うので、スケジュール表では分けて管理してください。

育休中等業務代替支援コース

育休を取る職員や、育児のための短時間勤務をする職員の業務を、ほかの職員が代わりに担う体制を整えた場合に使えるコースです。方法は、周りの職員に代替の手当を払う「手当支給等」と、代わりの人を新たに雇う「新規雇用」の2つに分かれます。

手当支給等は、事業主の規模に関係なく、すべての事業主が対象です。

区分手当支給等(育児休業)手当支給等(短時間勤務)新規雇用(育児休業)
対象事業主すべての事業主すべての事業主特定事業主(中小企業を含む)
支給額業務体制整備経費6万円(育休が1か月未満の場合は2万円)+代替した職員に支払った手当の3/4(月10万円まで、最長24か月分)業務体制整備経費3万円+手当の3/4(月3万円まで、子が3歳になるまで)代替した期間に応じて9万円〜81万円
対象になる休業等7日以上の育休3歳未満の子を育てる職員の、1か月以上の短時間勤務7日以上の育休

業務体制整備経費は、1事業主につき1人目の対象者に1回限りの支給です。業務の見直しや就業規則の見直しを外部の社会保険労務士などに委託した場合は、20万円になります。

どの区分にも、有期雇用労働者加算(10万円)と情報公表加算(2万円・1回限り)があります。支給の対象になる人数は、3つの区分を合わせて1年度に延べ10人まで、初回から5年間が上限です。

代替が始まる前に済ませておくこと(手当支給等)

  • 休む職員や代替する職員の業務について、一部の休止・廃止、手順の見直し、マニュアル化のいずれかの見直しを行うこと
  • 代替する職員に、上司や人事担当者が面談で業務の内容と手当を説明すること
  • 代替業務に対する手当(業務代替手当・応援手当など)を、就業規則に定めること。この手当は残業代そのものではなく、代替する業務の内容を評価して支払うものである必要があります。

いずれも、業務の代替が始まる日までに済ませておく必要があります。育休が1か月以上の場合は、復帰後に原職等に復帰させる扱いを就業規則に定め、復帰後3か月以上雇用を続けることも要件です。

医療機関・介護事業所で使うときのポイント

  • 欠員を同僚のシフトで埋めることが多い医療機関・介護事業所では、手当支給等が最も使いやすい区分です。すでに同僚が代わりに勤務に入っているのに、手当の規定がないために対象外になっている事業所は少なくないと考えられます。規定は代替が始まる前に整えておく必要があるため、職員から報告を受けた段階で確認してください。
  • 301人以上の病院や法人でも使えるのは、このコースの手当支給等だけです。
  • 新規雇用で代替要員を確保する場合、休む職員が看護師など資格が必要な業務をしていたときは、代替要員も有資格者である必要があります。また、代替要員の雇用契約の始期は、事業主が職員の妊娠を知った日以降である必要があります。

申請期限(手当支給等・育休が1か月以上の場合)

  • 休業取得時:育休の初日から1か月を経過した日の翌日から2か月以内
  • 職場復帰時:育休の最終日の翌日から3か月を経過した日の翌日から2か月以内

区分や期間によって期限が異なるため、詳しくは手引きで確認してください。

柔軟な働き方選択制度等支援コース

3歳から小学校に入るまでの子を育てる職員が、柔軟な働き方を選べる制度を整え、実際に使ってもらった場合に使えるコースです。

項目内容
対象事業主中小企業のみ
支給額下の5つの制度のうち3つ以上を導入し、職員が利用した場合、1人20万円(4つ以上導入していれば25万円)。1事業主5人まで
その他の支給子の看護等休暇を有給にし、職員が利用した場合30万円(1回限り)。制度の対象を中学校修了前の子まで広げた場合の加算20万円、障害のある子などを育てる職員も利用できるようにした場合の加算20万円、情報公表加算2万円
主な要件制度を就業規則に定めたうえで、職員と面談してプランを作り、制度の利用開始から6か月以内に一定の利用実績(多くの制度で20日以上)があること
申請期限制度の利用開始日から6か月を経過した日の翌日から2か月以内

5つの制度は次のとおりです。

  1. 始業時刻等の変更(フレックスタイム制、または1時間以上の時差出勤)
  2. 育児のためのテレワーク
  3. 短時間勤務(1日原則6時間とする制度と、それ以外の勤務時間から選べる制度)
  4. 保育サービスの手配と費用補助
  5. 養育両立支援休暇(年10日以上の有給休暇で、時間単位で取れるもの)

医療機関・介護事業所で使うときのポイント

  • 2025年10月から、育児・介護休業法で、同じ年齢の子を育てる職員向けに、事業主が5つの措置から2つ以上を選んで講じることが義務になっています。助成金は、これを上回る3つ以上の導入を求めています。また、法律上の措置よりも厳しい条件が付いている制度もあります(養育両立支援休暇は有給であることなど)。
  • シフト勤務の医療機関・介護事業所では、テレワークは導入しにくい制度です。ただし、テレワークを除いた4つ(時差出勤、短時間勤務、保育サービス費用の補助、養育両立支援休暇)をすべて導入すれば、25万円の区分を狙えます。
  • 一方、有給の養育両立支援休暇や保育サービス費用の補助は、事業所にとって継続的な負担になります。助成金の額だけで導入を決めるのではなく、職員の定着にとって必要な制度かどうかで判断することをおすすめします。

自社がどのコースの対象になるか判断がつかない場合は、申請代行のご依頼についてにまとめています(顧問契約がなくてもお受けしています)。

職員から妊娠の報告を受けたら、申請までに何をいつやるか

ここまで見てきたとおり、両立支援等助成金の要件の多くは、職員の休業が始まる前に満たしておく必要があります。申請は休業の後でも、準備は休業の前です。当事務所でも、準備の時期が受給の分かれ目になる場面を最も多く見てきました。

この章では、コースごとの期限を1本の時間軸に並べ直し、「いつまでに何をしておくか」を整理します。

両立支援等助成金の育休関係の3コースについて、平時・妊娠の報告・休業の開始・育休の終了の時間軸に、準備の期限と申請の時期を並べた図|キャプション:要件の多くは休業が始まる前に期限が来る。申請は休業の後でも、準備は休業の前(柔軟な働き方選択制度等支援コースは子が3歳以降の制度のため図では省略)

平時に整えておくもの(職員から報告を受ける前)

次の項目は、職員から妊娠や出産予定の報告を受ける前に整えておくのが確実です。

やること対象コース期限
育児休業と育児のための短時間勤務の制度を、就業規則に定める4コース共通休業・利用の開始日の前日まで
一般事業主行動計画の策定・届出・公表・周知4コース共通支給申請日まで(申請日に有効であること)
雇用環境整備の措置(1人目は2つ以上)と、業務見直しの規定出生時両立支援育休の開始日の前日まで
育休の取得・復帰を支援する方針を、職員全体に周知する育児休業等支援休業の開始日の前日まで
代替業務に対する手当の規定育休中等業務代替支援業務代替の開始日まで
原職等に復帰させる扱いの規定育休中等業務代替支援職員の復帰まで
柔軟な働き方の制度の規定と、支援の方針の周知柔軟な働き方選択制度等支援制度の利用開始日の前日まで

とくに注意したいのが、男性職員の育休です。出生時育児休業(産後パパ育休)は、原則として休業開始の2週間前までに申し出れば取得できます。配偶者の出産予定を聞いてから雇用環境整備の措置や業務見直しの規定を整え始めると、育休の開始に間に合わないことがあります。

就業規則への規定は、いずれも「法律に準拠する」と書くだけでは足りません。制度の中身を具体的に定めておく必要があります。

妊娠の報告から産前休業の前までにやるもの

職員から報告を受けたら、次の準備に入ります。

女性職員の場合

  • 面談、育休復帰支援プランの作成、業務の引き継ぎ(育児休業等支援コース):期限は、産前休業の開始日の前日までです。産前休業は出産予定日の6週間前から始まるため、報告を受けてから使える期間は、思っているより短くなります。
  • 業務の見直しと、代替する職員への面談での説明(育休中等業務代替支援コースの手当支給等):期限は、業務の代替が始まる日までです。
  • 代替要員の採用(育休中等業務代替支援コースの新規雇用):雇用契約の始期は、事業主が職員の妊娠を知った日以降である必要があります。報告の前から雇っていた人は、新規雇用の対象になりません。

男性職員の場合

  • 配偶者の出産予定を聞いた時点で、育休の日数とシフトを確認します。出生時両立支援コースの1人目は、子の出生後8週間以内に始まる、連続5日以上(うち所定労働日4日以上)の育休が必要です。

産休・育休の手続き(社会保険料の免除や給付金の申請など)も、同じ時期に進めることになります。手続きの流れは、職員が妊娠したら、いつ何を出すか|産休・育休の手続きを申出から復帰までで整理しています。手続きと助成金の準備を、1つのスケジュール表で管理しておくと漏れを防げます。

休業中と復帰後:申請期限の管理

申請は、コースと区分ごとに期限が決まっています。主な期限を、時期の早い順に並べると次のとおりです。

時期コース・区分申請期限
育休中育休中等業務代替支援(手当支給等・休業取得時、育休1か月以上)育休の初日から1か月を経過した日の翌日から2か月以内
育休中育児休業等支援(育休取得時)育休の開始日(産後休業から続けて休む場合は産後休業の開始日)から3か月を経過した日の翌日から2か月以内
育休後出生時両立支援(男性労働者の育児休業取得)育休の終了日の翌日から2か月以内
復帰後育休中等業務代替支援(手当支給等・職場復帰時)育休の最終日の翌日から3か月を経過した日の翌日から2か月以内
復帰後育児休業等支援(職場復帰時)復帰後6か月を経過した日の翌日から2か月以内

期限は、郵送の場合も労働局への到達日で判断されます。消印の日付が期限内でも、到達が期限を過ぎていれば受け付けられません。期限の直前ではなく、期間の早いうちに申請する段取りにしておくと安全です。

準備が間に合わなかった場合

休業の開始前に満たすべき要件が間に合わなかったコースは、その職員については対象になりません。ただし、ほかのコースは要件を満たしている場合があります。たとえば、育児休業等支援コースの面談が間に合わなくても、育休中等業務代替支援コースの手当支給等は、代替の開始前に規定を整えれば対象になり得ます。

そして、次に報告を受ける職員に備えるには、上の「平時に整えておくもの」を今のうちに整えておくことが最も確実です。

よくある質問

パート職員は、中小企業かどうかの判定の人数に入りますか。

入りません。両立支援等助成金で中小企業かどうかを判定するときに数えるのは、2か月を超えて雇用され、週の所定労働時間が正職員とおおむね同じ職員だけです。短時間勤務のパート職員は数えません。

ただし、一般事業主行動計画の策定義務(101人以上)を判定するときは、パート職員も含めて数えます。同じ法人でも、目的によって人数の数え方が違う点に注意してください。

職員が100人を超えた社会福祉法人・医療法人は、両立支援等助成金を使えませんか。

使える場合があります。まず、フルタイム相当の職員だけで数えて100人以下であれば、中小企業に当たります。

100人を超えていても300人以下であれば「特定事業主」として、出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」や、育休中等業務代替支援コースを使えます。301人以上でも、育休中等業務代替支援コースの「手当支給等」は規模に関係なく対象です。

男性職員の育休が5日だけでも、助成金の対象になりますか。

出生時両立支援コースの1人目であれば、対象になり得ます。要件は、子の出生後8週間以内に始まる、連続5日以上(うち所定労働日が4日以上)の育休です。

一方、育休中等業務代替支援コースは、育休が7日以上であることが要件です。5日の育休では対象になりません。同じ育休でも、コースによって必要な日数が違います。

社会保険労務士に頼まずに、自社で申請できますか。

できます。両立支援等助成金は、事業主が自ら申請できる制度です。申請先は、本社などを管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で、電子申請(雇用関係助成金ポータル)のほか、郵送などでも提出できます。

ただし、要件の多くに休業開始前の期限があり、申請期限も郵送の場合は労働局への到達日で判断されます。職員ごとに期限を管理できる体制を整えておくことが前提になります。

職員が家族の介護をしながら働き続けるための助成金はありますか。

あります。両立支援等助成金の「介護離職防止支援コース」です。職員が介護休業を取得して職場に復帰した場合や、介護のための両立支援制度を利用した場合などに支給されます。

このコースについては、別の記事で詳しく取り上げる予定です。

[内部リンク|介護離職防止支援コースの記事(3本目・未公開)|公開後にこの問いの末尾にリンクを追加。確認後この行は削除]

まとめ

両立支援等助成金は、医療機関・介護事業所でも、規模にかかわらず使える可能性がある制度です。この記事の要点は次の4つです。

  • 医療機関・介護事業所は、サービス業の基準で中小企業かどうかを判定します。資本金・出資の総額が5,000万円以下、またはフルタイム相当の職員が100人以下であれば中小企業です。人数にパート職員は含めません。
  • 令和8年度は、規模によって使えるコースが3段階に分かれます。300人以下なら特定事業主として一部の区分が使えます。301人以上でも、育休中等業務代替支援コースの手当支給等は対象です。
  • この記事で扱った4つのコースすべてで、申請日に有効な一般事業主行動計画が必要です。行動計画の策定が努力義務にとどまる100人以下の事業所も同じです。
  • 要件の多くは、休業の開始前に期限が来ます。申請は休業の後でも、準備は休業の前です。就業規則・行動計画・雇用環境整備の措置などは、職員から報告を受ける前に整えておいてください。

支給額や要件は、毎年度見直されます。申請の際は、厚生労働省の両立支援等助成金のページで、最新の支給申請の手引きと支給要領を確認してください。

個別の判断に迷う場合は、管轄の都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や、顧問の社会保険労務士に相談してください。

ここまでの手順で自社での対応が見通せるようでしたら、専門家への相談は必要ありません。

判断に迷うのは、たいてい「自社の就業規則や行動計画が、要件を満たす書き方になっているか」「職員の休業の予定に対して、どの準備がいつまでに必要か」といった、規程の文面と職員ごとのスケジュールを突き合わせないと決まらない部分です。当事務所では、医療機関・介護事業所の事業者さまから、両立支援等助成金について、申請の前提となる要件の確認から申請手続きまでをお引き受けしています。顧問契約がなくても、申請代行のみのご依頼が可能です。規程の見直しが必要な場合は、就業規則の作成・変更のみのご依頼も可能です。準備の期限が休業の前に来る制度ですので、職員から報告を受ける前の段階でご覧ください。

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この記事を書いた人

川西 隆之のアバター 川西 隆之 社会保険労務士

兵庫県川西市の川西隆之社労士事務所
クラウドツールを活用した労務のデジタル化を得意としています
(ジョブカン認定アドバイザー)

税理士事務所勤務平成22年3月~平成31年1月
社労士業補助平成22年3月~平成28年8月
社労士登録平成28年9月~
1984年3月9日生まれ。
兵庫(但馬)産まれ兵庫(但馬)育ち。川西市在住。
一人の妻と3人の子どもたち。

2005年社労士試験合格
2016年開業登録(岐阜県)
→2020年より兵庫県川西市にて開業

以下の事項に力を入れています。
・クラウド勤怠管理・給与計算を利用した勤怠管理・給与計算の効率化
→給与計算に必要な時間の圧倒的な削減

・クラウド労務管理を導入することで、法定帳簿の管理・社会保険手続きの効率化
→代行することなく自社での管理・申請が容易に可能

・適切な労務管理を行うことによる、労使トラブルの防止
→疑問点があれば、その都度の相談可能

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